03




ひょんなことでトラファルガー・ローに手当てしてもらったはいいが、左腕は固定され、足と腹に包帯ぐるぐる巻きで交換はこまめになんて条件を出されて少しめんどくさい。
ときに、俺たちは今なんと女ヶ島にいるのだが、ルフィの目が覚めたときが怖いということで見張りを頼まれたというわけだ。
ちなみに女ヶ島に男は入れないらしく、超特例ということで滞在できている。 ルフィはどんな縁をこんなところで繋いだのか。


『もうあの日から2週間だなんて、』


信じられないと呟きながら岩壁に頭をぶつけるルフィを見つめた。
呑気だと思われてそうだが、ゴム人間だしね…、俺の隣にはハンコック、お痛わしいと言わんばかりの表情だ。
さてそういえばハンコックといえば、俺は彼女に女と勘違いして蹴られそうになったのだった、半端ない気迫を思い出したら背筋がぞわりとする。なんとなく近寄りがたい。
え?ハンコックとルフィといっしょにいるのかって?
それじゃハンコックはとっくにルフィに何かしら手を打つはずだろう。
そうしない、いやできないのは、目を覚ましたルフィと誰とも会えないから。俺たちは今見晴らしのいい高台でルフィを観察していることしかできない。
彼が兄の死を苦しみながら受け入れるのを見ることしか、できない。その受け入れがたい事実を飲み込むことの苦しさをよく知っている。
その痛みがぶり返したように、つきんと胸を痛めた。
遠く離れているはずなのにルフィの声が聞こえ、その言葉にひどく同情したし、哀れにも思えて目を伏せた。


「何が海賊王だ…!!


―――俺は!!!弱いっ!!!!」


そしてまた暴れるルフィ。
行かなくていいのかとハンコックがこちらを向くが、俺が行ったところで前向きにしてやれるわけではないし、むしろ引き込みそうで行けない。
俺の出番はないよと思っていたら、ハンコックに胸ぐら捕まれた。


「ルフィを元気付けられるのは、…認めとうないが、もう、お主らのような仲間でないと無理なのじゃ!」


だから行け!さもないと切り刻んで猛獣のエサにしてやるともはや脅迫で迫られ、その場を追い立てられた。
エサになりたくないから行くしかない。仲間、ね。
がさがさと茂みをかき分けながら進んでいると、ジンベエさんの声が聞こえた。


「今は辛かろうがルフィ、それらを押し殺せ!!失った物ばかり数えるな!!無いものは無い!!確認せい!!お前にまだ残っておるものは何じゃ!!」


彼らの元にたどり着いて倒されているルフィとばちりと目が合うと、ぼろぼろと涙を流し始める。


「おれには…、仲間がいる゛よ!!」


その言葉がなぜか胸の底にずしりと重くのしかかった気がした。ルフィはそのまま集合場所がある、行かねばならないと言葉を続けている。
行かねばならないと思うということは、生きる気を、前に進む気を持ってくれたということだろう。
俺みたいにはならなかったわけだ。なんとも建設的な回復である。

そんなわけで仲間が待っているとくれば、皆がいるであろうシャボンディ諸島に行くのかと思っていたのだが、俺たちは今、この前の決戦で亡くなったルフィの兄エースと白ひげの墓がある島に来ていた。
実はあのあと冥王レイリーがやってきて、ただ戻って集まってはまた同じことの繰り返しになりうるという懸念から、ある提案をしてくれてそれに乗っかったのだ。


『こんなんでいい?』

「ああ、それで構わんよ。」


ルフィの肩に書いた文字を見る。3D2Yと書いたのだが、果たして伝わるかどうか。


『じゃあ、いってらっしゃい。』

「おう!」


ルフィはこれから墓参りで、俺は船でお留守番。
その後世界に届けられる新聞には16点鐘と題して哀悼の意を示すルフィの姿が写っており、16点鐘の意味は新年の終わりと始まりに8回ずつ鳴らすという習わしで、この場合白ひげの死は時代の終わりと、次の時代の始まりを意味するのだが果たして誰の時代なのか。
しかしこの行動の本当の意味は、仲間たちのため肩に記された3D2Yにある。
そして、その新聞には新たな手配書も加わった。中指突き立て傷だらけにもかかわらず涼しげな顔。

―――"殺人鬼" 嘉識 Dead or Alive 4億ベリー。



血に飢えた本能

(血まみれのひどい顔)(ぎらつく瞳)




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