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祖父は元警察官。
父はちょっと有名な会社の社長。
母は元モデル。


なんて絵に描いたような私の家族。住んでいる家はやっぱり一際大きい。

実家に帰ると言っても、1日もいることはない。
母には彼氏の一人や二人連れて来いと言われ、
父には見合い写真がたくさんあると言われ、
祖父には何度も聞いた警察官の頃の武勇伝を聞かされる。


正直にいえば、今の私の心が惹かれるものはないのだ。
そりゃあ、いつかは良い人と結婚して、子供と幸せな家庭を…なんては思うけど、
私の"夢"は、まだまだ叶ってなくて、それを叶えるまでは結婚する気はさらさらない。


「真依お嬢様、最近の進捗はいかがですかな?」

「…爺や!まだまだ、私には知識もなければツテも足りないの。
ちゃんとレストアするから、まだ廃車にしないでね?」


私の夢は、爺やの20年以上前の車をレストアすること。

子供のころに乗せてもらっていた爺やの車が大好きだったけど、どうやらとても古い車だったみたいである日突然車が変わっていた。
それはとても衝撃的で、号泣したのを良く覚えている。爺やにとっても思い入れがあった車みたいで、手放してなかったのが幸い。
どうすればまた乗れるのかを父に勢いよくねだって、レストアすればまた乗れるっていうのが分かって車の事だけを重点的に勉強して、今の私がある。

「いいんですよ、お嬢様。爺はいつまでも待ちますから」

「ありがとう!でも爺だってずっと運転出来る訳ではないんだから、私が30になるまでにはレストアしたいのよ」

「その気持ちだけでも、爺は嬉しいですよ。お仕事を熱心にされるのもいいですが、くれぐれも健康には気をつけてください」

「真依ちゃん!さっき言い忘れちゃったんだけど、来月の土曜日にうちの姉妹会社の記念パーティーがあって、家族全員出席するって伝えてあるからちゃんと顔出してね」

「お母さん…。はぁ…分かったよ」

「いい?ちゃんと、手のオイル汚れとか「ちゃんと取ります」よろしい!ドレスはこっちで用意しておくから、その日はまた戻ってくるのよ?」

「分かったよ。また時間とかは近くなったら連絡入れて。私はそろそろ帰るから」


玄関先で母と爺やと別れてから、ああ…と大きな溜息が零れる。
面倒なパーティーなんか出たくないなと、少し先の予定を憂鬱に感じながらマンションへと向かうことにした。