これの直接の続きっぽいようなそうでもないような。
「…まぁ、予想はしてましたけど…すごい人ですねぇ」
「…ハイ」
現時刻、午前11時。場所、日曜日のライモン遊園地。
…人がゴミのようです。
あ、ありのまま ちょっと前に 起こったことを話すぜ!
『お仕事で来日するインゴさんと今日出掛ける予定を入れたら、嗅ぎつけた兄さん達にあれよあれよと仕組まれて、何故か混雑を極める日曜の遊園地に来る流れになった』
な… 何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何をされたのか 分からなかった…
ジョジョ風に言ってみました。…本当にどうしてこうなった。
うん何故かね、兄さん達が今日付のフリーパスチケットを2枚用意しててね、インゴさんとの待ち合わせの時間と場所の指定もされてたのね。
…もう一度言う、どうしてこうなった。
「…すいませんインゴさん…兄さん達が…」
「イエ…寧ろ、本日の予定自体を阻止されなかった事ニ、ワタクシ驚いておりマス。
どのような形であレ、サブウェイボスとしての来日の日程内で、こうしてお会いすることが出来るとハ…正直思っておりませんでしタ」
「ああそれに関しては…前のアレで、ちょっとは考え直したらしくて。」
例の誘拐デートね。どうやら効果はあったみたいで…頑なに会わせまいとするのは一応やめてくれるらしい。
あの後二人に「反対されればされるほど会いたくなる」って一言据えたのも正解だったな。真っ青にしてたもんな〜顔。
…てゆか今更だけど、なんで兄さん達ってあんな私に執着すんだろ。まぁ、万が一私が結婚とかしたら、家政婦出来なくなって困っちゃうか。
「さて、どうします?この感じだと、人気アトラクションは120分待ちとかでしょうけど…」
「希望等は特にございまセン。ナマエ様のご意向に沿わせて頂こうかと考えておりましタ。」
「……ですよね。あの、勝手なイメージなのですが…インゴさんってこういうところ、あまり好き好んでは…来ません、よね。」
「…そうで、ございますネ…」
「う、うーん…」
ど、どうしようかな…。
◆
「ふふふふふ…作戦成功でございます!」
「いい感じに雰囲気悪くなってるね!いいねいいね!」
「ナニナニ〜?二人とも何してるノ?」
「…エメットどこから沸いたの」
「インゴとナマエちゃんとのデートを二人がSettingシタって聞いたからサ〜♪ まーどうせこんなことだろうと思っテ、インゴの後を付けて来たノ。
デ?デ??二人は何しようとしてるノ?何考えてるノ?教えてヨ〜♪」
「…チッ。まぁ来てしまったものは仕方ありません…くれぐれも見つからない様、静かになさって下さいね、エメット様」
「ちょっと舌打ちしないでヨ。二人ともやってることボクと一緒じゃなイ。」
「違います。エメット様はただの野次馬、わたくしたちはナマエの護衛です」
「アハ!Opera grasses片手にこそこそしてる人間ハ、護衛してるって言わないヨ〜!」
「エメットうるさい。見つかる」
◆
「ん〜…。あ、じゃあ先にお昼にしませんか?ここでこうして時間を使ってしまうのも勿体無いですし、食事でもしながら考えましょう?」
ちょっと早いけど、そろそろお昼時だし。
パンフレットにざっと目を通したものの、私もこの遊園地には初めて来たから、目玉アトラクション以外がよく分からない。
「…そうでございますネ。この時間でしたラ、食事は待たずとも済みそうデス」
「…あ。ごめんなさい、それなんですけど」
「…どうかなさいましたカ?」
「あ〜…お弁当、作ってきちゃったんです。
……すいません、自分で提案してなんですけど、来てすぐに食事をすることになるとは思わなかったもので。…野外でもいいですか?」
日曜で混んでるだろうから、食事するのも一苦労かなと思ってね…作っちゃったんだよね…。
あと、遊園地のごはんって、レストランにしろ売店にしろ、あんまり美味しいイメージって無かったからさあ。それなら作るかと思って…ほぼ毎日作ってるから全然手間ではないし。
「…BENTO?」
「え?は、はいお弁当です」
「……」
「ど、どうかなさいました?」
…もしかして、お店とか調べてくれてあったりするんだろうか。インゴさん。この前もそうだったけど、下調べとかかなりきっちりやってくれる方だしな、この方。
…そう、これ後から知ったんだけどさ…あの日の電気石の洞穴も、色々と調べまくった末に見つけてくれた所だったんだって。
洞穴の存在は知っていたものの、行ったのはインゴさんもあの日が初めてだったって。…中の様子とかを知ってたのは、ネットで調べてくれてあっただけで。
これを知った時は不覚にもちょっとときめきました。ハイ。…英国紳士のエスコート神すぎるだろ。
「…売り物では無い弁当は…初めてでございマス。」
「初めて?」
「ハイ。…欧州にハ、弁当の様に複数のmenuを一つの箱に詰めるような文化はございませン。また、昼食を家から持参するということモ、あまり行われないのでございマス。
持って行くとしても…簡易なsandwichesや林檎などの果物を丸ごと、と言ったところですネ」
「へ、へぇ…」
それはまた…栄養バランスの保持が難しそうな文化だなぁ…。
でも確かに、洋画とかでもお弁当みたいなのって見たことないかも?
