シルヴァラント編




今日イチのロイドの驚愕の声が上がった。

「い、1億ガルド!?」

クラトスの大人の微笑みにノックアウトされて心の中でにやけてからのコレだ。


旅券の発行にぼったくりの値段を叩き出して来た目の前の爺さんにだんだん自分の頬が引き攣っていくのが分かった。
いつも周りに偏屈爺……さんと呼ばれてるが、更に磨きが掛かってるように思える。
というか同性に対しての扱いが酷い変態ジジイだ。


『……爺さん、ついにボケただろ。
前は1500ガルドっつってたろ』

「いつのことだかのう?わしゃ知らんわい」

『こんのクソじじい……』

「ま、まあソウマ抑えて……」


剣の柄を握るがジーニアスに止められた。
……ちっ、老害余に憚るといった感じのこのジジイをついに息の根を止められると思ったのに。
そもそもこのスケベ爺のせいで足止めされるというのが癪に触るんだ、腕の一本くらい切り落としても構わないと思う。


「(ソウマが怖い……)」

『とりあえず話聞いてくれよ』

「うるさい!わしは男が大っ嫌いなんじゃ!」

「これでは旅業に来ている人達までここを通れなくなってしまうわね……」

「おお!綺麗な姉ちゃんだのー。
おまえさんが旅業をしているのなら、パルマコスタの旅行代理店に行くといい。格安で旅業に行かせてもらえるぞ」

「ずるい!代理店と結託して儲けてるな!」

「ふん、そんなの知るか!」

『爺さん、いい加減にしてくれ。話が進まなくなる……』

「それくらいにしておいて……それよりも聖書でしょう?」


コレットがいつの間にか色々とガラクタが置かれてるスペースで物色していてその中で一段と目立つ場所に分厚い本が置かれていた。
価値が分かる人間だと踏んだのか、それともコレットが美少女だと分かったからか(多分九割がた後者だろう)目をキラキラと輝かさせてコレットに近付いた。


「あれ?大きな教典」

「おー!そこのお嬢さん達はお目が高いのー!それはマナの神子さまから買わせていただいた大変珍しい教典で、導師スピリチュアの伝説がしるされているんじゃよ!
もう手に入らないと諦めていたが、まさか神子さまが譲ってくださるとは、ありがたやー」

『……それってもしかして』

「それ譲ってくれよ!いや、見せてくれるだけでいい!」

「いやじゃ!どうしてお前達に見せなくてはいけないんだ!」

「いいじゃないか!コレットはマナのみ――、」

リフィルがマナの神子と言いかけたジーニアスの頭を叩いた。
なかなか痛そうである。
偽物扱いされるからそれ以上は言うなということだ。

ここで神子だと告げたとて、あの教典を見せてもらえる以外何か有益になるとも思えない。


「マナのみ……?」

「マナの神子さまの持ち物を見たいという信仰心の現れですわ。こちらのコレットは、天使言語を修めた立派な信者なのです」

「小さい頃から習ってましたー」

「ふむ……どうするかのー」


妥協するかどうかの決め手に欠けるらしく悩んでるジジイ、コットンに懐からある物を出した。
封筒をコソリと見るコットンに自分は明らかに冷めた表情で見守る。


「なんじゃこれは……おおっ!?」

「え、何だ?」

『……ロイド君は見ない方が良いよ』


爺さんに丸めてた封筒を渡し、最初訝しげだった爺さんが声を上げながら鼻の下を伸ばして興奮してるのを見てロイドが自分も覗こうとしているが肩を掴んで止めた。
純粋な君には目の毒だ。
クラトスが目を細めた。袖の下の交渉だと思われたようである。


「……まさか、賄賂か?」

『そんなお金無いですよ俺。とある伝手から入手した絵です』

「絵?歴史的価値のあるものかしら?」

『普通の人物画です。
……人間の生まれたままの姿の』

「ぶっ!?それってまさか……」


そのまさかである。
因みに描いたのは自分だ。適当な古そうな紙を見繕ってデッサンをするようにささっと描いて色を付けただけである。
悩ましげな表情をしたギリシャ神話の美の女神なんかを適当なモデルとして見えそうで見えない髪の毛で隠された個人的には陰影具合が気に入ったこの世界に一点しかない絵である。

