04




「用意できたぞ!本当によいのだな。」

「ああ、もう話はついている…!」


滞在先の編笠村で骨が突き抜けた腕以外はもうよくなってきたので、全身のストレッチや散歩をしていたら天狗の面を被った男が何やら持ってきた。ああ、刀をゾロにあげるよって話か。


「さて、わしは天狗山飛徹、ワノ国の刀鍛冶である!20年…、この刀をお2人に返納する日をお待ち申し上げておった!おでん様のかつての愛刀、天をも切り落とす天羽々斬。そして地獄の底まで斬り伏せる閻魔。いずれも秋水と同じ大業物21工に位列している。」


そんな名刀中の名刀、閻魔がゾロの手に渡り、一度振ってみろと言われ、誰もいない方向の木を斬るつもりで振るった刀は木どころか崖状になっている地面すら斬り落とした。必要以上に斬るためゾロの力も余計に吸い取られ腕が細くなっている。すぐに吸い取られた力を取り戻して腕は戻ったが。
そしてそんなじゃじゃ馬な刀をどうするかと尋ねられ、ゾロは使いこなした頃には強くなっているということだと前向きな発言をして貰い受けた。


『刀ってやっぱそういう名工品がいいの?』

「なんじゃ、お主の刀が気になるのか。」

『ちょっと見て。』


背負っていた刀を天狗山さんに渡すと確かにこれは業物ではあるが良業物ではないな、と言われた。


「別に悪い刀ではござらん。しかし、これからの刀の良し悪しは使い手による。」

『へえ、俺次第ってこと。』

「そうじゃ、使い手によって刀はより高みへと登り詰める。」


そんな言葉にちょっとだけやる気出たので、天狗山さんにお礼を言って、早速刀を振るうゾロの元に行ってみる。


『というわけで、ちょっとだけ練習に付き合って。』

「使えんのかそれ。」

『コツはもう知ってるから大丈夫。片手使えないけどそこはとりあえずシカトしていいから。』


じゃないと実戦で使い物にならないしと言って、ぐ、と柄を握る手に力を込めれば刀身が黒く染まった。武装色は元から使えているものの、刀にそれを反映するのはちょっと自信がなかったけどできた。とりあえず一安心かな。
面白ェと言ってゾロも三刀を構える。
それに対してお先にどうぞと言えば、遠慮することなくゾロが斬りかかってきた。
ぎりぎりまで引き寄せて切っ先と切っ先がぶつかった瞬間、上体をそらして自分の刀を盾がわりにして一刀を受け流し懐に入ってゾロの腹に蹴りを入れる。しかし、後ろに跳んで衝撃を軽くしたゾロはもう片方の手で俺がいる場所に刀を振り下ろした。下にしゃがみながら刀を頭上にかざして受け止める。そのまま上に跳んで刀を払いのけたが、宙に浮いた体めがけて三刀が襲いかかり、刀の面で受け止めたが踏ん張りの効かない空中なものでミートした衝撃によっていかんせん吹っ飛ばされてしまって、つい舌打ち一つこぼす。
宙でぐるんと体勢を整え、なんとか木に背がぶつかる前に両足で着地した。
せっかく距離が取れたから次は全速力で行ってみよう。
ぐ、と全快の足に力を込め、覇気を纏わせた脚で木を蹴って駆け出す。ゾロからすれば一度瞬きをした瞬間に目の前まで迫ってきているという感覚。
勢いのままゾロの首筋めがけて突きを繰り出せば三刀で受け止められるも少し後退させることができた。お返しができて少し満足する。


「ッンの!殺す気か!」

『こんなので殺されるほど弱くないでしょう?』

「テメェ…!減らず口が!」


売り言葉に買い言葉と言わんばかりの調子で、猛烈な二刀の攻撃を刀でなんとか受け止めていく。刀が振られてから、では遅いので、次の攻撃を今の攻撃や体勢から予想しながらじゃないと間に合わない。しかしこんな猛追を受けても刀はしっかりしているもので、天狗山さんの言う通り使い手によるというのは本当なんだなと思った。あれ、自画自賛?
二刀一斉に上段から襲ってきたのに対して体ごと回転させて弾き飛ばす。さらに攻撃の手は止まず、すぐに体勢を整えて突き出された一刀を躱してその手を蹴り上げて応戦したら、ギラつく視線と交わった。


「行儀の悪ィ足だな!」

『げ、』


足をがっしり掴まれ、ぐ、と足首に力がこめられたと思ったら体が浮いた。そのまま片手で横にスイング、なんて力技だ。
ろくに受け身も取れず、体が吹っ飛んで岩壁に背中からぶつかると、覇気を背中に移したからあんま痛くないけど、ぶつかった衝撃で肺から全部酸素が吐き出されて咳き込む。すぐ立ち上がろうとしたが内臓がビクついているのが分かって一時停止。あ、ちょっと内臓やっぱだめだったかもしれない。病み上がりにやることではなかったか。
腹筋の力を使わず刀を杖代わりにして体を起こすといつのまにか距離を詰められ首元に刀を向けられていたのがわかり、刀から手を離して右手を上にあげた。こうなるともう降参。


「片手にしちゃまずまずだな。」

『お世辞をどうも。』


したり顔のその面に少しむかつきを覚えていると、ちょっと何やってんのよバカというナミの怒気を含む声が向こう側から聞こえて、そそくさとお互い退散した。



蘇生する夜
(これは正真正銘彼らのための力)




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