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  • お前、彼氏いないだろ? 2/2

「褒め言葉として受け取っておきます」

ダメだ、言葉を真に受けてしまったら相手の思うツボだ。
仕事していれば嫌いなやつだっている、苦手な人だっている。
だけどそれをいちいち気にしてたら同じ職場で何年も働いていられない。
割り切らなきゃ、そう自分に言い聞かせた。

「褒めてはいないけど」

くー!!が、我慢だ、我慢。
思わず右手の拳に力が入る。
あぁ、このまま殴ってしまえたら楽なのにな…とついつい目が遠くなってしまう。

「とりあえず、彼氏はいないって事でオッケー?」

「はいはい、そうですね」

もう相手をするのも疲れて、会社の玄関を出て営業車の助手席のドアの前に立ち
キーをあけてくれるのを待っていると、突然視界が暗くなった。
ふと後ろを振り返ると、驚くほど間近に彼が立っていた。
身長があたしよりも20センチ程高いから、目の前に立たれるだけで影が出来た。

「ちょ、何ですか?ドア開けて下さい」

あまりの至近距離に思わず心臓がどくんと跳ね上がったが、それを隠すように怒ったふりをして彼ににらみつけた。

すると突然腰に手を回し、あたしを抱き寄せる。
あんまりスムーズに事が進むから、驚くとか怒るとかよりも、もう放心状態だった。
そして、一気に、彼の唇があたしの唇に触れた。

長い時間唇を押し付けられて、目を見開いて驚いた。

「んーーーーー!!!」

そして今度は抵抗してみたものの、抱えられてびくともしないあたしの体は結局彼の思うようにされるだけだった。
でも、それでも最後の抵抗で唇は開かなかった。
開いて舌なんて入れられたらもうどうしたらいいのか分からなくなる。

長い事その抵抗をしていたせいか、彼は諦めたように唇を離し、ゆっくりとあたしの体を下に降ろした。
ようやく地面に足をつける事が出来てほっとしたが、とにかくもう何が何だか分からず文句を言いたい気持ちを抑えられなかった。

「何すんですか!!」

「何って、キス」

「キ、そんなのは分かってます!!そうじゃなくて、どういうつもりで!!」

すると、彼はこれでもかというくらい意地悪そうな顔であたしに笑いかけた。
生涯、こんな表情で笑いかけられるのは初めてだと思うくらい、黒い、笑顔だった。



「宣戦布告」




にやっと笑った彼は、悪魔のように見えた。


あたしは彼から逃げられるんだろうか。


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