ごめんなさいと、ねがいごと


屯所に着いた総悟は真っ先に部屋に戻り、服を着替えた。皮膚に付着した返り血は拭って、みおに恐怖を与えないようにと考えたのだ。

そして、みおの目隠しをはずす。

「ん、まぶし…、━━っ、総悟ぉ…!」
「すぐそうやって泣きやすねェ、みおは…。」

なんだかんだ言いつつ、総悟はみおを抱きしめて背を撫でてやるのだ。その表情には先ほどの怒りも焦燥もない。

「ごめ、なさっ…!す、すいやせん、で…したっ!」

うえぇぇん、と声を上げて泣くみお。止めどなく溢れる涙を乱暴に服の袖で拭った。

「分かったなら、もう稽古したいなんて言うんじゃありやせんぜ。みおには無理でさァ。」
「っ、けど!みおは、おけいこ、したい…でさァ…。」

尻すぼみになっていく語尾。攫われたことを思い出しているのだろうか。

「はぁ…。なんでそんなに稽古したいんですかィ?」
「だって、だって、みおもおけいこして、"たいし"になれたら、総悟と、ずーっといっしょにいられやす!」

しゃくりをあげながら、みおは浴衣の袖で涙をごしごしと拭っている。

まさか、自分と一緒にいたいという理由だけで隊士になりたいというのか。総悟は面食らった。そして同時に、そんな甘い覚悟では出来る訳がないと一喝したい気分になった。しかしそれが、みおの考えた精いっぱいなのだろう。なぜなら現在、みおと総悟が一緒にいないのはみおのお昼寝タイム、すなわち総悟の稽古中だけであるからだ。その時間もそばにいられれば、1日中一緒にいることになるわけで。

銀時に言わせれば、総悟はみおに対して相当な独占欲を持っているわけだが、この状況においては逆のことが言えるだろう。みおの神楽に対する嫉妬も、隊士への憧れも、全てが総悟と共にありたいと願う、ただそれだけの感情から生まれたものなのだ。

総悟はみおの両頬をむにぃとつまんだ。

「分かりやした。ずっと一緒にいられりゃあ良いんですねィ?」
「総悟と、ずっと…。あぃっ!」
「じゃあ、稽古に連れて行ってやりやす。」

みおはぱあっと顔を輝かせた。涙が少しずつ止んでいく。

「ただし、竹刀も剣も握らないこと。隊士にもなろうとしないこと。これが条件でさァ。」
「…?そしたら、総悟といっしょじゃないでさァ。」

きょとん、と首を傾げたみおを抱き上げた。首に顔をうずめるようにして強く、強く抱きしめる。

「何にもしなくても、何にも出来なくても隣に置いてやるっつってんでさァ。ありがたく思いやがれィ。」

だから、頼むから。もう二度と危ないマネはしないでくれ。危ないことに関わろうとしないでくれ。

総悟はそんな思いを込めた。みおが背中を掴む手に、徐々に力がこもっていく。総悟の思いを知ってか知らずか、みおは何度も何度も、深く頷いた。

━━━━そして数日後。

隊士たちに稽古をつける総悟の横で、プラスチック製のバットを振り回しながら総悟の真似をするみおの姿があった。

「甘ったれんな、もっと気合い入れやがれィ。」
「やがれー!うぉぉ、すーぱーげ○きだまぁぁぁ!」


Fin.




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