03
前世で初めて人を殺したのは、自分の生みの親だったやつを殺したのは、9歳の時だった。とても寒い冬のことで、何で殺したかは覚えてない、どんな顔だったかも覚えてない。
ただ、自分が血の赤に染まってひどく安心したこと、兄になった双識に会ったときに血が体中を駆け巡ったこと、脳に電撃が走った衝撃のことをを今でも覚えている。俺だけじゃないって強く思った。
――ぱちり、と目が覚めた。
夢の血の赤や最後に映った炎の赤とは違う、夕日の赤、朱。 ぼんやりと外から聞こえてくる彼らの声、これからの話をBGMにあの男の言葉を思い出す。
『生きてまた会う時が来たら教えてやろう…、か。』
「あーっ!起きてるー!」
『えっ誰、』
「おーい!起きたぞー!!」
いきなり縁側に少年が立っていたと思ったらバタバタという音とともに遠ざかり、今度は複数の足音が近づいてきた。
「おおーっ!嘉識!起きたんだな!具合は大丈夫か?痛いとこはないか?」
『ありがとチョッパー。』
「お前無茶しやがって!マジで死んだのかと思ったんだぞ!」
『ね、俺もやっちまったと思った。』
「ただでさえ小せえ身長がさらに小さくなったな。」
『うるさいよまゆげ』
「あんだと!?」
『で、話しぼんやりとしか聞いてなかったけど、情報集めに行くの?』
「そうよ!あんたの服も燃えたりだぼだぼになっちゃったりしたから買うわよ!」
『だよねー、パーカーでさえこんなだぼだぼしてるしね。船は?』
「フランキーが直してくれるわ。海列車に乗っていくのよ。」
『海列車?』
海に線路が引いてある。汽笛が聞こえる。列車が、走ってくる。
現実離れした乗り物に驚くことしかできない。
『すご…』
「なんだ、乗ったことねぇのか。」
『え、何、みんな乗ったことあるの?初めて見た。』
「…」
『なに…その目…!』
「いや、反応がまんまガキでおもしれぇなと。」
『まりもくん、戻ったら、覚えとけ』
「おう、楽しみにしてるぜ。」
『そう言いながら俵みたいに担がない!!チョッパーと同じ扱い!』
「暴れるな、海に落とすぞ。」
『まりも…あーっごめんなさい落とさないで!!』
「あんたたち騒がしいわよ!!」
海列車から眺める景色はいつもの船から見る景色とは違ってあっという間に変わりゆく。 列車に乗ることなんて久しい、今生初だ、初めて記念。はしゃぐチョッパーを眺めていたら目的の島に着いたみたいだ。
小さな小さな俺は1人で市場にいた。
ナミ曰く、ルフィやゾロ、サンジは顔が割れているし喧嘩っ早いから俺が買い出し終わったら荷物運びだそうだ。主に食料で、サンジに渡されたメモをもとに買い物を進めるが、たまにおつかい偉いねっておまけをくれる人がいっぱいいる。
しかしありがたいが微妙な心境だ、俺精神年齢前世と合わせたら単純計算で33歳じゃん、いや17歳から成長してないけど。
そしてこれ買ったらもう終わりだし俺も温泉入りたい、うらやましい。
『って思ってたけど温泉入り終わったとか。』
俺温泉入れなかったと買い物してきたものをゾロやサンジに持たせながらぼやく、服もさりげなくおしゃれになっちゃって。
「あっ、ちゃんと嘉識さんの分もありますよー!」
『ああ…子供服だ…サイズがSMLじゃなくて150だ…着替えてくる。』
「おい、1人で着替えられるか?」
『何でお前ら2人は俺を精神的に子ども扱いしてるわけ?異議あり。』
「危なっかしいんだよお前。」
『大丈夫だから。』
ごそごそと物陰に隠れて服を着替えるが、サスペンダーにハーフパンツってどこの身体が縮んでしまった名探偵? 状況は確かにいっしょだけど。
『着替えた。』
「ヨホホホ!!どうです、似合っているでしょう私!」
「お前かよ!」
『あっブルックが?似合う似合う。』
「でしょう!嘉識さんもお似合いですよー!」
そんな会話を交わしていたら遠くから騒がしい声や音が聞こえた、どうやら情報収集チームのご帰還らしい。 海軍も引き連れちゃっているあたり無茶したのかなと思う。
「おいルフィ!ゼットの居所聞くんだからな、何人か残しておけよ!」
『(珍しく無言だ、聞こえてんのか)』
「ルフィ!頼む!」
「お願いね!」
バトンタッチしたルフィは何人もの向かってくる海軍の前に立ちはだかり、そして、覇気1つで彼らを圧倒した。
そして意識のある海軍の偉そうな人にゼットの居場所を聞くと、この島にいるとな。
赤く染まる空
(赤は嫌いだ)(炎はもっと嫌いだ)
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