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1日1日過ぎるのは早く、木曜になった。
結局水曜のお昼には安室さんから是非乗せてください、という返事を頂きほっとしたのを強く覚えている。
お昼過ぎまでポアロのシフトがあるという為、14時頃迎えに行くと伝えた。

コルベットを気持ちよく走らせるため少し山道にでも行こうかしら、とドライブプランを考えながら昨日は仕事をしていたし、今でも何か他に良いプランはないかな、と考えを止めてはいない。
でも気付けば1時間前に差しかかろうとしていて、自分の身支度も済まさないといけなくて。
コルベットを運転するには丈が少しでも長い方が捲くし上がらなくて助かる為、園子ちゃんが選んでくれた青のワンピースを着ることにした。



ガソリンは昨日のうちに満タンにして、洗車も昨日の仕事の合間に済ませてある。上品な黒のボディーは太陽の光が入りより美しい。
左側の運転席に乗り、エンジンをかけると豪快な排気音が響く。

まずはウォーミング。
スマートな走りでポアロに行って安室さんを迎えに行こう。


ポアロの手前にある駐車場に入り、時計を見ると約束の5分前だった。“手前の駐車場で待ってます”とメールを入れて一度シートベルトを外して、目を閉じる。

アメリカスタイルのV8エンジンは誰もが納得してしまうほどの力強さがある。豪快なこの排気音がこの車の底力を証明している。

どうしてもこの車が欲しくて、でも簡単に買える金額ではないので、お父さんにしつこく頼み込んだ。
この車に乗れば、レストアの為の知識も多く得られるだろうって。

そう、私の爺やもコルベットに乗っていた。


好きだった思い出の車は、自分が乗れば形や性能が違う最新の車でも愛することに時間はかからなかった。
後は、思い出の復旧だけ。形で表すのみ。


目をゆっくり開けるといつの間にか窓越しに安室さんがいて、慌てて車のドアロックをオフにした。