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〇月×日
私たちの子供が、ラムが遂に生まれたわ。
嬉しい、生まれてきてくれてありがとう。
私たちも精一杯愛情を注ぎたい、可愛い可愛いラム。
でも、嬉しいことには悪いことも付き物なのね。
島で一番お金持ちだけど優しくて慕われていたソカル様がお亡くなりになってしまったわ、島民皆で悲しんだ。
そして、遂に、息子のソヴェルがまだ十五歳だけど、当主になってしまったの、恐れていたことが…。
私たちは決めた、ラムを絶対護り抜いて闘うことを。
〇月□日
ソヴェルはひどい。
ソカル様とは大違いだ。
ソカル様の葬式を早々に淡々と行い、そして町を歩けばそこに居合わせた島民は必ず礼をして見送れと言った。
横暴にも程がある。
僕は仕事場に来た苦情でそれを知ったわけだが、一度警告をすべきだと上司に進言してみた。
改善されればいいのだが。
×月◇日
嗚呼何ということなの!!
海軍を買収だなんて、金で何でも出来ると思っているのかしら!
海軍も海軍でどうして買収されたの、本部に連絡すればいいじゃないとパパに言ってみたらいい上司は既に解雇されて金に目が眩むようなポンコツの上司しかもういないですって!?
警告も聞かないだなんて…、着々とソヴェルの独裁が進められているわ。
×月〇日
今日は海軍を辞めてきた、あんなとこ、もう居たくない。
そして僕は自治団体を作った、町の人たちも協力してくれた、よかった。
この島は山賊が多いから海軍が働きをなさなければ荒れに荒れきってしまう。
大事な町とラムとママを護るために、僕は闘うよ。
◇月×日
久しぶりにこの日記を書くわ、六年ぶりかしら。
今日はラムがお兄ちゃんになったのよ、そう、嘉識が生まれてきたわ。
今パパが密かに倭の国ブームだからちょっと意識して、本を買ってきて勉強してみたの。
本を皆で読んで一生懸命考えて決めた名前を、授けます。
元気に育ってね、生まれてきてくれてありがとう。
そしてとうとう、一月後、私たち自治団体が直々にソヴェルと話し合う機会を得たわ、やっとよ。
皆で頑張りましょうね!
∇月×日
許せない!
今日がやっとソヴェルと話し合うだった。
だが話し合いと呼べるようなものではなかった、ひどい。
いくらで満足するか、だなんて第一声、殴り飛ばそうかと思ったよ。
あれじゃ単なる交渉じゃないか。
話し合いが駄目なら、もう行動に移すしかないだろう。
また、最近山賊が町に来る回数が多いのもソヴェル何か関係しているのではないだろうか。
だが、僕たちは負けるつもりはない。
□月〇日
とうとう、私たちのアジトがバレてしまったわ。
今日海軍が押し掛けてきたのよ。
皆無事逃げ切れていればいいのだけれど…。
嗚呼神様、子供たちだけでも護ってあげて。
私たちの大切な大切な子供たちを。
死を語る生
(本のカバーには血痕がついていて、)(何かを物語っているのは明確だった。)
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