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近いうちに行われるとあるカンパニーの生誕パーティ。
そこへ潜入して情報屋から莫大な金のパイプを入手する事。

バーボンとしての組織の任務。
今回はベルモットはついてこないが、彼女の事だ。どこで盗聴や刺客を混ぜているか…。
無論、滞りなく行うつもりだが、自分の愛する国にここまで組織に加担するような人間がいると思うと苛立ちを感じる。
いずれは自分が葬る。組織も、赤井も――…







「まあ真依ちゃん、よく似合う事!さすが私が選んだドレスだわ」

「…お母さん、今何着着たと思っているの…しかもそれって私じゃなくてドレス褒めてるよね…。まあいいけど」

「そんな事言わないで!真依ちゃんがいてドレスが映えるのよ。ハーフアップにした髪型もよく似合っているわね。それよりちゃんと手の油汚れは取ってきたのよね?」

母親の“見せなさい”という無言の圧力に寄り、昨晩鬼のように洗った手を見せる。油汚れがなくなった手を確認するとにっこりと満面の笑みを浮かべて私の爪にフレンチのネイルチップをつけていく。
だいたいこうやって、自分がドレスアップするのは年に5、6回。社長令嬢に“戻る”と自然と母は気合が入り、あれもこれもと試着をさせられる。

嬉しそうな母を見ると、娘としてはお茶を一緒に嗜んだり、お洒落や美容を共にするのが親孝行なんだろうけど…それを言ってこない辺り、母も一応理解があるんだろう。



「おお、真依!今日は前回のパーティのときよりも一段と綺麗だな!今日はあまり堅苦しいものでもないからな、遠慮なく食事も楽しむといい。お前の好きなお酒もいくつか用意してあるからな!」

「ありがとう、お父さん。お父さんのネクタイ、この前私がプレゼントしたものだよね、つけてくれて嬉しいな」

「本当に、お綺麗なお姿ですよお嬢様。たまには肩の力でも抜いてください」

「爺や…ありがとう」


さあ、会場の準備は出来ておりますよ、と爺やが一言かけてくれて。
お父さんとお母さんに手を添えられて会場内へと足を踏み出した。