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花の都にいるすべての人々が涙を流した。
1つは花魁、小紫が亡くなりその葬儀が執り行われたこと、2つはトの康こと霜月家元大名、霜月康イエの処刑が行われようとしていたこと。小紫の棺が練り歩く様子に涙し、康イエが生きていたことに涙した。
その康イエが昨今巷で噂の盗みを働く丑三つ小僧だと報じられたが、それは注目を浴びたいがため嘘をついたと即座に本人が否定した。


「さて!皆の衆!見よ!麗しき花の都!絶景かなワノ国、この風景はまさに代々光月家と庶民たちの手で築き上げた我々の誇り!!間違っても貴様の手柄ではない!!黒炭オロチ!!!」


そうして声を上げ続ける。周辺一帯が荒野となり、川が黒ずんでしまっているこの国を作り上げたオロチは害虫でしかない。逆さ月のマークなどを記した紙を配布したのは、光月家の無念を思い自分が悪戯ながらに計画したことだ。しかしそのいたずらに気づかず臆病なオロチは何も罪のない人たちを捕まえて牢獄に投じてしまったのだと。
そんなことを言われ怒らないほど穏やかな男ではない。オロチは自らの手で銃口を康イエに向けた。
それでも笑みを浮かべたまま、叫ぶ娘、おトコの前で、いくつもの銃弾は放たれ、無念ながらに地へ体を投げ打つ。
娘のおトコが柵を越えて父の元へ駆け寄り、生き返ってほしいと薬を塗るところにオロチが煩わしく思い銃弾をなおも放つが、それはゾロとサンジが同時に前へ出て防いだ。
しかしその銃声と同時に、遠からず近からずの距離にある街のはずれから轟音が聞こえ始め、集まっていた民たちの意識は一触即発の目の前からそちらに向けられる。
それはだんだんとこちらに近づいてきて、向こう側から噴煙が音が鳴ると同時に増えていく。悲鳴と建物が崩れる音が混じり、次第にそれが大きくなってくる中、追ってくるゾロを狂死郎に任せて身の危険を感じたオロチは急いでその場から離れ出した。
そして、オロチと入れ違うタイミングでついに1つ手前の通りから建物に亀裂が入り、壁をぶち破って人影がぶっ飛んで現れた。衝撃で通り挟んで向こうの牢獄の壁にひびを作って激突し、地面に瓦礫とともに崩れ落ちる。
髪の毛、服装が血でこびりつき、土埃で汚れている少年。それに対して涼しい顔をしていくつかの斬り傷程度を負う、崩れた建物の瓦礫を踏み越えて現れた真っ赤な女性。
ルフィら牢獄組を除くその場に居合わせた麦わらの一味は乱戦に苦戦しながらもすっかりぼろぼろになったそのよく知った少年の姿に驚いた。


「あーあー目立っちまった。まあしょうがねえや、あたしは本来お前みたいな背の小さいかわいい男を痛めつける趣味はねえんだよな。もうあんま虐めたくないからちゃっちゃとそろそろ終わらそうぜ。」

『…3日、ぶっ通、しで…げほ、殺し合っておいて、いまざら、よく言える!、っおえ、』


瓦礫をどかしながらなんとか這い出ることができた。喉に詰まった血痰を吐き出す。鼻血が固まったのか鼻呼吸がしづらくて口呼吸になり、口呼吸をするたびにのどからひゅーと空気が漏れるような情けない音がした。
額に流れていた血も固まって肌をひきつらせる感覚が不快でこすればパリパリととれる。
がんがんと頭は痛いしどっかで折った脚も熱くて痛いし内臓もなんかじくじくずきずきやられてるような。平衡感覚すら危うく、なかなか焦点が合わない気がして、刀を杖代わりにして支えながら立ち上がるのがやっとだ。
嘉識!と呼ばれる声が聞こえるが、振り向く意識すら回せない。
今この目の前の赤色を壊すにはどうするかに全神経集中させることが俺にできること。
当の赤色は何奴と叫んで背後から襲ってきた忍者をうるせえと裏拳で吹っ飛ばしているけど。
予想だにしない人の集まりようで、自分たちに集まる視線が煩わしい。


見世物小屋の神様
(目撃するあなたは、)




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