芸は身を助くとはこのことか(多分違うと思うけど)。
というか、こういうところ本当男って単純だよな。
自分も今男だけれど、しかし形だけなのか何も思うことも無く無心で描いていた。
なんだかコットンが情けない気もする。

リフィルは元から話を理解してないロイドを放っておいてコレットとジーニアスの耳を塞いでる。
当の本人は何で塞がれたのかは理解してないようなので効果はあるのだろう。
クラトスは少し視線を逸らして気まずい表情をしていた。
ちなみにジーニアスは聞こえてしまったらしく複雑そうな、恥ずかしさを隠すような表情だった。
なんだ、意外とむっつり?


『あの爺さん、旅業の時男だけの団体とか虫の居所が悪いとき、たいていあんな態度なもんで話があまりにもスムーズに進なかった時の秘策だよ。
……此処に来る前に家から持って来て良かった』

「……ソウマって苦労してるんだね」


ジーニアスから同情の視線が注がれた。12歳にまで心配される自分。
なにこの肩身の狭い感じ。
絵?もちろんベッドの下にずっと隠し続けてた。
そうした方が何かと都合が良かったのだ。
例えば思春期の青年だと思わせてあ、コイツも女が好きなんだなと思わせるような。
……ニヤニヤとしながらこちらを見られるし、理不尽にイラつくし、全くの不本意だが。


あれから交渉して結局は取り返すまでには至らなかったが(既にあの詐欺集団に金を支払ってしまっている為)、
スピリチュアの像とやらを持ってくれば見せてもらえることになった。
たしか、救いの小屋に置いてある物だったはず。
コレットが頼めば貰える確率は高くなりそうだ。

お金については後でパルマコスタの総督に払ってもらおう。
知らずに偽物へ渡してしまったのが悪い。

ニールの気まずそうな顔が浮かぶ……あの人、気の良い人だから……。
ドア総督?総督はどうでもいいや。
煽動するようなことした結果ココアのようなことが起きるなら案山子と同じだ。
というか、今回の騒動について総督周囲が出ることは一度もなかったのに異議を唱えたい。
自分も外に出ようと出口に向かった時無愛想な声で脚を止めた。


「してソウマよ、あやつは見つかったのか?」

『……爺さん、あの人の知り合いだったのかよ。世間は狭いなまったく』

「ふん、ディザイアン関係で無理やり借りを作らされただけじゃ!お前の旅券が安かったのもあやつのお陰じゃからな」

『はいはい……まだ見つからないよ。まだ探してない場所もあるしいつかは見つかるでしょ』

「そうか、じゃあさっさと行け。ワシは忙しいんじゃ」

『いつもガラクタ見てるだけの癖に……』


一方的に切られた会話に何故聞いてきたのか、訳を問おうとしたら勢いよくドアが開いた。
少し焦燥気味な彼は口をぱくぱくしている。
焦りすぎて声が出てこないようだ。
それにも気付かず、乱暴に扉を開けて軋んだ音に文句を言った。


『何だよロイド君、ドア壊すとまた何言われるか……』

「大変だソウマ!パルマコスタにまたディザイアンが!!」




『…………は?』


ロイド君の言葉に眉を潜めた。



* * *



ロイドの言葉に疑問を思った。
自分達がいない間にまた襲いに来たというのか?わざわざ?
性懲りも無く?コットンと同じで暇で仕方ないのか?
小屋から出て峠に留まっている人たちか聞いたという話を聞くことにした。


「ソウマ、落ち着いて聞いてちょうだい。
ショコラが攫われたわ、場所は人間牧場よ」

『ショコラが……?さっきの件といい、今回は不可解なことが多い……。
……その件、俺もついていっていいですか?良いですよね。というか、ついて行きます』

「もう聞いてないよねそれ……」


当たり前だろう、ディザイアンに……というかあのドレッド頭についに鉄槌を下せる時が来たんだ。
どんな罵詈雑言を浴びせてやろうか。
落ち着け?落ち着いてるよ。
静かに怒ってる。ハーフエルフ?人間?豚野郎?知らない。知るもんか。関係ない。
差別されてるからって何をしても良いってわけじゃない。
してはいけない境界線はどちらにもあるんだ。
それをあっちが勝手に越えた、それを黙って見てるだけなわけないだろう。


