01




けつが痛い。奇妙な船旅?によりとある島に着いた。どうやらここが一連の騒動の最後の場所なのだろう。
ごつごつした岩肌しか見えない島にゼットの手下たちが各所に配備されている。


『じゃあ行くか。』

「どこに。」

『愚問だよ。ゼットのとこ行けば彼らも来るだろう?』

「ってことは、何だ。あいつらのとこ戻っちまうのか?」

『最初からそのつもりだよ。』

「迷ってたんじゃねえのか?」

『迷ってたのは俺の在り方。天秤はどちらかにいずれ傾く。その時は、そのとき。まぁそもそも天秤があること自体がおかしいんだけど。』

「おかしいことかよ。誰だって迷いの一つや二つ…、」

『おかしいことだよ。絶対で全てで覆ることのないことで曲げようのないことだった。身内に仇なす者は誰であろうと殺す。それが俺、零崎嘉識だった。それができなくなるようじゃ、もう俺も死ぬのかもね。』


もしかしたら俺にも寿命が来ているのかもしれないなんて思いながら、2人で襲いかかるネオ海軍を倒していきながら山頂を目指す。なんとなく人識を思い出していた。
両親が零崎故の生まれながらの殺人鬼であった彼には、限界があったことを俺が死ぬ数日前にぽつりと聞かされていた。
彼の口から、自分には限界があると、殺人鬼として死の宣告を受けてしまったといつものニヒルな笑みを浮かべながら告白してきた彼が思い出された。どんな思いだったのだろう。意外と彼は淡白だから零崎であることにこだわりはなかったのかもしれない。
俺はこの世界でたった一人の零崎。愛すべき家賊はいないけど、零崎でいられる。
家賊と違って身内というのは、情の上に成り立っているからこれからその情がどうなるか分からないけど、だけど、それでもこの世界で見つけてしまった。
俺のような悪には到底似合わない、目が眩むほどの眩しさと焦がれるほどの熱さを感じさせる身内に言わなきゃいけないことがたくさんあるから、ここで止まるわけにはいかないのだ。


『死にたいやつも死にたくないやつもかかってきなよ。全部まとめてぶっ壊してやるから―――、零崎を、開戦する。』


だから今はいつか来る死まで存分に生を謳歌しよう。

煮えたぎるような火山とマグマ。
その山頂付近にはピンク色の岩が無数に並べられていた。これがクザンの説明にあったダイナガンかと聞こうと思ったらいつのまにか姿が見えない。見届けるためにと言っていた彼はベストポジションにでも向かったのか。
歩み続けた先には、先日見た男の姿。傍らには麦わら帽子と酒瓶。


「何をしに来たァ。」

『待ち人がいる。』

「ハッ、あれだけのことをされたというのに…、お前はバカだ!!憎いだろう!!」

『憎いよ。でも、それでも身内なんだ。身内には超甘いんだよ俺。許すなんてことは絶対できないけど、身内に仇なすことはもっとできない。』

「甘い!!甘過ぎる!!そうか、貴様が海賊になるというのなら、自己中心的なその考えごと俺が殺してやる!!」

『っ!!』


咄嗟に弓を構えて矢を放ったが、右腕で弾かれてしまう。覇気を纏ってもこれか。あっという間に距離を詰められ、9才の体はあっという間に吹き飛ばされてしまった。刀を岩壁に突き刺し体勢を整えたときには、落とした弓が彼の足元に。


「ならば!こいつはここへ置いていけ!仇と供に行くと言うのなら!こいつはもうお前とは行くべきではない!!」


その言葉のあとに衝撃が弓に放たれて無惨な姿になってしまった様子が目に映り、あまりにも突然のショックに釘付けになってしまうが、すぐに我に帰った。


『っよくも!!』

「お前の兄がそれを納得するのか!!その憎しみを押さえることを承諾するのか!!」

『違う!!兄さんがどうこう関係ない!!俺はもう破綻している!!零崎として破綻してしまった、崩れたものはもう戻れない!!そのうち俺は、零崎嘉識は死ぬ!!だから、俺はもう死ぬまでどうなるか分からないけど、だけど自分を殺すことになっても身内と供に行くと決めた!!』

「―――どうしようもねぇ、バカが!」


憎しみを背負って彼らと供に行くことがどんなに難しいか、想像以上になるだろう。それでも悪くないと言えるような、家賊のような、自分の在り方を貫いたかっこいい殺人鬼になりたいだけである。
慣れない叫びに切らした息を落ち着かせて尋ねた。


『―――これでも俺を乗せてくれる?未来の海賊王。』

「当たり前だ!!」


海賊なら自由にやりたいようにやると。己のやりたいことを貫くと。振り向いた先には麦わら帽子と誇りを取り返しにきた青年が一人立っていた。


混在モラトリアム

(殺されるのは、誰)






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