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日がすっかり暮れ、広がる爆発、火山が噴火する島。


「ゴムゴムのォ!ライフル!!!!」


逃げゆく人々とは裏腹にルフィたちとゼットのいる砂丘に行き、それぞれが戦闘を始める。
一方ウソップと俺はその様子をじっと見ていた。無茶言ってきたのはいいけどあの状況に入って聞きたいことは聞けなさそうだし待ってることに。


「なぁ、お前は行かなくて大丈夫なのか?」

『俺の身体かかかってるし大丈夫じゃないけど、ゼットには聞かなきゃいけないことがあるから。』

「時間がねぇんだぞ!」

『俺を置いて行ってもいいから。聞かなくてもいいんだろうけど、聞かなかったら後悔しそう。』

「…ったく、わかったよ。」


そして何度目かの拳のぶつかり合いという時にとうとう火山が噴火してしまい、刻一刻とタイムリミットが迫っている。
どうやらゼットも覇気を使って戦うらしい、いやこの体でほんとに勝てるか。 そんな時間との勝負の中、海牢石の弾丸がルフィの右肩を貫いたようだ。
勝負ありか、さて行くか。


「身体が動くまい、その弾丸は海牢石でできている。珍しいだろ?海牢石の加工は容易ではないからな。この新世界にたむろしている強者どもにはこんなもの当たるはずがないが。自分の能力を過信し、油断する能力者にはよく効く。」


ルフィの麦わら帽子をおもむろにつかむゼット。


「この、麦わらも古くなったな。この俺の手で大海賊時代とともに葬ってやろう。」


駆け寄るがルフィはとどめをさされてしまったようで、ウソップもいつの間にか埋まってしまった。


『…で、生きてまた会う時が来たら教えてやろう、だっけ?その時が来たけど。』

「はっ、そうだったなぁ。」

『何を教えてくれんの。』

「2つだ、お前に教えてやろう。1つ、お前の父親について。お前の父親ライルは元海軍。これは元から知っていた。なぜなら俺の元部下だったからな。弓矢の腕はお前とは比べ物にならんぐらい上等だった。」

『へぇ、だからこれに見覚えがあると。』

「ああそうだ、そして2つ目は、…フッ、気の毒なことだ。」


憐れんでいるのかよく分からない顔をしてちらりとグロッキーなルフィに視線を向け、そしてサングラス越しに強い視線をこちらに向けた。
なぜか、胸の内が騒いで嫌な予感がする。


「嘉識だったな、お前のことを調べたが、自分の兄を殺した海賊を知りたくないのか?」

『――――なにを、』

「お前の兄が殺された日に島へ訪れていた海賊と聞いたんだろ。その日は海賊は1つしか訪れていなかったそうだ。」

『…で?』

「その海賊を、俺は知っている。」

『――――――、待って、』

「お前も、知っている。」

『―――言うな、やめろ、黙れ、』

「あの日訪れていた唯一の海賊は、」

『っ、やめろ!!!!!!』




「――――――――麦わら帽子の海賊旗を、掲げていたそうだ。」




『っ、』


脳内にじりじりと映る、兄の最期の笑顔、燃える屋敷、血に染まる剣と地面、死体の山―――、


「お前が探している海賊は、殺したいと願っている海賊は!憎むべき対象は!まさに目の前にいるんだよ!!!」


―――走り抜けた森の蒸し暑さ、流れる汗、体中を駆け巡った血と破裂しそうな鼓動―――、


「何が護るだ!!海賊は奪う!!そして誰かが犠牲になる!!!だから壊す!!!」


―――悔しさ、憎しみ、恨み、怒り、破壊衝動が思い出され、


『(―――殺してしまう)』


ぶわ、と自分の殺気が広がる感覚。血が、沸騰しているようにぐらつく。


『はっ、たりを、』

「これを見てもはったりだと思うか!」

『それは、』

「こいつはお前の島の海軍基地の電電虫が撮影した写真だ。日付は島が滅んだ日。写るは麦わら帽子の海賊旗!」

『――――っ!!』


汗がにじむ。体が震える。血の気が引く。
今まで兄の敵を討ちたいと思っていた、それが零崎嘉識で、身内の敵は俺の敵。
だけど、揺らぐ、やっと、彼らを見て、流れでいっしょにいたとしても、それでもまぁいいかと思えていたのに、


『…くそ、』


さすがに殺人鬼でも、きつい事実だ。笑えない、全くもって笑えない。
写真を置き去りにして去り行くゼットの背中を見つめながら、誰もいなくなる砂丘で、じりじりと胸を焦がす殺気を感じた。


心が潰れた音

(夕陽の朱が炎の色に重なった)




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