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なんだか繋ぎ姿で喫茶店に入るのも恥ずかしいな、なんて頭に過ぎるが時は既に遅し。遅すぎる。
差し出されたサンドイッチを口に入れると絶妙な風味に驚いた。

「安室さん…美味しいです」

「それは良かった。はい、珈琲もどうぞ」


そう言った後に折角なので僕もお昼ご一緒していいですか?と全く同じメニューを持って問いかけられ、断る理由もなくどうぞ、と返し向かい合う。


「今更ですけど、真依さんは何故自動車の整備士に?女性じゃまだ珍しいですよね?」

「子供の頃から、レストアしたい車があるんです。ただ、それだけのために整備士になったんです」

変な執念ですよね、と苦笑しながら言うと、そんなことないときっぱりと否定をされる。

「夢を叶えるために努力をして、真依さんが整備士になったのはその資格があったからですよ。芯のある人は必ず報われますよ」


真依さんの技術向上の為にもっとお世話にならなきゃ、なんて冗談としても笑えない言葉にははっきりとお断りをさせていただいた。


「真依さん、もし良かったら僕もう上がりなので、工場まで送っていきますよ」

「あ、じゃあお言葉に甘えていいですか?実を言うと、ロータリーサウンド聞きたいな、なんて気持ちがさっきまで凄くあって。流石に人の車でアクセルべた踏み出来ないので葛藤してたんです」

「そんな遠慮することないですよ。でも、街中でそれは危険なのでまた機会があれば山道でも」

「あんなに車傷つけるのにまさかそんな言葉が出てくるとは…。では、次の機会に期待します。あと、お昼もご馳走様でした。本当においしかったです」


そう言うと、「ではまたポアロに足を運んでくださいね」と爽やかに言われて頷いた。

テーブルの片付けを安室さんが簡単にして、一緒にポアロを出ることにした。