03





目を覚ます。


「ピロピロピロっ、目を覚ましたげぼあっ!!」

『っ、…ごめん、』


不可抗力だ、と言おうとしたがやっぱり止める。
なんかデジャヴュなんだが。


『で、今度は随分と豪勢な部屋じゃん。』


部屋の周りを見渡しながらそう言う。
拘束もなし、部屋も広く家具も良さそうなものだ。すると、変な足音(?)をたてながらジェスチャーで説明しようとするドクター。


『……さっぱり分からん。』

「シキの親分の計らいだ。」

『最初っから喋れよ!』


枕を顔面向かっておもいっきり投げる、ぼふりと音をたてて直撃した。ってかマフラー針金とか入ってんのか、全く靡かないんだけど。


「シキの親分が自由にしとけって言っていたのさ。
しかし、あれだけダフトグリーンに触れときながら起きるやいなやそれほど元気とは、興味深い。」


舐めるような視線で見られ落ち着かない、ダフトグリーンってあの毒素がある木か。
あれは痛かったと思いながらパッと手を見ると、緑色の痣が出来ていた、……………………え?


『え、…何これ。気持ち悪い。』

「それが症状だ。ダフトの毒素により緑色の痣が出来てそいつの体は段々動かなくなっていく。」

『………?』

「無理に動こうとすれば痛みが出る。まあ、次、同じくらい毒素を吸収すれば死ぬだろうな。」

『そうか。』

「幸いお前は顔には痣が出てきていないがその分身体中に痣が出来ているはずだ。」

『…………。』


要するに、次逆らえば本当に文字通り殺せるというわけだ。しかも自由の身といっても本調子から程遠いし以前より警備は厳しいだろう。
状況は困難極まりない。
文字通りここに押さえつけられているのだ。
お互い無言になった瞬間、ドクターからプルプルプルプルと声が聞こえた。取り出したそれは島でも使ったことがある電伝虫。カタツムリが電話機ってなんかやだよね。
シキの声で電伝虫が連れて来いと喋ってあっさり通話は切れた。


「お前にも見せてやろう。」


そう言われて連れて来られたのは指令室。
でかいモニターがいくつもあって、そこに映し出されている映像に俺はただ釘付けになっていた。
目の前に映し出される動物たちは次々と人々を襲い侵略する。
あの時と同じように、自分の身を滅ぼしながら破壊を繰り返す動物たち。
しかし、それより俺は、全てを燃やす炎に釘付けだった。

全てを呑み込み、全てを喰らい、全てを燃やし、
全てを無にし、全てを灰にし、全てを壊し、全てを失う炎が、その赤が――、

あの時の光景と重なる。

全てを、俺の全てを、唯一無二の存在を奪い去ったあの炎、灰色の空を燃やす炎と。


「……おい、どうかしたか、」


無意識に拳を握りしめる、身体中には嫌な汗がまとわりつく。
考えがまとまらない、ぐるぐる渦巻いてばらばらと、思考回路が、やばい。
ああもう見たくないのに、でも目を離せない。
シキの言葉が耳に入ってこない。
画面全体が炎の朱色で染められた時、耳鳴りと吐き気と共に脳内は白く、視界は黒く塗り潰された。



赤に染まる空の中に君を見つける

(炎が、)(あなたを、全てを呑み込んだ炎が、)(怖いんだ)





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