「先生、ソウマも一緒に行かせてやってくれ!」

「……私は混乱させたくは無いけれど……決定権はコレットよ」

「私は良いと思います。ショコラさんを早く助けなくちゃだもんね!」

『……ありがとうコレットちゃん。皆も、もうしばらく宜しくお願いします』


斯くして、オサ山道からパルマコスタ人間牧場に一行は向かうことになった。
ショコラは自分にとって、大切な友人なのだ。
右も左もわからない、他人とあまり話せなかった俺にパルマコスタの好きな所を教えてくれた。
あの町に不信感を持っていてもまだ多少好きでいられるのは優しくしてくれた人たちがいるからだ。
これから待ち受けるイベントに打ちのめされるとも知らずに大切な友人を助けるため、俺はロイド一行についていった。



* * *



しばらく歩いて頭も少し冷えた頃、何故またディザイアンがパルマコスタに来てショコラを攫ったのか、総督府へ進んでいる間考えていた。

カカオの時は処刑を下そうとしたのにショコラは攫って、しかも攫われた先が直ぐそばの人間牧場だと判明している。

いや、まぁ奴らが拠点としているのはそこくらいだし場所がわかっているからといって、人間が徒党を組んだとしても敵地の中だしエクスフィアも持っていないなら
木っ端微塵にされるのがオチだ。

この世界じゃ赤ん坊の頃から刷り込まれてるほどにディザイアンの本拠地には絶対に近寄るなと言い聞かせられている。
実際何も知らなくて聞いたら物凄い形相で怒鳴られるほどだ。
それほどに人々にとって恐怖の対象であり、それ故に立ち向かわんとする総督という存在はパルマコスタの住民にとって絶対的ヒーローのような存在なのだ。

そして、ディザイアンにとって神子一行は邪魔な存在だとされる。
神子にとって排すべきはディザイアン。

昔から伝わる伝説によれば、神子が世界再生を成し遂げれば地上のディザイアンという存在はいなくなるというのがある。
しかし八百年も成し遂げられていないので本当かどうかは定かではない、というか真実を識ってる身なので別段可笑しさもない。

今回の事を知らせたのは総督と繋がりのある人間で、自分たちがコットンの家にいる間にパルマコスタからわざわざ来た総督の近衛兵に言われたのだ。
総督は神子一行にショコラを取り返して欲しいと頼んだ。

ココアの処刑は沈黙を貫いていたのにショコラになってから急に、だ。
再生の神子の効果か?

知らせに来た人物に義勇軍はどうしたと聞いたらまだ帰って来ていないという。
演習に行った筈の義勇軍がまだ帰って来ない。
ディザイアンに襲われてるという報告もない。
鳩でも使って報せもせずに神子一行に行かせるとはこれ如何に、だ。

自分の知る副隊長の彼女なら、知り合いの娘が襲われた事実について一つでも耳に入ったら無理にでも助けに行こうとするはずだ。
自分が人探ししている最中に義勇兵の内部に何か変化でもあったのだろうか。

もんもんと考えてるといつの間にかクラトスが隣にいた。
ロイド達は自分達より少し先を歩いている。どうやら考え過ぎていたようだ。


「神妙な顔をしているな」

『……再生の旅とはいえ、神子に頼んだ理由を考えてて。
それに義勇軍がまだ帰ってこない理由も』

「パルマコスタには軍を持っていると聞いていたが」

『……みんな、身寄りのない人達ばかりだけれどそれを感じさせないくらい明るくて……熱心で、街の為に尽くすことが出来る凄い人たちなんです』

「ソウマも義勇軍に属していたのか?」

『いいえ、……けれどそこで皆と一緒に剣を習いました。まぁ今まで剣なんて持ったことないからついていくのに必死で……』


毎日パルマコスタを200周、200周である。その後組み手と素振りはそれぞれ50。
普通だと最初から各200くらいは皆と同じ指導せられてただろうに、へなちょこ過ぎて結果的に組み手25素振り25はすごく優しくしてくれたんだと思う……。
まぁすぐに100へ200へとされたけれど。

