12 金城の心中
<Side金城>
「それ重いから、運んでやんヨ。」
荒北が高篠に声をかけている。最近よく見る光景だ。
もともと高篠はあまり人を頼らない。しっかりしているから、頼るよりも頼られる性格だというのもある。
ただ、力仕事はどうしても女子には厳しいものもあるから、それは頼ってほしいと思っていた。
高篠とは、もともと総北からの付き合いで、ほかの部員より付き合いが長い。
高篠のほうも俺には気を許しているようで、最初の頃は俺を頼ってくれていた。
俺のほうも高篠から頼ってくれるから、と安心していたからか、最近はあまり気にかけてやることができなくなっていた。
そのせいか、荒北が高篠をよく助けてやっているのを見る。
今日も部室で着替えていたら、
「それ、一人で運べると思ってんのかヨ!?バッカじゃねーのォ!おめーにゃムリだよ!」
口は悪いが、荒北が高篠を手伝ってやっている。
その光景を何気なく目にしたときに
「荒北が最近、高篠のことを、よぉかまっちょるのぉ。」
待宮が俺にこそっと耳打ちしてきた。
「ありゃぁ、高篠のこと好きじゃの。まちがいない。」
エッエッエッ。待宮がニヤッと笑いながら言う。
そうなのか?と思ったが、よく考えるとその方がつじつまが合う。
「そうなのかもしれんな。だが、高篠にも彼氏が、荒北にも彼女がいるぞ?」
「結婚しとるわけじゃないけぇ、問題ないじゃろう。荒北はこの前彼女と電話で喧嘩しとったしのう。」
待宮はニヤリと笑いながら続けた。
「高篠も同じ大学の彼氏と一緒におるところ見んけぇ、ありゃぁ、あんまりうまくいっとらんぞ。」
「それにしても、本人同士の問題だ。俺たちは静かに見守ってやろう。」
「エッエッエッ。金城は優しいのぉ。」
荒北は真面目で一本筋を通す男だ。
それはライバル同士だった高校時代も感じていたことだが、大学でチームメイトとして過ごすうちに、より一層感じるようになった。
真面目で、一生懸命で、努力を惜しまない、優しい男だ。
荒北の思いが報われる時が来ればいい、そう思う。
彼氏の話を全くしない高篠よりも、荒北の横で楽しそうに笑っている高篠を見る方がいい。
俺は何の力にもなれないかもしれないが、心の中で強く思った。
前 / 次