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『』を読んでー詩人と詩人ー


並んで日向ぼっこをして。そんな時だった。

――……面白いお話を読んだの。
「どんなおはなし?」
――ある人が言われて気がつくの。周りのみんなはすでに吸血鬼になっていて、自分はその最後の食糧なんだって。
「きゅうけつき?」
――ヴァンパイアっていうほうが一般的だと思う。
「ユーリさんや、こうもりさんみたいなひとのこと?」
――そう。周りの吸血鬼たちは、最後のごちそうを食べてしまってははしたないと思ってて、……それで互いに食べないようにしてるの。
「にんげんのひとは、たべられないままなんだよね」
――……そう。
「でも、もしかしたらたべられちゃうのかな。
……こわいね」
――怖かった?ごめんなさい。
「ううん。こわいけど、ちょっとおもしろいね」
――みんなで食べないようにしてるのが?
「うん」
――……ポエットちゃん。もしも、わたしだけが人間のままで、ポエットちゃんたちが吸血鬼になってしまったら、わたしを食べる?
「え?……うーん……」



ポエットはうつむいて考え込んでしまった。
かごめはポエットの答えを待つ間、考える。
ポエットの背中には翼がある。それは鳥の翼に似ている。何かの本で、天使の翼は猛禽類の翼と同じなのだ、と書いてあったことを思い出す。
かごめは思う。この心優しい女の子が自分に牙を向いた時、わたしは何を思うのだろう?


「にげて、っていってあげたい」
ポエットはようやく顔を上げると、そう言った。
――ポエットちゃんは、わたしを食べないの?
「たべたくなってるかもしれないけど、たべたくないよ」
――ポエットちゃんが食べないなら、ほかの誰かが食べるかもしれない。
「たべないよぉ!だってみんな」
いいひとだもん、というポエット。
……幼い考えだ。性善説を信じ、疑うことを知らないこどものそれ。
でも、それでいい。もしかしたら自分は、そんな答えを待っていたのかもしれない。
――そうなの。ええと、……ありがとう?
「……じゃあ、かごめちゃんだったら?ポエットのこと、たべる?」
――考えつかないわ。

それで、その話題はおしまいになった。

……嘘だ。考えていた。でも言ってはならない。だから言わなかった。


……愛する人を、自分の糧にしてしまいたいだなんて、言えない。

うららかな春の日。
並んで日向ぼっこをして。そんな日の会話だった。

(完)





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