まあしかし、義勇軍というからして中学の運動部以上にキツかった。
見た目ひょろひょろでへなちょこなこの姿で戦う練習なんて出来るか凄い不安だったし、実際男の体で動くのなんてはじめてだから何度も転けたしあまりに体力なさ過ぎてグシュグシュに泣けてくるくらいで最初は半分以下の数でやってた。

女のままだったら力なさ過ぎて旅なんてしたらそこらで死んで骨になってただろうな……。

そんなキツイ修業のお陰でやっと半人前程度の力が出せて旅業の手伝いが出来るようになったんだけれど。
投擲に関しては元からズレは生じるが、昔から雪玉を的に当てられるほどの能力はあったから小休憩してる時に石や投げナイフなど頑張って練習していた。

今まで腕力が無かったから鋭く投げることは出来なかったけれど、今の姿なら更に遠くへ投擲することも可能だ。
……まぁ、結局エクスフィアが無ければ縄を切る、弱い魔物や動物をけん制したりにしか使えないのだけれど。

っと、それよりも義勇軍についてか。
指揮系統としてはたしか……。


『その義勇軍を纏める最高司令官であるのがドア総督で基本的には総督の指示を仰いで動いてて、街に何かあったら何かしらの連絡手段で直ぐに戻ってこれる……筈なんですけど』

「鳩も伝令も飛ばされてないのか」

『そうだと思います、何か怪しい……。
世界再生の旅において神子の命は下手すりゃ他の人間より大切なもの、なのに危険な場所へ連れてくかな……って考えてるんですけど、どう思いますか?』

「……何れにせよ、決定権は神子にあるから私は行くなとも言えん。
況してや娘一人の命がかかっているならば寧ろ反発するだろう」


クラトスさんの答えにそうだよな……と目の前のロイド君たちを見る。
実際にショコラが攫われたと言われて直ぐにでも助けたいと真っ先に思ったが、俯瞰してみるとおかしなところもある。

まあショコラ本人も強気な性格もありディザイアンに露骨に煽ることをあの時言ってるから少し、自業自得な部分もあるんだよな……。
助けたら周りのことを考えろと叱ろう……自分が言えたことではないが、あの子は女の子なんだ。
考えたくもないが本当に死だけでは済まされないことだって、世の中にはある。

とりあえず、人間牧場に行けば分かるだろう。
二度目だ。前回と同じセキュリティと配置なら行けるだろう。
こちらに気づかない鈍い兵士に新人風を吹かせながらしつこく聞いて覚えたから、何事も無ければ。
深い森の中を注意深く歩く。
人の気配がしたと思ったら本来いる必要がない人物がそこにいた。


『!
ニールさん……?』

「君はたしかソウマ……!君も同行していたのか」


見覚えのある顔にお互い驚いた。
人間牧場はすぐそこだ。何故こんな危険な場所に総督の側近であるはずのニールさん一人で……。
そこでふと気付いた。今まで考えていたことがまるでパズルのピースがピタリと当てはまるように繋がってきた。

見つからないようにあたりの気配を探りつつ一行ら茂みへと隠れニールの話を聞いた。
ニールの予想外の台詞にロイドとジーニアスとコレットは酷く驚いていた。
逆を言えば自分を含む大人組は予測していた事態になってしまったということだ。


