「あー、ゴールデンウィークも明日で最後かー。なんかあっという間だよなー」 「順平、残念だけど俺たちのゴールデンウィークは終わったから」 「へ?なんで?!明日は振替休日だろ?カレンダー!ほら、カレンダー見てみ?」 「なんでって云われても…月光館学園ルール?」 「何それ!え、俺知らねえよ?!」 「ちなみに今夜はタルタロスも行かないから」 「え?!えー!生徒会長ー!!」 (なんだ、また伊織か…相変わらず騒々しいな) (桐条先輩、もうほっといていいですよ、あんな奴) (しかし、こう毎回煩いとな…) (そっとしといてやれ、美鶴。どうせ自業自得だ) |
影時間に目覚めるというのは、とても不思議な感覚だった。そもそも存在するはずのない時間。時間と時間の狭間、全てが呼吸を止めた瞬間。 「また、会ったね」 心地よい音は、心臓の鼓動に似ている。息を吹き返すみたいに双眸を開けば、見慣れた部屋の見慣れない雰囲気。 (これは夢なのか)(それとも俺が作り上げた幻想?) 身体を横たえたまま視線だけを彼に向ける。 そのこどもは、ただ微笑んだ。 (ぼくは、きみに会えるこの時間が、すごくすきだよ) (きみは、どうかな) |
「検査入院程度で随分と大袈裟だな、アキ」 「検査入院程度で、わさわざ見舞いに来てくれなくても良かったんだけどな」 「じゃあ林檎が食いたいとかワケ分かんねェメールを送るんじゃねえよ」 「病院のベッドで寝ていたら、林檎の一つも食べたくなるだろ」 「ならねーよ。しかもこの時期に林檎なんかフツーに売ってねェし」 「なんで」 「なんでって…まァ、いいや」 (えーと、真田さんに頼まれたから来たけどさ…なんか、微妙に入りづらいな) (頼まれたのって順平だけでしょ。ささっと行ってこれば?) (うわ!ゆかりっち、早速裏切り宣言?!) (…真田先輩って、牛丼とプロテイン以外も食べるんだ…) |
「……美鶴、」 「なんだ明彦、帰ってきたのか。…ん、どうした?」 「どうした、って……そいつは何故ラウンジで寝てるんだ?」 「ああ…彼か。いや、なんでも今日も朝から出掛けていて、このままだと影時間まで持ちそうにないのだそうだ。しかしだからといって部屋で寝てしまうと起きれなくなるから、と云ってな」 「それでソファーを占領しているわけか」 「そう云うな。まだ座る場所はあるだろう?」 「まあ、そうだが…」 (美鶴はともかく、どうして岳羽も伊織もあえてここにいるんだ?)(テレビも消して声も潜めて、必要以上に静かにして)(そうまでしてここにいる意味が………) 「明彦、お前までここにいなくていいぞ」 |
「なーんか誰かさんのせいでムダに疲れたよなあ…。さー、さっさと帰ろうぜ」 「順平、」 「そーいえばさっき真田サンから貰った五千円ってさ、どっから出てきてんのかね。まさか真田サンのポケットマネーじゃないよな」 「約束」 「…へ?何?約束?」 「真田先輩の用事終わったら、カラオケ行くって」 「え?あー、ああ…ってか本気で行く気だったの、お前…」 「約束、したよな」 「えー…っと…ハイ。しました、ね」 「じゃ、行こう」 「……マジで?」 (そいでうっかり五千円使い切っちまったとか!) (もし真田サンにバレたらどーすんだよ?!) (…さあ?) |