02




絶望の表情を浮かべるカリーナに対してテゾーロが失望したと足で踏みつぶそうとした。
恐怖のあまり動けないカリーナにナミがすんでのところで飛びついたおかげでぺしゃんこにならずに済む。まだ負けていない、あたしたちを信じて、チームなんでしょと鼓舞するナミをテゾーロが右手で掴んでいった。


「チーム?そんなもの信じて何になる?」

「それでも!あたしは信じる!!」


「―――テゾーロ〜〜ッ!その手を離せェッ!」

「……わらえよ、麦わら。こいつはまだお前を信じてる。お前たちはこの俺に負けたクズ。すべては俺の、所有物なんだよ!!」

「お前は…!俺の大嫌いな奴に、そっくりだ!その手を離せ!!!」

「…笑えと言ったら笑え。俺の物をどうしようと自由だ!そうだろ!?カリーナァッ!」


ルフィの言葉に何を思ったのか知らないが、地面に叩きつけるようにナミを投げ捨てた。このままではすごいスピードで、地面にぶつかってしまう。
さらに追い討ちをかけるようにテゾーロはナミを潰そうと拳を振りかぶった。しかし、その拳に目もくれず、涙をこぼしながらカリーナが手を伸ばして絶叫する。たとえもろともになろうとも。


「ナミ〜!!!」


しかしそうはさせないのが我らが船長。
ナミとカリーナを一瞬にして両腕で確保して拳が届かない方へ飛ばす。


「ロビーン!!」

「スパイダーネット!」


テゾーロが振り下ろした拳の下にはルフィ。ちなみに俺もちょうどその地面に倒れているんだけどね。
ルフィが来てくれて間一髪。俺ごと死ぬかと思った。地面に刺さる両脚の間に俺の体という体勢。


「おい!今のうちに出ろ!」

『ありがとそうする、』


痛む身体を動かしてなんとか這いながら拳の下から避難すれば、こっち来てろとサンジが迎えに来て抱えてくれた。横抱きにされたがお腹に負担かからなくて楽な抱えられ方なので文句は言わない。そのままチョッパーのもとに運ばれるが、なんかパニクってるんだけどどうしたの。


「医者ーっ!!」

「お前だよ!!」

『おれの腸は、…おそとに、げほ、こんにちはしてない?』

「ひどい怪我だけど、脱腸はしてないぞ!」

『あ、よかった』

「よくねえだろ!」


サンジにすぱんと頭叩かれた、いや俺怪我人なんだけど。無茶しやがってと言うサンジの表情はタバコの煙に隠れてよく見えなかった。
チョッパーの応急処置ということで、腹の傷口塞ぐために糸で縫い合わせるらしく、そんなグロテスクな作業を見たくないのでそっぽ向けば、黄金の拳を砕きながらルフィが徐々に上にせり上がっていくのが見えた。
そんな逆転の兆しのような光景でも全然気が紛れず、じくじくと痛む。麻酔なしはきつい。下唇噛んで耐えていたらこれ噛んでろとサンジからタオルを口に突っ込まれた。


『ん、ん゛っ、』

「ウソップ!動かないようにちょっと抑えてくれ!」


ウソップに上半身を両手で押さえ込まれる。意識をそらそうと頭の中で必死に適当に念仏を唱え続けた、いろんな宗教の有名なフレーズがループするぐらいだけど。脂汗みたいなのがだらだら流れて額に前髪がじっとりと張り付く。


「頑張ったな!終わったぞ!」

『一瞬花畑と川見えた…』




「俺の仲間は!物じゃねえ!!!ゴムゴムのォ!ゴングッガンッ!!」


チョッパーの言葉と同時に、ルフィが突き上げた拳によって黄金の巨体が倒れた。なんと、倒したのか。
テゾーロが倒れ、幹部たちも倒れたその状況に部下どもが尻尾を巻いて逃げていく。しかし、その巨体が黄金の波になって街中に広がり、彼らを逃すことは許さなかった。まだ終わりではない。さらに広がる黄金はこちらにも。
サンジがとっさにまた横抱きで抱き上げてくれたおかげで溺れるのは回避したが、ありがたいけど俺は汗と血でべたべたでなんだか申し訳ない。
誰もがその黄金の波に飲まれゆく中、誰もが黄金の上に立つテゾーロを見上げる中、黄金の煌びやかさに恐れを抱き、美しさに見惚れる中、ルフィがただ1人ギア4の姿で宙に留まり続ける。


「ゴオン・リーラ・ディ・ディオ!!」

「ゴムゴムのォ!レオレックスバズーカ〜〜ッ!!」


黄金の巨大な触手で潰しにかかるテゾーロの力とルフィのバズーカーが均衡する。


「フ、ハハハハハッ!どうだ!俺は神になったんだ!」

「何が神だ!お前なんか、ただの怪物だ!!俺は!海賊王になる男だ!!!」


意地と意地がぶつかった結果、こういう時はあんまり精神論は得意じゃないけど、気持ちの強さがパワーを発揮するのだろう。
黄金が、崩れゆく。それはテゾーロの負けをも意味し、人々の自由も表すものだった。



助けてリーダー!
(そしていつも)(誰かが勝手に助かる)




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