まよだんご


「総悟っ!これあげやーす!」
「へいへいありがとうごぜェやす。」
「いえいえー!め…めたもる…ちがう、めしゃーがれ!」

召し上がれ、か。言いかけたメタモルフォーゼはぷ○きゅあの影響だろう。純粋すぎる目が総悟を捉えて離さない。

こっ、断れねェ…!しかもあまりにも見られ過ぎて地面に落とすことも出来ない。無邪気は恐ろしい。前にも後にも退けなくなった総悟は、ごくりと唾を飲んだ。手のひらの茶色い球体はじりじりと眼前に迫る。チョコだ、これはチョコだ。必死に言い聞かせてゆっくりと口を開けた。覚悟を…、決めろ…。

「あっ、まよー!!」

突如みおは叫び、走って行った。何がなんだか分からないが、とにかく助かった。今のうちに土に還そう。

「まよも、どーぞ!でさァ!」
「あぁ…?なんでどろだんごなんだよ。」
「どろちがう!ちょこ!ばれんてーん!」

ん!んー!とどろだんごを差し出すが、土方は受け取ろうともしない。

「おい総悟…。みおどうにかしろよ…。」
「えー、土方さんはみおからの感謝の気持ちを受け取らないんですかィ。そりゃあひでェや。」
「なに…!?」

土方の目がカッと開いた。多少の不機嫌は混じっているだろうが、何よりも戸惑いが多かった。どろだんごをどうしろと。

(総悟、お前どうやったんだ?)
(食べやした。)
(食べ…!?)

「まよ、みおからのばれんてぃん、いらない?」
「みお、バレンティンはホームランバッターでさァ。お前が所有してるモンじゃありやせんぜ。」

みおと総悟が話している間も、土方は冷や汗が止まらない。逃げられない。

「あ、いや、いらないっつーか…。」
「あっ!そうでさァ!まよは、まよがすきだから、まよかけたらたべれるね!」

みおのトマトにも、マヨかけたもんね!と、みおは続けた。よりいっそう吹き出す冷や汗。にやりと笑う総悟。

「しつれーしやす!」

ごそごそとみおは土方のポケットを探った。

「ちょっ、おま、やめろ!」
「おっ、ありやしたー!」

なぜマヨネーズを携帯しているのか甚だ疑問だが、みおに見つかったのが運の尽き。フタを開ける音が軽快にこだました。そして。

むにゅにゅぅぅ、とどろだんごがマヨネーズに埋まっていく。おぇ、と言いながらもみおはしっかりとマヨネーズをかけた。自分が手で持っている部分を残して薄黄色に染まったそれを見て頷く。

「んー、いよっし!まよ、いたっきやーす!」
「んごぉっ!?!?」

驚きの光景に口を開いていたのがいけなかった。どろだんご、もとい、まよだんごは一気に土方の口の中にねじ込まれた。

「ぐ、うっ…。」
「ね、ね、どーですかィ?」

口の中に広がる芳醇なマヨネーズの風味。これぞ至福のひとときと一時は頬も緩んだ。しかしマヨネーズがとろけてしまうと、むき出しになった砂が口内を刺激する。噛めない。噛もうと思えない。顎を動かそうもんなら、ジャリ、と不快な感覚がした。これは、飲んではいけない…!

チラリ、とみおを見た。感想を楽しみにしている顔だ。次に総悟を見た。

「土方さぁん、うめーですかィ?ま、しっかり味わってくだせェ。」

黒い笑みを浮かべている。まさにほくそ笑むという言葉がピッタリだ。…あいつ、本当に食べたのか?

「みお、他には誰に渡すんですかィ?」
「んーとね、じみーと、ごりっ…どうさん!」
「ザキと近藤さんですかィ。じゃあ行きやしょう。」
「あいっ!」

そう言って総悟とみおは去って行った。た、たすかった…。

みおの姿が見えなくなると、土方はトイレダッシュした。その先はご想像にお任せしたい。




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