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結局安室さんがクラウンの運転席を確認しに行ったところ、スピンでの衝撃を強く受けたのか頭から血を流して意識を失っていたそうだ。私はそんな状態の人を怖くて確認なんか出来ず、結果だけ聞いたのみ。
救急と警察に電話をかけて、簡単な事情聴取を受け終わったのはもう夕食時をも過ぎた頃だった。


「真依さん、色々ありましたから疲れました?運転変わりましょうか?」

「疲れましたけど大丈夫です」

「僕がそんな車をぶつけるとでも思ってるんですか?流石に人の車は気を遣いますよ」

「…違うんだよ自分の車こそ気をつけないとダメなんですって!いくら愛していても車にだって愛想尽かれることだってあるんですからね!」

「そうなんですか?」

「そうですよ〜足下救われますから気をつけてくださいね!」

「肝に銘じておきます。さて、夕飯はどうしますか?どこかで取りましょうか?それか僕が作りましょうか?」

「えっ、安室さん作ってくれるんですか?なら食べたいです!」

「では、そうと決まれば買い出ししてから真依さんの家に向かいましょう」

えっ、うちなの?と言葉にしたら1日運転したんだから気を休めて欲しいという心遣いを頂いたのでお言葉に甘えることに。
来た山道を帰るが、あまりふかしすぎると山道だろうが民家があると迷惑がかかると思って法定速度で運転することにした。


最寄りのスーパーに着くまでは何が好きだの嫌いだの、食べ物の話をした。特にこれといって嫌いなものはないし、酒も好んで飲むことは伝えると、「では簡単につまみも作ります」と言ってくれて尚更感謝した。
食材は安室さんに任せて、私は自分のお酒を目当てに“酒類”と大きく書かれたコーナーに迷わず向かう。日本酒とバーボン。和と洋のお酒があれば安室さんがどんな系統のご飯を作ってくれても合うだろう。

合流してカートの中の籠にお酒を入れてレジに進んだ。