01
「―――っ!―――きろ!」
『………、ぅ、』
「嘉識!おい起きろ!」
『っげほ、…、ゾロ?』
「着いたみてえだぞ。」
『…ここが、魚人島。』
目の前には色とりどりの建物、様々な魚人や人魚、とにかくカラフルで明るい街が広がっていた。
そしてここにはゾロしかいないとなると、他のメンバーとははぐれてしまったらしい。
入り江の影に隠れて海水でひたひたの服をぎゅっと搾る。 口の中もとにかくしょっぱい。
さてどうするかと考えたが、まずそもそもいっしょにいるのがゾロっていう時点で合流に時間がかかる気がしてならない。
『どうする?まず合流しないとって思うんだけど。』
「ったく、あいつら世話の焼ける…。」
『(あんたが言うのか)』
とりあえず人間がいそうなところに行くぞとくいっと親指で方向を指し示しながら尤もなことを言う。だがどう見てもその方向には酒屋しか見えない。何だこのアル中。
『いやそっちよりあっちじゃ…って聞いて。行くの早い。』
こっちの抗議などお構い無しにもう酒屋に入ってる。
………とりあえず第一に絶対条件で彼とはぐれないようにしようと思う。彼の後を追いかけて酒屋に向かった。なけなしのお金で俺も水がほしい。
水を購入して2人でぶらぶらしていると、なぜか上空からくじらに乗ったおひげもじゃもじゃのおじさんが来てぜひ乗ってお礼をさせてほしいと声をかけられた。
何事かとお互い目配せをしたが別に行く宛もないのでお誘いにのった。
「でけえ城だ。」
『立派なもので。』
「竜宮城じゃもん!」
クジラに乗った変なもじゃもじゃのおじさんに連れられてきたのは竜宮城。
何故こうなったのかと言うと、クラーケンから助けたサメが実は王女のとても大事なペットだったからそのお礼だそうな。
だがしかし、やっぱあまりにも単純すぎて他の理由があるのではないかと勘繰ってしまう、ゾロもそんな感じである。
まあすぐその懸念は当たったけど。
『で、何で牢獄行きなのかな。』
「さあな。」
さあなとは。呑気すぎる。 連れてこられたまではよかったのだが案内された先は牢獄でしたという落ちだ。
将来俺たちがこの島を滅ぼすとか誰かが予言したらしいし何か悪事をやらかしたのもあるとか。
お礼もしたいけど危機が迫るとなればそうもしていられないとのこと。
牢屋の向こうの壁には俺たちの武器が立て掛けてあって、そこまで危機感も厳重さもないらしい。
さあどうするかと思い改めてゾロの方を振り返ったらいつの間にか寝ていた。
ペンがあったらまたでこに肉と文字を書いてあげたいがあいにくないものはない。
俺も暇だし今ここで行動したところでって感じもあるのであぐらをかいてるゾロの太ももを枕にして寝ることにしよう。 残念ながら枕は筋肉むきむきで硬いが。
そしてなにやら騒がしい、そんな様相を感じて目を開けたら、すでに起きていたゾロと目があった。
『うっ、わ、ちかい…!』
「……」
『ちょっ、いひゃい、』
顔を覗きこまれていたと思いきやそのまましばらく見つめあった後むにっとほっぺを掴まれる。
何でそんな気難しい顔をしているのかとほっぺを引っ張られながら思っていたがそれどころじゃない。ほっぺから手を離してもらい尋ねる。
『何の騒ぎ?』
「さあ…、だが、愉しそうな祭囃しだ。」
悪人面で笑みを浮かべたゾロは、牢に手をかけ、思いっきり力を込めるとなんと格子が歪んで俺が通れそうな隙間が出来上がったではないか。
刀取ってこいと言われ、大人しく脱獄。
3本の刀を渡し、自分の刀を取って牢に戻ると、彼は刀を抜いていた。
ちょっと離れてろと言われ従うと、彼は刀を構え、近道だと呟く。
「―――――三刀流、黒蝿大竜巻!!」
やってやろうじゃねえか
(とことん暴れてやんよ)
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