■ 03

彼女の事を調べるには中々骨が折れた。

シギが所属していた組織を調べても何も出てこない。組織の連中は取り調べで黙秘を貫いており、臓器売買やシギについても新たな情報は得られなかった。しかし彼女の証拠のファイルのおかげで実刑は確実だろう。組織の連中は50代の中年層が多く、仮に罪が軽くなっても生きているうちに外に出られる事はないだろう。

シギ個人に関する情報を調べたが何も出なかった。彼女が消した可能性もあるが消した記録さえ無い。普通は消した記録も残るはずだがそういった形跡もない。



そしてしばらくして彼女のいる場所を突き止めた。
まだ彼女を逮捕できる証拠は無い。とりあえずシギについて知る事から始めようと再び会いに行った。

チャイムを押しても応答は無い。居留守を使っているのかと思ったが気配すらない。外出中だろうか。しばらく近くを歩いていると向かいから彼女が歩いて来るのが見えた。小さなビニール袋を持っている事からどうやら買い物に行っていたらしい。目が合った瞬間嫌な顔をされた。


「またアンタなのしつこいわね。でもよくここが分かったわね。ふーん日本の警察も頑張ってるんだ、えらいえらい」

まるで幼子をあやす様にシギは言う。だか、彼女からしたら自分のスキルなんて子供同然だろう。事実だか腹立たしい言い方だ。

「で、今日は何しにきたの?」

「君について色々知りたくてね」

シギは俺の横を通り過ぎる。どうやら先程の家に帰るらしい。踵を返し彼女の後を付いて行く。少し歩いて彼女は立ち止まり首だけ振り返った。

「まるでストーカーね、警察でも呼ぼうかしら」

「その必要はない。僕がその警察だからな」

「公安警察でしょ」

わざとらしくため息をつくとシギはまた歩き始めた。そして俺も付いて行く。今日は虫の居所が悪かったらしい。不機嫌が顔に出ていた。

「君の事調べたけど何も出なかったよ」

「でしょうね」

「むしろ出なさすぎて不気味なくらいだ」

「そうね私は幽霊だし。私を証明する物なんてこの前やった事だけかしら。まあそれも充分に証拠を残してないから検挙できないでしょうね」

この前やった事とはおそらく銀行の顧客情報を流出させた事だろう。銀行にある個人情報を流出させると言う事は他人の口座の金を自分の口座に移せる事もできる。だからこそ彼女は危険なのだ。その気になれば国家予算すら手に入れる事ができるだろう。

会話の中で逮捕の決め手になるかとICレコーダーでこっそり録音しているが上手く誤魔化している。おそらくだが彼女自身の口からあの事件を語る事は無いだろう。

一つ気になるワードが出てきたので質問してみた。

「幽霊とはどういう意味だ?」

「そのままの意味よ。頭のいいアンタならちょっと考えればわかる事だわ」

褒められているのか挑発されているのかよくわからない。そんなやりとりをしていると彼女のアパートに戻ってきた。シギは鍵とドアを開けるとこちらを見る。


「今日は気分が悪いから帰って。できれば2度と会いたく無いけど」

不機嫌だとは思っていたが体調が悪かったのか。確かに言われてみれば顔色が悪い気がする。気遣う言葉をかけようとしたが拒絶するように扉を閉められた。

今日は部屋にすら入れてもらえなかった。
しかしドアの隙間から見えた部屋は以前いた部屋と似たような間取りをしていた。




20.0911

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渡り鳥は救われたい



   
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