囚われの蝶[1]



「暫く会わない間に随分と背が伸びましたね」

「そうですね…成長期というものらしいです」


 ピカピカに磨かれた黒塗の高級外車。

 その後部座席に座るのは、少し成長した彰と里親。

 とある児童養護施設から彰を保護し、帰宅しようというところ。


 時は流れ。あの雨の逃避行から四年の月日が経過していた。

 彰は既に11歳の誕生日を過ぎ、身長も人並みになった。

 絹のように艶やかな光沢を帯びた黒髪と、長い睫毛が美しい目元は健在だが、以前よりも体力や筋力がついたことによる自信が、表情に現れていた。

 






 《RedtaiL》の面々に出会ったあの日。

 あの後彼は、とある児童養護施設に居た。


 たまたま車内から見えた其の場所。門に書かれた《児童養護施設》の六文字が彼を引き寄せた。


 自分が子供である事はわかっていた。

 そのままでは里親の元に戻るしか無い事もわかっていた。

 結局はどこかに身を寄せなければ、椋橋たちのような大人に心配をかけてしまうだけだということも、わかっていたのだ。

 だから、嘘でもなんでも帰る場所を作らなければならなかった。


 椋橋たちに適当な言い訳をして、なんとか其処で下ろしてもらった彰だったが、入所させてもらうにしても、その理由はさてどうしようかと立ち尽くしていた。

 数分…いや、小一時間は経過していただろうか。

 門の前でしゃがみ込む彼に、施設内の大人が気づいてくれたおかげで、建物の中に入れたのだった。

 濡れた髪も衣服も靴もそのまま。多少乾いてはいたが、まるで逃亡者のような身形は充分な理由になったようで、彼を咎める者も追い返そうとする者もいなかった。


 追っ手は居ないようで、まずは一安心と言ったところか。


 無謀な賭けともとれる家出は、初めて成功したかに思えた。






prev * next

en aparte'*top←
+α←
Home←


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -