ちょ…こ…?


「おい、おめーチョコどうするつもりでさァ。」

まさか「作る」とは言わないだろうな。真選組に料理が出来る隊士はまずいない。やれと言われたらさすがに食べ物を作ることはできるだろう。誰ぞの姉御よりはきっとうまく出来るはずだが、繊細なお菓子作りは苦手かもしれない。

「んぉ?みおがつくりまさァ!」
「言っとくが、俺は手伝ってやりやせんぜ?」
「ひとりで出来やっしゅ!」

そう言うと、部屋を飛び出して廊下を走り始めた。さすがに幼い子がひとりで調理は危険だし、何をしでかすか分からない。手伝わないとは言ったが、内心みおがどうするのか気になってはいた。総悟も部屋を出て、少女が駆けて行った方向を見た。


「ありやしたー!ちょこー!」


そっと遠くから見ていようと総悟は決め込んでいたが、さすがに黙ってはいられない状況になった。なぜかと言うと、

「うぉぉ、いっぱいありまさァ!」

…シャベルを持って地面を掘り出したからだ。

「それだけはぜってーやめろ…!」

壁際から覗いていた総悟は呟いた。しかしいきいきと地面を掘る少女をとめるのも無粋なことだ。みおは素直に土をチョコだと思って掘り続けるのだろう。色しか似ていない。食べ物か食べ物じゃないかの概念はないのだろうか。…それを自分が食べろと言われたらどうするのか。…うわ、やってみてェ。

結局見守ることにして、総悟はみおの近くの縁側に腰掛けた。そんな総悟に気づかず、みおは掘り続ける。

これ、もらってどーすりゃいいんだ…。食べる…は無理だ。『原材料:土』はさすがに厳しい。じゃあやっぱり食べるフリが無難か…。受け取って、食べるフリをしてそっと土に還すのが妥当だろう。よし、そうしよう。

「ふー、これだけあればおっけー、でさァ!そしたらー、そしたらー、」

掘り返した柔らかい土を小さな手のひらいっぱいに乗せて、ぎゅっと握った。何度か向きを変えて握っていけば、それはだんだん球体になっていく。いわゆる『どろだんご』だ。

「そうくると思いやした…。」

ある意味予想通りである。幼児が何かを作る時、たいていこうなる。あとは絵に描くか、紙を使った工作か…。

「んー、こんなもんですかねィ…?」

みおがすっくと立ち上がった。両手にはひとつずつどろだんごが乗っている。持ちきれなかったのだろうか、足元にも数個転がっている。短時間のうちに作る量にしては多い。大量生産型か…。一体何人が餌食になるのやら…。




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