親友に誘惑されてらぶらぶセックス

 時刻は一時を回っていた。
 終電も無くなって俺の家に泊まることが確定した辰郎は、さっきからずっと、持ってきたジンをロックで飲み続けていた。酒に強い辰郎だが、さすがにもう酩酊状態だった。虚な目と赤い頬が、それを物語っていた。

「タツ、そんな呑んで大丈夫? 顔めっちゃ赤いよ」
「だいじょぶだいじょぶ。今日は帰らなくていいしヨユー」

 辰郎は両手でピースを作り、舌を出して戯けた。
 綺麗な顔立ちをしているし、普段は大人しいから女の子によくモテるが、俺の前では黙っていられないのが辰郎だ。高校の頃から、違う大学に進学した今も、それは変わらない。

「蓮も呑んでよ。そんなマジメな顔してないでさ」

 そう言うと、辰郎はグラスの中のジンを口に含み、俺の唇にキスをした。鼻を痺れさせる強いアルコールのあの感覚が、辰郎の柔らかい舌とともに口の中に入り込んでくる。
 辰郎にキスをされるのは、これが初めてではない。辰郎はベロンベロンに酔っ払うと、俺とキスをしたがるのだ。初めの方は嫌だったが、最近ではもうなんとも思わない。誰かと一緒にいるときは、嫌がるフリをするだけだ。
 度数の強い辛口のドライ・ジンが喉を通り過ぎると、辰郎は漸く唇を離した。少し鼻息が荒い。にやけた顔が、憎たらしいのに可愛かった。

「すぐキスする」
「へへ、もっとしたげよか?」

 辰郎は、再びグラスを手に取ろうとした。そのとき、俺はちょっとした悪ふざけを思いついた。
 辰郎の手を阻んでグラスを奪い、ジンを一気に口に入れてから、驚いたようなその唇にキスをする。少し怯んだ口をこじ開け、舌と酒を乱暴に流すと、辰郎の鼻から弱々しい声が漏れた。顎に垂れた透明な液体がフローリングを濡らす。

「いつものお返し」

 俺が言うと、辰郎は困ったように笑いながら俺の体に擦り寄ってきた。熱くなった肌が触れる。もう一度キスをするのかと思ったが、どういうわけか辰郎は俺の股間に手を這わせてきた。

「ちょっとタツ、何してんだよ、やめろって」

 ふざけているのだと思って笑ってそう言ったが、辰郎の手は止まらなかった。豹のような獰猛な瞳が俺の瞳にぶつかる。それだけでもう、辰郎が興奮しているのが丸わかりだった。

「なんだよ蓮、嫌がってるくせに勃ってきてんじゃん」

 そう言われて、俺は自分が勃起していることに気付いた。

「いや、これはなんていうか、生理現象だよ」
「でも、俺の手で勃起したのは事実だろ」
「そ、そうだけど……」

 なんとなく恥ずかしくなって口籠る。辰郎は俺の気も知らないというようにジャージ越しの俺のチンポを触り続けていた。拒否感と快感が、白い壁にインクをぶち撒けるようにチカチカと点滅する。

「おい、もういいだろ。やめろよタツ」
「勃起してんのにやめていいの?」
「放っておけばおさまるよ」

 そう言ったにも関わらず、辰郎は俺のジャージに手を掛けた。

「おさまるまで待たないでも、俺がヌいてやるよ」
「えっ。ちょっ、ちょっと待てよ」

 俺の制止も聞かずに、辰郎はジャージを下ろした。
 灰色のボクサーパンツが、俺のチンポの形をくっきりと写し出している。先っぽのほうは、すでに我慢汁で軽く汚れていた。

「目瞑っとけよ。女にされてる妄想してたら少しは捗るだろ」

 そう言うと、辰郎は俺のボクサーパンツを下ろした。
 ギンギンに勃起したチンポが、窮屈だったと言わんばかりに跳ねる。黒々とした陰毛で蒸れた、シャワーも浴びていないそれを、辰郎はうっとりとした目で見つめた。

