待ちましたか?と伺われて、強く否定をした。むしろ目を閉じて完全に気を抜いてる顔を見られて、なんだかこっちが気を遣いたい気分だ…!
「やっぱり。真依さんの車はコルベットなんですね」
「やっぱり?」
「工場の駐車場にいつも置いてありますよね。恐らく従業員のものではないかと推測していて、その中でもスポーツカーが好きな真依さんのではないか、と勝手に思っていました」
「さすが探偵さんですね」
でも、確信的な根拠は足りないですよと返された。そんなこと言われたら、今までの私はほぼ運任せの人生ですから、と探偵的思考とはかけ離れてると伝えておく。
「いや、僕だって普段から理詰めの生活はしてないですよ」
「でも探偵って何でも疑ってそうなイメージあります」
そんな他愛もない会話をして、そろそろ動かしますね、と声をかけレンジを変えてハンドルを切る。時間はあるとのことなので、軽く山道を一周のドライブコースを考えてることを伝えた。
「でも“スティングレイ”なんて、女性があまり乗りそうにない車ですよね」
「…はじめは、知人の影響です。その人と同じ車に乗りたいと思って。でも高級車なので父に買ってもらったんですよ。父はちょっとした企業の社長なので」
「そうなんですね。整備士になったのも関係あるんですか?」
「そうですねー…、 レストアしたいんです。
私が好きになった
コルベットを。まだまだツテも物足りないので、先の話になりそうなんですけどね」
「…、出来るといいですね」
「それが夢なんです。あと、私も前から気になっていたことあったんですけど、どうしてうちの工場に車を持ってくるようになったんですか?」
「何年か前に、車の雑誌に出ていませんでしたか?」
「…あっ!工場の広告用に。でも、その1度だけの筈ですけど」
「女性の整備士ってまだまだ珍しいから、覚えていたんですよ。で、修理しようとしたときに思い浮かんだのが、真依さんだったんです」
「へえ……そうだったんですね。納得しました」
あのときは相当イカれた
RX-7
でびっくりしましたよ、と笑うと、でもそれを期限内で終わらせてくれるんだから、今思っても真依さんに修理を依頼してもらってよかったと思ってます、と改めてお礼を言われる。
「でも持ってこられるペースが早すぎるのでなんとかならないですかね……
なんだか、 前の車の様子が可笑しいな」
「確かに…。もう少し近付いてみましょう」
了解、と声にすると同時に前の車が勢いよく加速をして走りだした。