04




全快とは言え。
さすがに、1日経てばきつい。
息も切れて、頬をだらだら伝う汗を手の甲で拭ってもキリがない。とっくに被っていた編笠はどこかに吹っ飛ばした。
こんなぶっ続けでやり合うとは思ってなかったが、もうやるかやられるかの瀬戸際なので逃げるわけにはいかない。手のひらの皮も若干剥けてるが、刀を強く握り直す。


「おう疲れたか?」

『涼しそうな顔、してる。』

「それでも汗はかくぜ、動いてれば暑くて暑くて、な。」


お互い吐く息は熱がこもって白く曇る。場所を移動し続けた結果、雪が積もっている地方に来てしまったらしく、荒野とは違って竹やぶが視界を遮っている。まあそれでも動いた分暑いんだけど。
すぱん、と竹を数本一気に切って視界を開けば暗がりに赤色は見えず、がさがさと葉と雪を踏む音がした方を見やれば迫っていたつま先が腹にズドンと入って、たたらを踏みながら倒れるのを堪える。重い。口からごぼ、と血が噴き出た。ちょっと致命的。
しかしふらつく間もなく、スライディング着地をした赤色がさらに地を蹴って上空へと飛ぶのを顔を上げて視界に追えば、先ほど自分が切って舞い上がっていた竹を一本掴んで槍のようにこっちへ投げようと振りかぶっていた。


「そーら、よっ!」

『っ、げ、』


勢いよく投げられた竹を縦に真っ二つに切る。あれ、これなんだか剣豪っぽいじゃん。
ちょっと楽しくなっちゃって思わず口角が上がった。俺にはまだ余裕があるらしい。なんだか他人事のような考え。
2本、3本と続く竹を刀で弾きながら走り続けて場所を移動すると少し開けた場所に…、墓地?にたどり着いたが。
…いやこれは壊したら呪われそうだと思い目線をやれば、あちらも同じ考えらしく墓地を抜けようと一斉に並んで走り抜けて向こう岸にかかる橋にたどり着いたら、大男の背中が見えてきた。背中にいくつもの武器を背負っているあたり穏やかじゃない。
罷り通ることはできるかと思ったら、大男の前方に人がいるらしく、大男が武器を奮っている。
となると、橋は使わずスルーだ。邪魔は悪い。
赤色と目の前の争いのどさくさ紛れに川を跳んで、向こう岸に着地した瞬間に刀を横に振ればこちらに飛んできていた赤色のつま先と衝突。びりびりと再び大気が揺れた。
こちらに気づいた大男が、何だ貴様らと声をかけてきて、赤色が墓荒らしじゃねえから安心しろと言う。
刀を押し出すように体重をかけて振り切って赤色を弾けば、よく知った声が自分の名前を呼んだ。


『ゾロ、』

「何でテメェがここにいんだ!」

『いや俺のセリフ。ここに用事なんてあったっけ。』

「俺は刀を盗まれたから取り返しに来ただけだ。」

『ああなるほど。』


俺は、と言いかけた瞬間よそ見してんなよと赤色の拳が目の前に迫ってきたので、閉口して横に転げながら避ける。危ない。
加勢は、と聞かれたが首を横に振った。ノーだ。やめてくれ。
手出し無用と言えば、そうかよと言って大男との斬り合いに戻っていった。聞き分けよすぎ。
赤色がその拳を手動にして横にびっ、と振ってきたので咄嗟にイナバウアーのように背をそらして避けたら、俺の背後にあった竹やぶが何本かその衝撃ですぱんと勢いよく切れたのが見えた。どういう原理なのか。
そんなことを考える暇もなく、背をそらした勢いのまま足を振り上げて手刀を蹴り上げればおっとと赤色が呟いた。余裕を含む声で癪だ。
バク転して立ち上がるとまた目の前に拳が来てて刀を盾代わりにする。


「もう一ッ発!!」

『っ、』


刀で防いだものの、衝撃でぶわと宙に浮いた体は背後の竹やぶにぶつかって、雪がどさどさと上から落ちてきた。
落ちてきた雪で下半身が埋まってしまい、なんとか抜け出そうと四苦八苦。冷た。
しかし、ふ、と影に覆われ、上を見やれば赤色が俺の頭にかかと落としをぶち込もうとしているところで、抜け出す暇なんて与えてくれない。
重力を乗せたかかと落としが迫ってきて、とっさに頭上で両手をクロスにして構えてかかとと衝突したら腕がビリついた。


「はん、なんだよ覇気使えんのか!くそ、羨ましい…!」

『へえ、覇気知ってんだ。』


じゃあ話は早い。さっきの衝突による余波で雪もいくらか吹っ飛んだらしい。両手両足に覇気をまとい、赤色に突っ込んでいった。


背骨だけでダンスを踊りましょう
(靴が赤くなるまで)(戯言だよ)




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