「…まさカ、ナマエ様手作りの弁当が頂けるとは…思いもしませんでしタ。」
「…大したものではありませんよ?」
「イエ…とても嬉しいデス」
「……木陰でも探しましょうか。一応、シートの代わりになるものも持ってきたので。」
「ハイ。お荷物、お持ちしまス」
「…ありがとうございます」
◆
「…ナマエが照れてる。……ノボリ、歯軋り」
「ハッ、すみません。つい…憎く…」
「インゴは女の子をときめかせるの上手いからネー。ま、楽しませるのはボクのほうが上手いケド。
にしてもベントーいいなァー! ホンット、英国にいると食べられないからネ。ベントーうまいよネ〜」
「ナマエのお弁当は本当においしい。夜ごはんや朝ごはんの残りだけじゃなくて、ちゃんとお昼もお昼で作って持ってきてくれる」
「はい。改めて、大変ありがたいことだと思います」
「だねー。前までよく買ってた売店の398円のお弁当、もう食べる気しないもん」
「…そういえば以前わたくしたちに対し、ナマエは言っておりましたね。『その辺に売っているものなど、食べられない舌にする』と…」
「ヘェー? んじゃ、この状況はナマエちゃんの自業自得なわけなんダ?」
「…そうでございます。発言したことの責任は、最後までしっかり取って頂きませんと」
「そうそう!約束やぶっちゃだめ、ぜったい!」
「オ〜二人ともいい顔ダネ!
…ンデ、ノボリとクダリ、昼はどうするノ? ボクそこの売店でアメリカンドックとか買ってくるケド」
「…わたくしの分もお願いいたします」
「…ぼくのも」
「チョット泣かないでヨォwww」
◆
「あ、これですね。…うん、時間も20分待ち。いいんじゃないですか?」
「ワタクシは構いませン」
「はい、じゃあ並びましょうか。」
お弁当を食べながらパンフレットで吟味した末、選んだのは謎解き、宝探しタイプのアトラクション。RPGアトラクションとも言うんだっけ?ロールプレイング。
アトラクションの中に入ると、中がゲームのダンジョンみたいになってて、謎解きをしながらクリアを目指す…みたいなやつ。ある程度大きな遊園地には、だいたい一つはあるよね。
…しかしRPGの代表格であるポケモンの世界で、リアルRPGをやるって…なんだかなぁ。
「20分でしたラ、そこまで長く感じることもありませんネ」
「そうですね。120分とか150分とかは、ちょっとキツイですよねぇ」
園内を移動している途中、目玉アトラクション達の様子をちょこちょこ見たんだけど、まぁ予想通りほとんどが2,3時間待ちでした。
どこもかしこも、気が遠くなるような長蛇の列。
「…ナマエ様が気になるものがあるのでしたラ、ワタクシは構いませんガ。」
「んー…いいです。私、絶叫モノだと落下系が好きではあるんですけど、よく考えたらポケモンに空を飛んでもらえば済むことだなって、さっき思っちゃったので。
でもありがとうございます。お気持ちが嬉しいです」
あの、直下で落ちてる時の浮遊感が好きなんだよね。まさに空を飛んでいる感覚というか。ふわーっとする感じ。…絶叫が苦手な子からすると、そんなものは無いらしいんだけど。
まぁとにかく、わざわざ何時間も並ばなくとも、これはポケモンで事足りてしまう事なのだ。
「…デハ、この後はどういたしますカ?」
「んー…インゴさんさえ宜しければ、しばらくコレをやりたいかもです」
「…このアトラクションを、でございますカ?」
インゴさんが驚いたような顔をする。
「ええ。まぁやってみないことには分からないんですけど…こういうのってまず一回じゃクリアできないんですよ。
案外、複雑な仕掛けが作られてることが多くて…モノによっては最終クリアには一日じゃ足りないってこともあるんです」
「…そうなのでございますカ。」
私、このタイプのアトラクションは好きで…富●急のとか結構やったんだけど、最終クリアはなんだかんだ出来たこと無いんだよなー。数回チャレンジした末にやっと第2ステージに進めたと思ったら、そこで秒殺されて心折れたし。
でも何故かハマっちゃって、コンティニュー地獄のスパイラルに陥るんだよね。こーゆーのって。
「子供向けに見えて、難易度は案外大人向けだったりするんです。…どうせやるなら、クリアしたいじゃないですか?」
「そうでございますネ。途中下車は性に合いまセン」
「じゃあ、飽きるまではコレってことでいいですか?…ここまで混んでいると、定番モノは時間的にも諦めた方が懸命そうですし」
「了解いたしましタ。」
私の予想では、インゴさんもこういうアトラクションは嫌いじゃないと思うんだよね。…インゴさんって兄さん達と同じで廃人だから、良くも悪くも凝り性というか、やりこみタイプのはず。
