わたしは信じ続けている
空には、カイゼルグレイモンとマグナガルルモンが浮かんでいた。[1/3] 勝利への飛翔! 対決ケルビモンの城 皆のスピリットを合わせて、新たな闘士が誕生した。――きっとダブルスピリット進化よりも、更に強い力を持つんだろう。 「また更に進化したぞい!」 「かっこい〜い」 「です!」 ボコモンたちは、空に浮かぶ新たな闘士を見、それぞれ感嘆の声を挙げる。わたしも、嬉しくなって、胸がどきどきしているのが自分でも分かった。世界を救ってほしいという気持ちと、負けないでほしい、という不安が混じった緊張だった。 「オファニモンめ、人間の子どもたちにここまで力を貸すとは……そんなに俺が邪魔か!」 「まだ分からないのか、オファニモンの気持ちが!!」 「オファニモンはお前を止めたかったのだ、最期までお前を助けようとしていた。その為に俺たちを呼んだんだ!」 「そのオファニモンの気持ちを、お前は踏みにじったんだ!」 オファニモン様はメールで人間の子どもを呼び出して、ケルビモンを倒す旅をさせるようわたしたちを導いた。きっと呼び出して子どもたちを巻き込むよりも前に、ケルビモンを救いたかったはずだ。 そのオファニモン様のためにも、ケルビモンを止めなくてはいけない。わたしはこうやって見ているくらいしかできない――、けれど、二人とも、どうかがんばって。 「人間ごときが何を言うか!」 「人間もデジモンも関係ない! 仲間を想う気持ちは皆一緒だ!」 「オファニモンに貰った力、オファニモンの想い、無駄にはしない!」 彼らがそう言うと、ケルビモンの顔が歪んだ。 「……お前を倒してッ、このデジタルワールドを救う!」 「愚か者たちめ、どんな力を得ようと三大天使である俺に叶うはずがないッ!! ――ヘヴンズジャッジメント!」 そうして、ケルビモンは空に手を掲げる。あれは、何度もケルビモンがやってきた必殺技だ。 黒い稲妻がケルビモンの手から放たれ、カイゼルグレイモンとマグナガルルモンに向かった。二体はそれを避けたけれど――今度は、その稲妻が、わたしたちのいる大地へ向かってきていた。 「うわあっ、」 爆発で身体が飛ばされる。そして、わたしは地上に投げ出された。とっさに手をつくことが出来ず、顔から地面に着いてしまった。鼻がつぶれたらどうしよう。い、痛い……。 「大丈夫!? 立てるか?」 「な、何とか」 差し出された輝一くんの手を取り、わたしはよろよろと起き上がる。さっきまでわたしたちがいた地面は、えぐれていた。……死ななくて良かった。 「皆を、安全な場所へ」 「ああ」 それからカイゼルグレイモンが、わたしたちの元へ行こうと飛んだ。けれど、ケルビモンが次々と宙に浮かぶ大地を破壊していく。そしてそれは、マグナガルルモンに当たった。 「マグナガルルモンっ!」 「……無事だ」 けれど、マグナガルルモンはそのケルビモンの攻撃にもびくともしないようだった。わたしがほっとして笑っているところで、カイゼルグレイモンが飛んでわたしたちを運んでくれた。 「ありがとう!」 「がんばってね!」 「おう、任せとけ」 カイゼルグレイモンに思いっきり声援を送って、わたしたちはケルビモンとの戦いを見守る。これが最後の戦いだ。輝二くん、拓也くん。二人とも、負けないで! 「これが、最後の戦いだね」 「……あ、ああ」 「輝二くん、拓也くんがんばってー!」 「……こう、じ……」 わたしは隣にいた輝一くんに話しかけながら、戦っている二人を応援した。わたしが応援している横で、輝一くんは輝二、と呟いた。振り返ろうと思ったけれど、ケルビモンがまた強い攻撃を繰りだそうとしていて、わたしの意識はそちらに持って行かれてしまった。 「炎龍撃!」 カイゼルグレイモンも、負けじと抵抗する。そして、その技によってケルビモンは炎に包まれた。それでも、ケルビモンはもがいてその炎をかき消した。