02




驚くことがもうひとつ。
結論から言えば黒ひげは白ひげの悪魔の実の力まで手に入れてしまった。


『悪魔の実は1人1つじゃなかった?』

「そのはずだが…!」

『黒ひげは一体何の実を食べたんだか。』

「とりあえずあいつは置いとけ!とっととここを突破するぞ!」

『はい了解。』


クロコダイルと撤退の活路を開きながら会話を重ねる。 動けないなんて言ってられないほど、海軍は追撃をしてきているのが現状だ。
間違いなく言えるのは、この戦いの勝者は白ひげでも海軍でもなく、黒ひげだということ。漁夫の利とでもいうべきか。
世界の脅威が、あの黒ひげに移っただけなのだ。 その黒ひげたちに衝撃波が襲いかかる。


『何あのばかでかい大仏?』

「見てなかったのかてめェ、あれが元帥センゴク。海軍のトップだ。」


トップにふさわしい能力、しかし仏にふさわしくない怒りの表情。


「悪党共の横行を恐れる世界中の人々にとっては、ここに我々がする事に意味があるのだ!!仁義という名の”正義”は滅びん!!軽々しくここを沈めるなどと口にするな!青二才がァ!!」


それを見届けながら走り続けていると、ルフィを抱えているジンベエが、赤イヌの拳に貫かれていた。 クロコダイルと速度をあげて近づいていく。


「これ以上好きにさせてたまるか!」

『それ同意。』


クロコダイルの砂の刃と同時に刀から斬撃を放つ。
一瞬、その少しの時間で彼には十分だったらしい。


「サーブルス!!」

『えっ、』


ふわりと体が砂嵐に巻き込まれた。


「誰か受け取ってさっさと船に乗せちまえ!!ジンベエ!守りてェもんはしっかり守りやがれ!!これ以上こいつらの思い通りにさせんじゃねェよ!!」

『ちょ、俺は?』

「てめェもさっさと行け!」


まじかよとか思いつつ吹き飛ばされてそのままバギーにぶつかる。 ん?バギー?
何でここにいるのかと気にする間もなくこちらにジンベエの体が飛んでくる。
四の五の言ってられない状況に違いない。


『バギーちょっと背中借りる。あれキャッチ!』

「は?!」


驚きつつちゃんとキャッチしてくれたあたりさすがだ。
当の本人はなんのことかさっぱりな様子だが。
さぁ逃げるにはどの軍艦なら行けるかと海の方を見ると、何かが浮上してきてこちらに向かって叫んできた。


「そいつをここから逃がす!!おれは医者だ!!」

『………ああ、あれは、トラファルガー・ローだったか。』

「おいどうすんだよ!」

『んー』


迷うが、だが、ここまで来たからには悪いようにしないと思う、いや信じるしかない。
最悪の場合でもなんとかなるだろう、何のために来たんだか知らないが。


『とりあえず頼んだ。』


バギーにそう告げて潜水艦に向かってもらうが、背後に何か来ている気配がする。 後ろを振り返ると黄ザルがこちらに向かってきているのが見えた、まずい。


『バギー、ルフィたち下ろしたら俺を上まで持っていってくれない?』

「何だとォ!?てめェ偉そうに!」

『お願いだからさ。』


ね?と詰め寄ると、ふいと顔を背けて仕方がないと言ってくれた。傑作だ。




「麦わらのルフィ、死の外科医ロー…!」


ルフィを受け取った潜水艦に黄ザルが迫る。
為す術がない、どうする、そう思ったローだが、潜水艦の上空に黄ザルは視線をそらした。 つられて視線をあげると上空には派手な男に抱えられた血まみれの少年が弓矢を構えていて、その手と弓矢は漆黒に染まっていく。


『―――いい加減しつこいな。』


笑みを浮かべた嘉識が矢を放つと、ロギア系の能力者であるはずの黄ザルの左肩に突き刺さる。
まさか、どういうわけだと思っていると少年が上から潜水艦の元へ降りてきた。


『早く!』


焦った口調のその少年はよく見ると、左手はもう使い物にならないぐらいの傷で足と腹から血が流れ続けている。
今なら、そう思った瞬間、突如誰しもが動きを止めるような大きな声が戦場中に響き渡った。


「そこまでだァァアア!!」


びたりと動きを止める。空気が変わったそのなかで、その声は続いた。


「もうやめましょうよ!!もうこれ以上戦うの!!やめましょうよ!!命がもったいないっ!!兵士一人一人に、帰りを待つ家族がいるというのに!!!目的はもう果たしているのに!!戦意のない海賊を追いかけ、止められる戦いに欲をかいて、今手当てすれば助かる兵士を見捨てて…!!その上にまだ犠牲者を増やすなんて、今から倒れていく兵士達は……!!まるでバカじゃないですか!!?」


確かに、大戦の勝敗は決したはずなのに、それでも飽き足らないのかという指摘は最もだ、至極全うなことだ、正確かつ効率的指摘、叫び、訴え。
誰しもが動きを止める中、動くなら今。黄ザルには誰かが銃を構えて牽制してくれているのが見える。
ただ帰るのも癪なので、中指突き立てて帰るとしよう、しかしこれが後のトラブルのもとになるなんて思わなかったが。


幕引きの時間

(バイビーベイビー)(くたばれ)




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