02




『キャベツくんすごくないうちの船長?』

「キャベツじゃない!キャベンディッシュだ!!失礼だぞ!!」

『きゃべん…てぃ、でぃ?…ごめんキャベツでいいよね。』


勝手に納得するなとツッコミが入る。
台地から見える街とルフィたちの風景を眺めるが、どうしてキャベツくんもトラファルガーもそんな遠くのことが見えるのか。俺と言えば目を細めてやっとシルエットと色がぼやぼやと分かるぐらいで限界である。アフリカの部族の人とかそのレベルの視力だろあんたら。
ルフィの大きな拳が何かを吹っ飛ばしたのを見るに、おそらくドフラミンゴを殴り飛ばしたのだろうと推測できる。


「まだ奥の手があったのか…、だが覇気を使い過ぎている。」


連撃に次ぐ連撃を重ね、限られた中でドフラミンゴを圧倒したかのように思えたが、しかし頭上の糸が消えない様子を見るとまだダメ押しが足りないらしい。
加えてルフィのタイムオーバーである。
あと少しなのにピンチってやつだ。


「――シャンブルズ、っ!?」


パッと宙に浮かぶ感覚、共に地面にどさりとなす術なく落ちた。
落下地点はドレスローザ国民に背負われたルフィの元である。
驚く彼らをよそにトラファルガーが信じられないと言わんばかりの目でこちらを見て、怒り気味の口調で言葉を口にした。


「何して、」

『こんな千載一遇のチャンスなのに、ただ指をくわえて何もしないわけないと思ったから捕まって来ちゃった。』

「来ちゃったじゃ…ったく、好きにしろ。おい、お前ら遠くへ逃げすぎじゃねェか。そいつの覇気は戻るのか。」

「あの!はい!10分必要と言われ、今は…あと3分20秒!!」

「一刻を争う勝負だ、あとは俺が預かる。」

『ははあ、じゃあ俺が3分足止めすればいいね。』

「その体でよく言う…。」


呆れるような顔をしながらも、死ぬなよと頭を撫でられた。




「やだよ…ヴィオラさんを斬るなんて…!」

「目を閉じるのよレベッカ!何も見なくていい!これは悪夢!何があっても全部忘れて!!」

「うぅ…、っ!」

「……フッフッフッ、何だ、麦わらじゃなくてお前か。」


ヴィオラを斬るために操られたレベッカは嫌だと泣きながら拒否するが無意味なこと。さあそろそろと思いこちらへ歩かせていると突如レベッカが気を失った。
倒れたレベッカの背後にだれかが立っており、土埃の中から見えたのは朱色。
その正体に気づいたドフラミンゴによって、縛り上げられていたヴィオラが解放される。


『何だ、とは失礼じゃない?』

「そんなズタボロの体を見りゃそう言いたくなるだろ。」


確かに、トラファルガーにもドフラミンゴにも言われた通り俺の体はズタボロである。
何せ重力によって潰されたことで骨折したし糸で斬られたし抉られたし貫かれたし、脂汗止まらないし刀を持つ手は震えるし息は途切れ途切れだし、なんか、ちょっと寒いし。
こうして言葉にすると一周回って自分の状況にいっそ笑えてくる。
こんな奴に勝つことなんて余裕だろうと、それでも立ち向かってくる様子を見ればそりゃ笑いたくもなるものだ。


『人は見た目によらないって言うじゃん。』

「フッフッフッ!使い方間違ってるだろ!」


苦しい言葉だと我ながら思った。
しかし勝つなら、負けないつもりなら言葉からだ、言霊の力を信じてるわけではないが、言わずには勝てまい。姿勢を、態度を、一挙一動が相手に与えるプレッシャーになりうるのだから。
言い訳無用。あと2分程度踏ん張れなきゃ、いや、身内に仇なすこの男を壊さなきゃダメだ。
でなきゃ何のために殺人鬼を名乗っているのか、その意義すら危うくなってしまう。


関節が軋む

(それでも、)




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