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7.想う
2013/06/27 23:32

幼馴染みと和解設定って何よ!という方はこちら





ラーが大空へと舞い戻った朝。
何処までも果てしなく続くような蒼空の元、王宮に仕える魔術師たちも起き出してそれぞれ職場へと来た同僚に、互いに朝の挨拶を交わしていた。職場でも特につるんでいる二人の男性魔術師たちも例外ではなく、お互いに会うと軽く朝の挨拶を交わして職場へと向かう。その途中で擦れ違った一人の女性魔術師とも挨拶を交わした。
「……相変わらず綺麗だよなぁ」
鼻の下を伸ばしつつ、一人の男性魔術師が先程擦れ違った一人の女性魔術師の方へ振り返って彼女へは聞こえないであろう距離で呟いた。隣の、もう一人の男性魔術師は笑いながら鼻の下が伸びてるぞ、と突っ込みを入れつつ先程の女性が綺麗だということにはちゃっかり同意していた。
「でも綺麗なだけじゃない。知ってるか?精霊魔導士なんだってよ」
「えぇ、そうなのか!?……精霊魔導士っていえば魔術師の中でも最上級じゃないか」
「そうそう。しかもあのアクナディン様が面倒みてた人だろ?俺たちには高嶺の花だよ」
「んー……だからずっとフリーなのかな、あの人」その言葉にえ、と驚いた表情を浮かべた魔術師の男に同僚は呆れたように溜め息をついた。精霊魔導士云々の話は知ってた癖になんで結構話題になっている噂は知らないんだよ、と先程彼女が精霊魔導士だと知って驚いていた魔術師の男の同僚は自分のことは棚に上げて、知らないことを非難するかのような眼差しで相手を横目に見ながら、どこか偉そうに説明し始めた。
「知らないのか?あの人ずっと恋人いないんだぜ」
「そう、なのか?恋人いるのかと思ってたよ」
「だろー?意外だよなぁ……」
「……でも、あんなに優秀な彼女なら俺たちの立つ瀬ないだろ」
「はは、まぁなー。でもあの人に惚れられたらそんなことどうでもいいって」
そう言いながらケラケラ笑う同僚に、そんなこと有り得ないだろと軽く突っ込みを入れれば酷いなんて言いながらふざけあっていたが、さっさと職場へ向おうと同僚の背を軽く叩くと二人揃って歩き出す。その間も同僚の男は先程擦れ違った女性について一人でよくもまぁそれだけ喋られると感心してしまうほど話続けているのを魔術師の男は聞き流しながら、適当に相槌を入れつつ先程の話で混乱している頭をなんとか整理しようとしていた。
(まさかあの人に、恋人がいないなんて……)
ずっと心に引っ掛かる人、と彼女から直接聞いたことのあった魔術師の男はすっかりもう恋人がいるものだと思い込んでしまっていた。恋い焦がれて止まない瞳と、その話をする時の彼女の表情と言ったら美しいもので見惚れてしまうほどだった。それほどまでに秘かに彼女へ抱いていた想いをも諦めてしまうほどの美しい笑みだったのに。まさか彼女に恋人がいないだろうなどとは思えなかったし、何よりそれを伝えていないことにも驚きを隠せなかった。
(彼女の想い人とは、一体どのような人物なのだろうか)
そこまで深く思考していたら、同僚に思いきりどつかれて魔術師の男は呻いた。話を聞いてないだろ、という正当な突っ込みだったがそこまで気合い入れて突くことはないだろうと涙目になりながら魔術師の男は反論を返したが、その後ろで戻ってきていた女性魔術師にその漫才のようなやり取りを見られていたことには気付いていなかった。
▼追記
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