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先程まで乗っていた車に今度は助手席に宛がわれる。自然に助手席のドアを開けてエスコートする姿は様になっていて、ああモテるんだろうなーと納得してしまう。


「探偵って儲かるんですか?」

「どうしたんですかいきなり?そんな切り込んだ話なんて」

「いや、下心があるわけじゃなくて、私の知り合いのお客様の中でも安室さんは断トツに修理に来るので、そんなに懐に余裕があるのかなって」

「ああ…、それはですね



ひったくりよーー!!

僅かに開いてる窓から聞こえてきた女性の悲鳴。
ハッと見やると中型バイクが勢い良く私たちを追い抜いていく。

「安室さん、」

「真依さん、そういうことで取り返しましょう。行きますよ」

「えっ、ちょっ………あああっ!!!」


この人そういえば車を大切に乗らない人だ!

そう脳裏によぎったが既に遅し。
今までの法定速度はどこへやら。いきなり2速にギアチェンジして前のバイクを追い掛ける。
えええめっちゃ怖いんですけど!バイクは車の隙間をするすると抜けていき距離が離れ…ると思いきや、こちらも車を左から追い抜き歩道に乗り上げる…?いやいや誰も歩いてないからって駄目でしょただ純粋に怖いんですけど…!

「街中カーチェイスは久々なので、舌を噛まないようにしていて下さいね…!」

「は、はいぃ…」

早く捕まえて欲しい。
そう思ったところで運良くバイクが転倒して追いつくことが出来た。



捕まえた引ったくりからバッグを女性に返して、警察が来るまで犯人を車から出したロープで締め上げる。
その動作はとても洗練されていて、探偵の中でも安室さんって相当凄いんじゃないかと思う。

警察もすぐに駆けつけ、私たちもとりあえずお役御免になった。安室さんは申し分けなさそうに私に謝ってきた。

「いつもお世話になってる真依さんを送っていきますなんて言ったのに、面倒事に関わってしまってすみません」

「お気になさらず。…安室さんの運転が下手じゃなくて、無茶な運転で車が普段から傷付いているのがよく分かりました。」

普通は2速にいきなり切り替えられないですもんね、と言うと「なんだか照れくさいな…」と呟いている。イケメンよ、一言前の嫌味は無視か。