「どうかショコラのことは放っておいて神子様達はこのまま旅をお続けください」

「やっぱり……」

「やっぱり……てどういう意味だよ!」

「これは罠よロイド。神子を陥れる為のね」

『ニールさん、やはり総督なんですね?義勇軍のことも、ショコラのことも全て』


ニールを少し睨みながら静かに問い詰める。
黙りこんで俯いたままのニールに更に問い詰めようとみかかるように前へ出ようとすると
傭兵に制された。


『(……ニールさんに言っても仕方ない。
義勇軍の人たちが何もないと良いんだけれど……)
ニールさん!義勇軍の人たちは……』

「ああ、無事だよ。流石に義勇軍のほとんどを潰してしまっては怪しまれるからって今回は外に演習行かせることにしてたんだ」

『そうですか、良かった……のかな……』


小隊のいくつかは殺されてしまっているのかもしれない。
小隊だろうが知り合いはいる。男として生きることを嫌がっていたりだとか、記憶喪失だということを揶揄ってくる人間もいた。けれどだからって死んでいい理由でもなかろう。
いつか懲らしめるつもりではいたが。
ニールのその含みのある言葉に暗い影を落とす。


「ディザイアンが組織だった軍隊を持つ街を大人しく放置していることも疑問だったが……」

「ええ、その通りだわ。反乱の目を潰さないのは、それが有害ではないから……。
ソウマには悪いけれど軍としての力が無いから放置されているのか、あるいは有益存在なのか……」

『それは……』

たしかに……リーダーが行方不明になった挙句、



ドア総督は神子に対して罠を仕掛けたと明言したニールに、
ジーニアスの避難めいた声を上げる。
ドア総督は昔はこんなことをする人では無かったと言う。
街のことを考えて、たとえ自分の妻を失ったとしてもディザイアンに屈することは無かったと。
けれどどこかでドア総督は間違えたのだ。


「とにかくこのまま牧場に放置しては、神子様の身が危険です。
ショコラのことは私に任せて、皆さまはどうか先にお進みください。
一刻も早く世界を再生するために」

「……ふむ。たしかに世界再生のためには、ここを捨て置くべきだろうな」

『……』

「ダメです!このまま見過ごすなんて出来ない!」

「そうだよ。もしこのままにしておいたら、パルマコスタもイセリアみたいに滅ぼされちゃうかもしれない!」

「そう、それはその通りよ。でも敢えて私はクラトスの意見に賛成したいわね。
街が滅ぶのが嫌なら、今後不用意にディザイアンとか関わらないことだわ」

「そんなのダメだよ。世界を再生することと目の前の困っている人を助けることは、そんなに相反することなの?
私はそう思わない」

「コレットが言うなら私たちに止める権利は無くてよ。
この旅の決定権を持つのは神子であるコレットなのですから」

「俺ははなからそのつもりさ。言ったろ、牧場ごと潰してやるって、なぁソウマ」

『う、うん……』


コレットの言い分も理解できるのだが、リフィルの敢えての苦言も理解できてしまうから
一瞬、心に迷いができてしまった。

今、義勇軍がいないということはパルマコスタの守りは何一つ無いことになる。
もとから無力な町人数人ではディザイアンを倒すことは敵わない。
罠と分かった今、律儀に人間牧場へ突撃するか、ドア総督を脅して何をしていたか吐かすかのどちらからにするか……ここで決めることとなった。

自分的にはショコラを助けたいのでさっさと牧場に攻め入りたい気持ちは強いが、ロイドは総督が怪しいと考えていたようだ。
しかしコレットもロイドと俺の意見に沿うと言ってくれた。
その上でロイドはこちらに提案を出した。


「ソウマ……まだショコラは無事だと思うんだ、だから総督府へ行かないか?」

『それは分からないだろ?ディザイアンに人の心があるとは思えないけど』

「そうだけどさ、すぐにどうこうって訳でもないと思う。きっとこの機会を逃せばドアはパルマコスタから逃げちまうんじゃないか」

『……こちらが仕掛けない限り平気か…。
……分かった、まずは総督に真実を話してもらおう』


大丈夫だと思いたいのだが……友人の心配をしているとコレットが優しく早く迎えに行ってあげようねと励ましてくれた。
その言葉がとても励みになる。

そして自分達が市民を騙し裏切ってきた総督の元へと向かった。
数年もの間騙し続けてきたのだ、裏ではよほど肥えているに違いない。
リフィルはドア総督にお怒りのようでジーニアスが言うには姉の“せっかん”はとても怖いらしい。
それだけは絶対受けたくない。


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