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愛車を駐車場に停めて自分のバッグと買って頂いたお酒が入った袋を手に取るも、するりとそれは安室さんの手に。
ほんとにこの人は顔だけじゃなくてやることもイケメンなんだなーと思う。気配りも抜かりないし、先日の引ったくりや、今日の轢き逃げを追いかけることが出来るほど正義感も強くて……



「真依さん、僕の顔に何かついていますか?」

「…っすみません!私ってばガン見しちゃって…」

どうやら彼を見つめていたらしい。無意識的なこととはいえ、恥ずかしさのあまり顔に熱が集まるも幸いのこと夜で、尚且ついつもよりしっかり目のファンデーションは私の顔色を隠してくれただろう。



マンションのロックを解除し、部屋に案内してキッチンへと通す。
「真依さんはゆっくりしていて下さい。簡単な物ですがすぐ用意しますので」

「いや、私も手伝いますよ、流石に全部して貰うのは悪いので…」

「大丈夫、ここは僕に任せて」


いつものように微笑みながら私を椅子に促す。カウンターと安室さんっていう組み合わせはもう完全にポアロじゃないか。いやいや此処は私の家だからと言い聞かして軽くお酒でも飲もうと冷蔵庫からパイナップルジュースとさっき買ったバーボンを開けてシェイカーで合わせる。


「あ、お酒飲んだら安室さん送っていけないですね、これ飲みます?」

「僕は歩いて帰るので大丈夫ですから、真依さん」

気を遣わないでと促され、お言葉に甘えてシェイカーからグラスに注いで飲み干す。お酒が入れば顔が赤くなっても誤魔化しがきく……
ああもうそんなこと考えてる時点で何か可笑しい。

「飲んでるのはケンタッキーですか?」

「え、ああ、そうですよ。自分1人で飲むに楽だし、そのときの気分で割合を変えられるし」

「ほう…一緒に買った日本酒もよく飲まれるんですか?」

「いえ、あまり飲みませんよ。安室さんが作るご飯が和食なら、バーボンは合わないだろうと思って。保険に日本酒をと、…本命はバーボンです」

「そうですか…では僕も1杯、同じ物を貰っていいですか?」

「ではオーソドックスな割合で」





「真依さん、キッチンドランカーなんですね」

「昔はそんなことなかったんですけどね…男社会の業界だから伝わらない事が多くてフラストレーションたまってると気付けば…」

まあ元々お酒は嫌いじゃないので、と言うとその飲み方を見れば誰でも分かりますよと突っ込みが入る。
手伝うつもりでキッチンに入ったものの、気付けばお皿には綺麗に盛り付けられていて。
美味しそう、と声に出すとお腹の虫も元気よく返事をした。