02





所詮、表と裏は違うのだ。
死ぬのと殺すのでは大きく意味が違うのだとここで力説したところでそれがどれほど事象の結果に対して意味のないことか。
死ぬのが先か殺すのが先か分からないが、きっと終わりは近いと信じている。願っている。祈っている。死んで終わりじゃない人生に終わりが来てほしいと思っている。もういいやって思っているから、だからもう終わってくれ。終わってほしい。


『大丈夫、もうすぐ終わるから。』


そんな毎日起こっていることではないのだ。いつかの話だが終わりが見えていることなのだ。だから大丈夫と言った。
この場はこの言葉で収まってくれるだろう。だって俺がさらさら話す気はないし、さらに運良く船が目的地に着いたという声を聞いて、否応がなしにお開きとなり、なんて傑作だと思わず笑みがこぼれかける。
そしてゾロが錦えもんに呼ばれて渋々納得いかない様子で出て行った医務室で、俺はお腹をトラファルガーの能力によって診察され始めた。
帽子越しの視線と視線がばちりと合って、ふ、と口元が緩む。


『ほんと、殺してあげようか。』

「ふざけんな、黙ってることでどんなメリットがある。」


あんたが喋ったところでメリットがあるとも思えないんだけどという言葉を口にすることすら面倒で、もういいのに、とだけ口にしたら苛立ったような視線を向けられた。


「あの赤い女か。」

『やっぱ着いてきていたの、トラファルガーとゾロなんだ。』

「そりゃいきなり離れ出すやつがいれば追うのは当然だろ。」


まあ言っていることは分からなくはないけど。
俺が自分で自分を殺すか、あの赤色が俺を殺すかのどっちかだ。結論が決まっていて過程が違うだけの話なのだ。
あの赤い女に殺されるというならわざわざ行ってやる必要はねえだろうと呆れたように言われたが、残念ながら会う理由ができてしまったので無理だ。
こればかりは双兄の言いつけすら守ることはできない。零崎である限り俺はあの赤色に会って、例の災害級の奴を壊さなければならないのだから。これは絶対で必ずで必須で、当然、常識、必然、自明の理の如く、呼吸をする如く当たり前のことを当たり前のようにするだけ。どんなに難しくて、どんなに可能性が低くて、どんな理由があろうとも零崎である限り。
俺の心臓はどうだったと嫌味の一つでも言ってやらなきゃ気が済まないのも少々。


『きっとこのワノ国に赤色はいる。俺は基本的にあんたらといっしょにはいるけど、見つけ次第優先するのは赤色だ。なに、カイドウ討伐への迷惑はかけないよ。』

「大人しく行かせるとでも、」

『お願いだから。』


ずっと裏の誰かに会えることを望んでいた。こんな千載一遇のチャンス、二度とないかもしれない。俺はずっと待っていた。
トラファルガーの目をじっと見つめ続けると、トラファルガーが何とも言えない顔をした。


「っ、そんな目で見るな。」


クッションをぼふんと顔面に押し付けられた。怪我人になんてことを。
一瞬間が空いて、あんまり目が届かねえ範囲に行くなよと小言が聞こえた。自信ないという言葉は飲み込んだ。


欠陥だらけのイミテーション
(バレることに負い目を感じなくなった)




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