かき消したけれど、確実に効果はあるみたいでケルビモンがは苦しんでいた。 「マシンガン・デストロイ!」 今度はマグナガルルモンが、銃弾をケルビモンに放つ。銃に撃たれたケルビモンは、遥か下の方へ落ちていった。 「ちょこまかと小ざかしい真似を……。ヘヴンズジャッジメント!」 そしてまた、先ほどと同じ稲妻が放たれる。でも、今度はあれよりも更に強力だった。稲妻が落ちた場所が、どんどん爆発するようにえぐれていく。城が崩れていく。 「うわあああっ」 「こ、こわいよー!」 友樹くんとわたしはぶるぶる怯えまくっていた。こわいです。 「ケルビモンの攻撃、ムチャクチャだ!」 「慌てとるんじゃ、予想以上に新たな力を得た拓也はんと輝二はんが強かったからっ!」 そう言ってボコモンは、日の丸の扇を広げて、面白い表情で笑う。――あんなもの持ってたんだ。ちょっとかわいいな、と思ったけれど、皆は呆れていた。 マグナガルルモンたちの話し声が、下の方から聞こえてくる。わたしたちは、下を覗き込んだ。 「何故だ……三大天使デジモンの俺が……何故!」 「いくら最強でも、お前は一人だ! 俺たちのように仲間はいない。仲間の勇気が、俺たちに力をくれたんだ!」 カイゼルグレイモンが、ケルビモンに叫んだ。 ――仲間の勇気。気付けばデジタルワールドに来ていたわたしは、その後人間界に行って――今度は自らの手でこの世界に来ることを選択した。きっとその選択が出来たのは、望ちゃんやここにいる皆のお陰だ。きっとわたしは、皆から勇気をもらえたんだ。 「馬鹿なことを! お前たちの力はオファニモンやスピリットの力にすぎん!」 「スピリットはただの力じゃない。皆の心が詰まっているんだ!」 「お前には分からない。スピリットをただの力としか思っていない、お前には……!」 そう、わたしたちは戦い、明日への希望を信じている。その心が二体を進化へと導いた。 ケルビモンは、その言葉を聞くと本当に苛立ったようで「スピリットは偉大な力だ、その価値も分からないお前たちには無用の長物だ!」と叫んだ。そして、両手を天へとかざす。 「ライトニング……」 「スターライト・ベロシティ!」 「九頭龍陣!」 手をかざした瞬間、マグナガルルモンが素早く飛び出して、そのあとすぐにカイゼルグレイモンが攻撃を放った。 その衝撃で、再びお城はぐわぐわと揺れ出す。わたしは、体育座りでその衝撃に耐えていた。このままだと、お城はすべて崩壊してわたしたちも死んでしまう。すると、ちょうどいいタイミングでカイゼルグレイモンがやって来た。 「カイゼルグレイモン!」 「掴まれ!」 泉ちゃんと友樹くん、ボコモンネーモンパタモン、そしてわたしがカイゼルグレイモンに乗せてもらう。残り二人となったとき、輝一くんが、純平さんを先へと譲った。純平さんが少し焦りながら、カイゼルグレイモンに乗る。 「輝一!」 「うん。……ッ!」 純平さんが輝一くんに手を差し出した。輝一くんも駆け寄って、純平に近づいてカイゼルグレイモンに乗ろうとした。した、のに。輝一くんのいた足場は急に崩れ始めた。落ちる、おちる、輝一くんがゆっくり落ちていく。わたしの脳裏に、あの日公園で落ちた望ちゃんの光景が、よみがえ、 「……あ」 マグナガルルモンが、落ちかけていた輝一くんを間一髪で救った。――本当に、よかった。 わたしたちは、カイゼルグレイモンに抱えられながら崩れていく城を見ていた。お城の底にはまるで蟻地獄みたいな穴が空いているみたいで、どんどんどんどん崩れた城が吸い込まれていく。哀しい光景だと思った。 「うわあっ」 お城からまた爆発音がした。煙に巻き込まれ、辺りが見えなくなる。そして、吹き飛ばされた。 NOVEL TOP ×
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