そういう人はこれはハマる。ほぼ間違いなく。クリア出来ない歯痒さが許せなくなるから。
それに、謎解きアトラクションは待ち時間に退屈せずに済むのもいいんだよね。専ら、待ち時間は次の攻略の作戦会議になるから、いい感じに時間が潰れてくれるし。
…うん。お弁当食べながら頭捻った甲斐があった気がする。
混んでる遊園地なんて場所でも、折角来たからにはインゴさんにもちゃんと楽しんでいただきたいしね。
「あ、そろそろ順番ですね…クリアしましょうね、インゴさん!」
「ハイ、勿論でございまス」
◆
「…これは良くないねぇノボリ。ナマエとインゴ、アトラクションクリア目指して出発進行しちゃった」
「…ナマエの対応力を甘く見ておりましたね。確かに計算外でございます」
「ネェネェ〜二人はどんな計画を立ててたノ?教えてヨ〜。」
「…まぁ、いいでしょう。エメット様にも教えて差し上げます。
簡潔に申しますと、この混雑、そしてアトラクションの待ち時間による不快感から、二人の仲を険悪なものにすることが目的でございました」
「フーン?…具体的にハ?」
「待ち時間ながくて〜、話すこともなくなって〜、つまらなくなって〜、イライラしやすくなって〜…みたいなかんじ」
「アー…なるほド? 2時間も3時間も話弾ませるのって難しいもんネェ。インゴ、自分から話振れるタイプじゃないシ」
「そう。それにナマエはインゴとまだそんなに会ったことがあるわけじゃないでしょ?面識の薄いひとたちは、特に混んでる遊園地とかはやめたほうがいいんだって。印象がこわれやすいから」
「インターネット上では、『他人に目移りする為に、横の異性が霞んで見えやすい』といった意見もございましたね」
「加えテ、インゴにとって遊園地なんて場所は、言っちゃえばawayだもんネ。考えたんだネー。
…ンデ?二人の思惑は別としテ、なんか楽しそうで良い感じになってるケド?」
「…ですから計算外であると申しましたでしょう」
「なぁなぁの流れでコースター系にでも並んでくれればよかったのにな〜!」
「ていうかサ、ずっとここで覗き見するノ?何時間モ?? どうせならボクたちもアレやろうヨ。面白ソウ」
「却下でございます。それは冒すリスクが大きすぎます。お暇でしたらどうぞ、お一人であちらのメリーゴーランドでもお乗りになったら如何でしょうか」
「うんそうすれば?乗るなら写真とってあげる」
「Boo!」
◆
「ステージクリア、おめでとうございます。こちら記念品でございます。どうぞお持ち帰り下さい」
「わぁ!ありがとうございます」
「…Thanks.」
クリア、しました!かかった時間は…だいたい3時間くらいかな?5回か6回のチャレンジで、やっと最終関門の突破成功。いやー長かった!
けど、これ結構早い方なんじゃないかな?はー疲れたあ。
アトラクションの中は、入り組んでるせいで案外広くて…制限時間もあるせいで結構走ったんだよね。それに攻略ポイントを分担して別行動したりとか、忙しかったし。…うん、疲れたけど楽しかった!やっぱり本気で遊ぶと楽しいなぁ!
あと完クリすると達成感がヤバイね、快感!
「楽しかったですね!」
「ハイ、思いの外楽しめましタ。上手く作られているものなのデスネ」
「ですね〜。貰えたストラップも可愛いですし…折角だからキャスに付けようかな。」
白い羽と黒い羽が、一枚ずつ対で付いてるストラップ。
アトラクションのストーリーの中で出てきた、伝説ポケモンの羽がモチーフのようだ。よく見ると、黒と白でそれぞれデザインが違う。
「…ワタクシもよろしいですカ?」
「え?…あ、勿論です!お揃いですねえ」
「…ハイ」
「(調子に乗ってんじゃねぇぞイn)」
「(ワ〜!クダリクダリ!落ち着ク!見つかるヨ!)」
「このあとどうします?ちょっと喉なんかも乾いてきましたし、休憩所みたいなところでも探します?」
「………」
「? インゴさん?」
「…イエ、なんでもございませン。ワタクシもそろそろ喉が渇いてきたところでございマス」
「じゃあ休憩でいいですね。んーと…あ、近くにあるみたいです。行きましょうか」
「…ハイ」
「…インゴさん、さっきからどこ見てるんですか?」
◆
「アーアーアー…見つかったヨ。アレ絶対見つかったヨー…後でインゴに締められるのはボクなのニ…」
「おそろいとかおそろいとかおそろいとか…」
「クダリ怖いヨ!あとノボリも歯軋りヤメテ!?」
「憎い憎い憎い憎い憎い…」
「モーこの人達メンドクサイ!!」
◆
→