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今日は久しぶりの休日。

午前中はゆっくり過ごして、お昼が過ぎる時間帯に私はとある場所に向かった。
そう、喫茶ポアロだ。


あの日帰ってから安室さんに連絡をしようと思ったが、財布を開けたら名刺は見当たらず。中身をすべて出したのに探している物は形もなくて、レシートと一緒に捨ててしまったんだ、と諦めるしかなかった。

車を修理に持ってくる頻度はお得意様の中でもNo.1だし、この前作って頂いたサンドイッチも美味しかったので、少し気まずいがポアロに向かう決心をした。
お昼時に行って、忙しい中店員を捕まえて連絡先うんぬん言ってたら色んな人に迷惑になるだろうから、敢えてお昼をずらして向かうことにした。

車で向かうと距離もそこまで感じず、目的地まですんなり来ることが出来た。


いらっしゃいませ!と案内してくれたのは可愛らしい女性の店員さん。店の隅の席が空いていたのでそこに座り少し店内を見渡す。

安室さん今日はいないのかな、なんて思っているとカウンターの奥から出てきて客席に運ぶ安室さんの姿を見つける。相変わらずのイケメンはお客さんと賑やかに話しており、やっぱり人気があるんだなーと伺える。
とりあえず、安室さんいるんだ、と一安心し、私も何を頼もうかと思ってメニューを見やる。


「えっ、ちょっと!真依姉じゃない!?」


「ん?」
急に背後から声をかけられ振り向くと「やっぱりそうだ!真依姉だ!」と大声で言われた。

「園子ちゃん…久しぶりだね、元気だった?」

「元気に決まってるじゃない!真依姉が中々家に帰ってこないってこの前お母様とお父様が言ってたわよ」

「色々忙しいんだよね、それよりそっちの子は?」

園子ちゃんと一緒にいる女の子に視線を向けると、「毛利蘭です」と丁寧に自己紹介をしてくれた。どうやら上の“毛利探偵事務所”の所の娘さんだそうだ。隅で立ち話も何だし、2人の席にお邪魔させてもらった。


「蘭ちゃん、よろしくね。私は奥田真依だよ。園子ちゃんとは親同士が知り合いだから、小さい頃から顔なじみなんだ」

「へぇー、そうなんですね。真依さんは何をしている人なんですか?」

「私は車の整備士だよ」

そう言うと蘭ちゃんはビックリしていて、園子ちゃんには「いい加減彼氏作ったら?」と呆れられてしまった。違うんだよ、園子ちゃん。車が恋人なんだよ、って言ったら更に重いため息を吐かれてしまった。


「違う違う!そうじゃなくて!男の人に興味ないの!?例えば「僕とか?」」

園子ちゃんの後ろにはいつの間にか安室さんが立っていた。