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  • 俺を惚れさせてみな 1/2

あのキス以来、あたしは仕事中ですら油断出来ない状態になってしまった。
いわば、いつでも戦闘態勢。
あたしは仕事をしに会社に来ているはずなのに、何ゆえこんなにも神経を尖らせて緊張しなければいけないのか、
それは言うまでもなく如月のせいだった。

今日も車で二人きり、営業先へと向かう。
運転は上手い、ブレーキを踏んでも体が揺れたりしない紳士な運転をする。
性格も紳士なら良かったのに…ふと思ってしまう。
何で大して話した事もない女にキスなんて出来るんだ、こいつは。

ふつふつと怒りがこみあげてくると、それを隣で察知したのか声をかけてきた。

「運転中には悪さしないから安心したら?」

運転中には、が気になったが、まぁ何もないならいいだろう、と思い緊張が解けた。
…何でこんな目に。やっぱりあたしはくじ運が悪い。
でも、他の女と組んでもこいつはこういう事をしたり、言ったりするんだろうか。
ふと気になった。
聞くか聞かないか、それでしばらく無言で考え込んでしまった。
「あたしにだけこんな事するの?」なんてまるで自惚れだ。
それは悔しい、ものすごーく悔しい。
だって「は?何勘違いしてんの?」とか普通に言いそうだもん。
でも、好奇心の方が勝ってしまった。

「他の社員と組んでも、キ、キスとかする人なんですか?」

思わずどもってしまった。
「そーだよ」とか「コミュニケーションの1つだよ」とか言いそうだな、なんて考えていると
全く違った答えが返ってきて、正直戸惑ってしまった。

「は?するわけないじゃん」

何でそんな不思議そうに返事するんですか。
不思議なのはあたしの方なんですけど?

「じゃ、何でキスなんか…」
「…何でだと思う?」

質問に質問で返され、ふと彼の顔を見ると、またあの黒い笑顔が見えた。
見、見間違いじゃない。「宣戦布告」と言った時の彼の笑顔と一緒だった。
まるで同級生に意地悪をする小学生男子と一緒じゃないか。
何でこんな笑顔を目の当たりにしなければいけないんだろう。
これじゃ、大人と子供だ。

「質問で返さないで下さい」
「何でだと思う?」
「だから、質問してるのはこっちです」
「あ、ついた」



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