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morceau


天使とは、人々を楽しい気持ちにさせるのが仕事だ。そして天使ポエットは、それが苦ではない。むしろ大好きだ。だからポエットにとって、オンとオフの区別はない。毎日が仕事で、毎日が遊びである。
その日もそんな一日だった。

ホワイトランドを飛び立ち空を舞い、やがて大地に降りる。
今日はここに行くと決めていた。
青い星、地球。その陸地と陸地を繋ぐ場所。地球の青を司る、海に。
砂浜に降り立ったポエットは、感嘆の声を上げる。
「わぁとっても広ぉい……」
頭上に広がるのは、太陽が照らす青い空。
目の前に広がるのは、果てのない碧い海。
更に足元に広がるのは、白い砂浜。

ポエットは靴と靴下を脱いで裸足になった。波打ち際に向かう。
寄せては返す波と、濡れた砂。そこに、ポエットは意を決して素足を踏み入れる。

ポエットはできる限り多くの人を幸せな気持ちにしたい。そのために、海に住む者たちとも仲良しの輪を広げていきたい。そう考えて泳ぎの特訓をしようと思ったのだ。

海水は冷たい。たしか今は、地球は『春』の季節。泳ぐにはまだ早そうだ。
「まずは、水に慣れなくちゃ」
足を海水に浸し、じっと待ってみる。それから水位が足首ほどまでしかない付近を歩いてゆく。
しばらくして、今日はこれくらい、と決めて波が来ない砂のあたりまで戻った。
冷たい水に慣れていたのか、水から出た足は少し冷えた。ポエットは指を組み目を閉じた。すると何もない場所からタオルが現れ、彼女は足を拭いた。
拭き終え、ポエットはタオルをしまう(消した)と、かがんで砂浜を見た。
砂浜にはたくさんのかけらが見える。
拾い上げて、しげしげと眺めた。
ガラスが貝や他のガラスと揉まれるうちに角が取れたもの、のようだ。色とりどりのかけらを一通り眺めると、思いついた。




水色のガラスのかけら。
緑のガラスのかけら。
青いガラスのかけら。

これらを大切にポシェットに仕舞い、ポエットは帰ることにした。
帰りの空を飛びながら、ポエットは彼らにどんな風に渡そうかと考える。考えて考えて、ようやく答えが出た。

ただ一言、添えるだけ。
「お日様に透かしてみて。とってもきれい!」
(完)



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