02




自分たちの顔を知る奴らが探しに来たとのことでそそくさと撤退する。ロビンはお呼ばれしたから俺とトラファルガーとサンジとウソップとフランキーだけ撤退というわけで。


「顔を隠して戦うのはどうだ!?」

「100%勝てるならな、怪我の1つでも決戦の戦力ダウンだ!今は戦うな!」

「なんだ船長面しやがっててめェ!俺は捕まりゃ全部喋って助かるぞ!」

「ふざけんなてめェ!じゃ全力で守ってやる!」

「やったー!」

「『仲良しか』」

「人のこと言えねェじゃねえか!」


おっと、トラファルガーとかぶった。
しばらく逃げていると、きゃーという悲鳴と壊れる物音が聞こえてくる。女性の悲鳴は無視できないサンジは飛び出していってしまい、追わざるを得ない状況になってしまった。
しかし宙を駆け、手当たり次第蕎麦屋を襲う恐竜へサンジが蹴りを食らわせようとした時に、下からふわ、とその恐竜が浮き上がる光景が屋根越しに目に映る。細い路地を抜けてサンジとその恐竜がいる開けた場所に出た瞬間、ひゅ、と喉が鳴った。

その場に似つかわしくない真っ赤な女が、拳を突き上げたまま片手で器用に蕎麦を食べている光景。
蕎麦屋はもうぼろぼろで、哀川潤が踏み込んだ建物は例外なく崩壊するという都市伝説のような話を思い出す。ほんとのことだ、天井も壁もなく、彼女が座る椅子とそばを置く机を残して瓦解している。たとえ何が原因であろうと事実そうなっているのが恐ろしい。
浮いた体が勢いよく重力のまま地面に落ちた恐竜は貴様何なんだと激昂しだした。


「かはは、せっかくおいしい蕎麦食ってんだから邪魔すんなよ。なァ?零崎。」

『…そうだね、請負人。でももう蕎麦食べんのやっぱやめて、そんな恐竜は置いといてさ。わざわざ殺されに来てあげたんだからこっち優先してほしい。』

「はん、殺されてもらわなきゃ、じゃなきゃあたしが困るぜ。」


殺され…!?何言ってんだよ嘉識!と狼狽えるウソップ。
舐めたことしやがってと彼女の背後から襲いかかる恐竜に対してレディに何しやがるとサンジが恐竜の頬に飛び蹴りを食らわす。幸いこの場には俺たちの顔を知る奴らはいないらしく、トラファルガーが早く逃げるぞと声をかけるが、バレなきゃいいんだろとサンジが自信満々に言いのけた。
もはや俺はそれどころではない。


『…俺はここで離脱する。いいよね?大丈夫、上手くやれるから。あんたたちの足手まといにはならないから。』

「はん、どーせ死ぬんだからその後のことなんざ考えんなよ。そういうもんだぜ、世の中って。理不尽に生まれて意味不明に死んでくんだ。」


ごく自然に、ナチュラルに、当然のように、あっけらかんと言ってみせる。
俺が殺されてしまうような言葉にびびっているウソップにはますます毒のような言い草だ。現に意味わかんねェよと怒っている。
さて、俺がこの最強に完治したからとて勝てるかどうかは別の話であって、おそらく生き残れるかどうかは限りなくゼロに近い。それぐらい力の差を感じるが、それでも俺が零崎である限り、想影真心を殺しに行かないと気が済まないのも事実。
この麗しいお姉様と知り合いかてめェというサンジの声は無視。殺るか殺られるかの瀬戸際なのにそんなアホみたいなことに構ってられない。
そして、行くのかと強張った表情で問うトラファルガーには無言の笑みを返す。その問いの真意がわからないほど馬鹿ではない。
けど、なんて返せばいいのかわからないから。

あっという間に食べ終わった器にお金を入れてごちそうさんと言いながら立ち上がる赤色。
編笠を深くかぶり直し、刀を構えた。家賊に仇なす奴は誰であろうと何であろうとその身内ごと、殺して解して並べて揃えて晒して壊してみせる。
それが、俺が零崎でいるための意義だから、


「さあ、殺して解して並べて揃えて晒して壊せるもんなら、殺して解して並べて揃えて晒して壊してみろよ。」

『勝手に読むな。お望み通り、殺して解して並べて揃えて晒して壊してやんよ。零崎を、開戦する。』


死兆星の呼び声
(声が聞こえる方へ)




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