それはさておき、


「おっ、じみー!」
「…この子意味わかって言ってんのかな?」

総悟に着いて行くと、山崎はあっさり見つかった。そして満面の笑みで例のブツを差し出す。

「ばーれーんーたーーーーんっ!」
「ぐふぉぉっ!?もがっ…。」

そして、それを山崎の口に突っ込んだ。突然の衝撃に、山崎の魂は浮遊して体を離れる。そしてぱたり、と倒れてしまった。

「よし!つぎィ!」
「オメーは何がしたくてこんなことやってんでさァ…。」

山崎がその後どうなったかは割愛させて頂く。達成感を伴った表情でみおはまた歩き出した。







「ごんどーさぁぁぁぁぁん!」
「ん?おぉ、みおちゃんか。どうしたんだい?」

近藤は突進してきたみおを軽々と受け止めた。さすが、腕っぷしは人一倍なだけある。土方を負傷させた「必殺・土方殺し」も近藤の前には可愛いものだ。

ちなみに「ごりら」と呼ぶのは土方にやめさせられた。一応局長である彼が「ごりら」だと隊士たちに示しがつかないだろうとのことでだ。しかしみおはなかなか慣れず、「ごりら」×「近藤」で「ごんどー」と呼んでいる。

「あんね、これね、ばれーたーん!」
「ばれーたーん?それを俺にくれるのか?」

首を傾げながらも、近藤はどろだんごを受け取った。バレンタインのことだと総悟が伝えると、「あぁ!」と納得したように微笑んだ。チョコの代わりのどろだんごを、どう処理するかが見物である。

「ありがとう、みおちゃん。しかしこれじゃあ食べられないな…。そうだ、おこづかいをあげるから、何か買ってきてくれるかい?」

…お、大人の対応だ……っ!

近藤らしからぬ冷静な対応に、総悟は素直に感服した。見習いたい対応第一位である。

「んー?たべなくていいでさァ。どろだんごは、みおもたべられやせん。」

え。

「みお、お前コレ食べれないって知ってたんですかィ。」
「もちろん!みおは土たべるほどバカじゃありやせんっ!」

ぱっぱっ、と手の土を払うみお。総悟を見てにかっと笑うと、「ちょっと待っててくだせェ!」と言って走り去った。

土食うほどバカじゃねぇって…。どろだんごの処理方法考えてた俺らがバカみてぇじゃねーですかィ。

近藤は「小さい子は大人になるのが早いなぁ」なんて呑気に言っている。しかしさすがに、みおの言葉は総悟の予測できる範囲を超えていた。

「おまたせしやしたー!」

次は何が起こるのかと考えていたら、みおが戻ってきた。右手は土方を連れ、左手は山崎を連れている。ふたりともほぼ瀕死の状態だったが。

「すわってくだせェ!」

こっちこっち、と一同は一列に並ばされた。とにかく言われるがままに座る。

「えーと、いつもみおとあそんでくれて、ありがとうごぜェやす!あと、おもちゃもいっぱい、ありがとー!」

4人の正面で、腰に手を当ててみおは言った。まぶしい笑顔は今日もきらきらと輝いている。

「みーんな、だいすきでさァ!」

それから、それから、と言いながら、今度は正座した。きちんと浴衣の裾を押さえて、左足を半歩下げてから座る、きちんとした座り方で。隊士たちが普段座るのを見ていたのだろうか。自分はこんなことまで教えていない、と総悟は目を見開いた。

「これからも、よろしくおねがいしやす。」

指を揃えて畳につけ、肘を折りたたむと同時にしっかりと頭を下げる。たっぷり3秒数えると、みおは顔を上げた。

「できやした!」

ふいに大人びて見えたみおも、そう言って笑えばいつもの子どもらしさを取り戻した。

「みおちゃん…!勲、感動しちゃった!」
「上手に出来たね。えらいえらい!」

近藤と、どうにか回復した山崎は素直にみおを褒めた。土方も「おう」と素っ気なく返事をしつつ表情を和らげている。

「総悟も!ほめてー!」

みおは正座を崩して総悟に飛び乗った。

なんだこいつ、子犬みてェ…。

鼻をつまんでやると、ふにゅっと間抜けな声を上げた。

「よくできやした。…けどあんまり大人を困らせるんじゃねェや。どろだんごの処理なんて難問、解けるわけがありやせん。」

総悟の言葉に、土方も賛同した。

「そうだぞ全く…。マヨだんごなんか食わせやがって…。」
「だって、まよがみおに、"マヨかけときゃなんでも食える"って言ったから、どろだんごもたべれるとおもったの!」
「なるほど…。土方さんの自業自得ですねィ。」

睨みを聞かせる土方から逃げるように、みおは総悟の背中に隠れる。土方が困るのが面白い総悟は、大げさにみおを擁護するように言った。

「くっ…悪かったな…。」
「かまいやせんぜー!」
「調子に乗んな。みお、トマトは食べねえといけやせんぜ。」

もう二度とマヨだんごを食べたくない土方に謝られ、みおはいい気分になったが、総悟の言葉で一気に沈んだ。

「まぁ、所作がきちんと出来たことだけは褒めてやりまさァ。」
「あぃっ!これからも、よろしくおねがいしやーす!」

ふわり、とみおは笑う。

いつかちゃんとした食べ物が渡されることを願いながら、バレンタインは幕を閉じた。


Fin.




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