──鳥の声。ぼんやりとした頭のまま、とりあえず体を起こす。隣ではまだ、傑が気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「起きよ……」
今日はお休みなので、ちょっと贅沢な朝食を作りたい。そう思って、毎朝の大仕事に挑む。絡み付いている傑の太い腕を引き剥がして、ベッドから抜け出る仕事だ。
「んー……ナマエ……」
不満げな声を漏らす彼を置いて、身支度を始める。朝食、何を作ろうかな。マフィンがあったから、スクランブルエッグを作って……あ、ベーコンってまだあったっけ。そんなことを考えながら着替えの手を動かしていたけれど、ふと感じた違和感に、部屋着に通しかけていた手が止まった。
「……あれ」
袖が絡まっていて、うまく手が通らない。ああ、もう、めんどくさいな。そう思いながら、それを解くために一度手を抜こうとしたときだった。
「ナマエ、おはよう」
すぐ後ろから、甘い声が聞こえる。まもなく背中があったかくなり、傑が私を抱き寄せたのがわかった。
「あ、傑起きた? おはよ」
顔だけ振り返ってそう答えると、ちゅっと私の額にキスをする。
「ふふ、楽しそうだね。何してるんだい?」
「楽しくないよ。なんか、袖が……というかこれ、傑がやったよね?」
明らかに人為的に絡まっているところを見つけてしまい、ため息をつく。
「ん、なんのことかな」
「どうしてこんな子供みたいなことするの?」
むっとしてそうたずねると、お腹にまわされていた彼の手がすっと離れ──私の胸をまさぐる。
「ちょ、ちょっと……!」
「君がいつも私を置いて、先に起きて行っちゃうからだよ。朝起きて一人だと、寂しいじゃないか」
「ん……す、ぐる、やめて……」
手が袖から抜けず、うまく抵抗できない。体を捩って逃れようとはしているものの、その程度ではこの男は止められないのだ。
「ふふ、でも、子供みたいなことって言われちゃったな。いい作戦だと思ったのに」
ちゅっと音がして、傑が私の頭に口付ける。すすっと伸びた彼の指が、敏感なところに触れ、思わずびくりと肩が揺れてしまった。
「んっ……」
「ねえ、ベッド戻らない?」
「っ、だめ、だって……ごはん、作らなきゃ……」
「終わったら、一緒に作ればいいだろ」
そう耳元で囁くと、傑はひょいと私を横抱きにする。
「食欲は我慢できるけど、こっちはできそうにないんだ」
そんなふうに笑う彼にため息をつきながらも、私はだいぶ前に解けていた部屋着の袖を、ひっそりと握りしめる。のちにそれが傑にばれて、たっぷりといじられるのだった。




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