戦闘態勢

 発令、発令。隊員は所定の位置に着き速やかに攻撃態勢、又は防御態勢に移行せよ。これは訓練ではない! 現実(Christmas)である!

 お出ましじゃあ、お出ましじゃあ! いらっしゃった、いらっしゃった! あれらは何ぞ、あれらは敵である。

 駅から近い可愛らしいカフェの店員より応援要請、右も左も、上も下も敵に囲まれているとの事。如何しますか。
 それは助けに行かねばならぬ。よし、大通りの隊員参、応援へ向かってくれたまえ!
 隊長! 隊員参から仕事で暫く動けないとの返答が。
 ……仕方あるまい。ならば五丁目の隊員伍に任せよう。
 隊員伍、応答しません。
 あいつ、もしや――いや、今は助けられる者を助けるのだ。他の隊員と至急連絡取れ。
 全隊員、仕事、若しくは応答なし!
 なん、だと。もしやこれは奴の策略か、奴も動き出したと言うのか、奴が!

 あの、赤い、お爺さんが、やってくる――Merry Christmas.
 斯くして彼等(隊員)は緑と赤の光に屈した。

 駅から近い可愛らしいカフェの店員は思う。クリスマスケーキのチョコレートプレートに何を書くかと言う質問に、名前でもハッピークリスマスでもなく「君の瞳に乾杯」何ぞ答える人間やそれに頬を赤らめながらもほっくほくの笑顔で見詰める人間には勝てぬのだと。


Dec 24th
男と男、その生き様

 昨日未明、狭く雑多な印象を押し付ける室内で俺は戦っていた。孤軍奮闘、仲間もおらず、徹底的アウェーでの、死闘。
 元来、拳で友情を深める、であるとか、夕焼けを背景に闘えば心が通じあえるであるとか、痛みで屈服させよとか、そのような思考は南アフリカに分布している灰色の肉食獣にでも喰わせて置けば良いと常々考えている俺でも、戦わなければならないときは存在する。男子たるもの不正を黙って享受する事はならない。喩え相討ちの未来が待っていようと、心のファイティングポーズは貫くのだ。

 さて、眼前にふんぞり返るは頭皮の後ろ付近のみにひょろひょろとした白い髪を集め固めた初老の男。ナウでヤングな風でも装っているのだろうか、林檎印の機械を指で叩いている。対して、黒髪を自由気ままに跳ねさせ完成した宝と云う名の紙媒体データを洒落た角度で押し付け、基差し出しているのがこの私、水沼である。俯瞰してみれば就職活動で使える綺麗なお辞儀――と角張ったタイトルの新書でも出せそうな腰の角度と曲げ過ぎず揺るかな線を描く伸ばした腕――で以て課題を恭しく提出する学生と、些か頭の固い先生が其処にいるだろう。
 当方の主張は以下の通り。
 一つ、課題は郵送で以て期日中に提出された。提出方法に関しての言及はなかった。又、同様な提出方法を取った小論文が認められている前例がある。二つ、確かに郵送された。これは確実である。三つ、しかしながら提出期限とされる時間、詰まり二時間前、に教授の手元には届かなかった。それはお困りだろうとこうして郵送物の代わりに私が直にお渡しに参りました。受け取って下さい。嗚呼、誤解するなかれ。私は単位が望みなのではありません。赤いポストと教授の心配しているのです。このままでは赤いポストと教授の信頼関係はどんがらがっしゃん崩れてしまう。それは何としても避けねばならない! 桜の散る朝も、青色が対抗してくる昼も、紅葉が出来ない夕も、雪を頭に積もらせ腹に紙を詰め込まれながらそれでも立ち続けなくてはならぬ夜も、彼は必死に生きている! 彼の、赤いポスト君の働きに応える為ならば、私は、俺は……!

 ――この話はフィクションであり、実在する組織や個人とは関係ありません。

「現実はおれが食べたぞ!」


Dec 12th
のそりのそり

 女神の笑みに俺は癒やされ、女神の言葉に俺は勇気を貰う。仮令、レクチャー用のウェブサイトの中であろうと、電気信号に変換されたものであろうと。嗚呼、認めよう。マネージャー分が不足している。
 然しそれももう直ぐ解消されるだろう!


Dec 1st
→話し掛ける

 へんじがない。ただのしかばねのようだ。

 いや、まだ屍にはならん。
 諸君、お早う! 先に述べる挨拶があると主張する者もいるだろう。しかしながらこの様をお茶を濁す事も時には必要である。そして漸う口に出来るのだ。
 四カ月と一週間位前に年が明けました、お目出度い事です、と。その間の沢山の出会いと別れにすまなかった、と。特に恋路に悩みながらも過ぎ行く真面目な少年や、柔らかな言葉を下さった女性、そしてこの右往左往する文に目を向けてくれた方々へ、不義を詫びむさ苦しい部屋では収まり切れぬ感謝を。――ありがとう。健勝だろうか? 俺は

「キミ、ジョーブツでもするのかい?」

 ……俺は元気です。ジョンソン君はもっと元気です。


Apr 8th
大敵

 真に、現実に、魔物というものがあるとするならば、それは己の油断である。

 課題提出が間に合わない。


Dec 13th
訓辞

 私は絶望に倒れはしない。例え千の山が立ち塞がろうと、万の海里が待ち受けていようと、決して、諦めない。それは、男児として生まれてきた私が最初に持った、乙女に対する為の決意である。故に私は私の言葉を裏切らない。――例え、女神に会えずとも。

 一昨日の話である。俺は普段と変わらず、途中幾多の戦場を颯爽と潜り抜け、職場へ向かった。朝礼にて、頼もしき諸先輩の御協力で以前俺が得た情報の裏付けを頂いた。矢張り、間違っていなかった。女神、基マネージャーは本日この日この場所営業中にいらっしゃる。俺は一切の心情をも洩らさず冷静且つ丁寧に先輩方への御礼を申し上げ、職務を果たすべく、粛々と開店の準備をした。多少、顔が緩む事はあったかも知れないが、あの清々しい晴天を見上げれば誰しも笑みを浮かべざるを得なかっただろう。
 それからの時間は早送りに早送りを重ねた映像のようなものだった。良い立地にあるカフェというのは存外重労働である。簡潔に述べるとすれば、枯渇したケーキの材料収集自己新記録三分を叩き出し、お冷やを運びケーキを運び、睡眠を貪って、再び人や物を運び料理を作り、気付いた頃には辺りは暗くなっていた。
 お疲れ様ーとレジを閉める先輩。飲みに行かない? と語る仲間。もしかして、閉店時間? と首を傾げる俺。そうだよ、と笑う仲間。マネージャーは? と聞く。え、結構前に来てたよね、と仲間。続けて、
 そう言えば水沼君いなかったっけ?

 諸君、この時の俺の気持ちが分かるだろうか?

 どうやら女神様はわざわざ俺がいないときを狙い撃ちで御到来されたらしい。俺が休憩室でマネージャーの夢にだらしのない表情で惰眠を取っていたときに。

 泣きはせん。まだ泣きはしない! だが、些かしょっぱいものが食べたい。


Dec 11th
女神よ

 今は無心に、ただただ眠りたい。


Dec 9th
拍手返信

通りすがりの空気殿

追記
Dec 8th
 


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