「た、タツって、そっちなの?」
「そっちってどっちよ」
「い、や、だから……、男が好きなの?」

 辰郎は怪訝な顔を浮かべた。

「男だったら誰だっていいわけじゃないよ。蓮だって、女だったら誰だっていいわけでもないだろ」
「えっ、それって……、うっ」

 俺が何かを言いかける前に、辰郎は俺のチンポに唾を垂らし、そのままパックリと咥え込んだ。
 ぬるぬるとして柔らかい、よだれをたっぷりと含ませた舌が俺のチンポを這い回る。目を瞑ると、触覚が研ぎ澄まされていく。さっきまでの拒否感は、快楽でモザイクをかけたみたいに見えなくなっていった。
 辰郎は、フェラチオがものすごく上手かった。頭を動かしながら舌を這わせて、唇で竿を優しく圧迫する、その一連の動作を、殆ど完璧に行なっていた。それは気持ち良かったし、俺を興奮させる手立てにもなったが、どういうわけか、少し苛立ちもした。辰郎は、男だったら誰だっていいわけじゃないと言いながら、俺の知らない間に他の男のチンポをしゃぶって教育されていたわけだ。

「ン、ふぅ……、ん……」

 再び目を開けると、辰郎は俺の意中など気付くこともなく、懸命にチンポに奉仕をし続けていた。鼻から、時折甘い吐息が漏れる。俺の視線に気付くと、長い睫毛を羽ばたかせながら恥ずかしそうに目を伏せた。あの剽軽な辰郎と同一人物とは思えないほどに色っぽい。

「目瞑っててって言ったのに」
「別にどっちでもいいだろ。それとも、うまそうにチンポしゃぶってるエロい顔を俺に見られたくなかったの?」

 辰郎は黙ってしまった。
 だが、頬っぺたを軽く人差し指で突くと、舐めろ、という合図とでも思ったのか、再び俺のチンポを口に含んだ。恍惚とした表情が、俺の太いチンポで醜く歪む。

「俺のチンポおいしい?」

 頬を突きながら尋ねると、辰郎は恥ずかしそうに軽く肯いた。
 どういう気分なのか自分でもよく分からなかったが、俺は丁寧に動く辰郎の栗色の髪を優しく撫ぜてやった。鼻から甘い吐息が漏れる。

「興奮してんの?」
「んん……、んふ……」
「可愛い」

 辰郎は鼻が高く睫毛が長くて、透き通った綺麗な顔をしているが、別段女っぽくはない。176cmの俺よりも背が高いし、筋肉の上に軽く脂肪が乗ったむっちりとした体つきの巨漢だ。
 それなのに、どうしてか可愛いと感じた。お世辞でもなんでもない。チンポに血が廻り過ぎて、思考力が下がっているのかもしれない。でも、理由なんてどうでもいいことだった。

「男のチンポだったらなんでもいいの?」

 妙な嫉妬心で意地の悪い質問をすると、辰郎はチンポから口を離し、切ない瞳で首を横に振った。それが嘘だろうが、夜の帳が降りたこの部屋では真実として映った。

「俺のじゃなきゃやだ?」
「う、うん……」

 今度は、首を縦に降る。こんなごっこ遊びでも、嫉妬心の慰めにはなった。本当は尋ねる前から、辰郎が首肯すると分かっていた。

「あっち行こっか」

 俺は、すぐそばに敷かれていた薄っぺらい布団へと体を動かした。辰郎も、よく懐いた猫のようについてくる。軽く肩を掴むと、布団の上にゴロンと寝転がる。
 辰郎は、これから何をするのか、分かっているような分かっていないような、判断のつかない幼い顔をしていた。俺も、これからどうするのがいいのか、よく分かっていなかった。
 暖房の温度を上げてジャージを脱ぎ、眼鏡を外す。少しぼやけた視界の中で、いちばん近くにいる辰郎の顔だけがはっきりと映った。辰郎も、躊躇いながら服を脱いでいく。
 どう行動するべきなのか正しい順序を考えあぐねて、俺は辰郎の少しむっちりとした裸を抱き締めた。恋愛感情でもなく、純粋なリビドーとも言い難いのに、辰郎のことを、どうしようもなく愛おしく思った。

「れ、蓮……。あ、ああ……、んんん」

 抱き締めたまま、耳をなぞるように舐めると、辰郎はか細い声を上げながら体を震わせた。耳から頬、首筋にかけて、ゆっくりと舌を這わせていく。辰郎は頬を赤らめながら、どこか遠いところを見ていた。

「タツ、こっち向いて」
「む、むり、恥ずかしい」
「向けってば」

 そう言うと、ようやく辰郎は俺の方を見た。
 眉が下がり、唇を震わせて、眦には涙がたまっている。
 辰郎のこんな顔を、俺は初めて見た。

「可愛い」

 さっきと同じ言葉を、さっきよりも強い言い方で呟く。そのまま唇を寄せると、恥ずかしそうに軽いキスをしてくれた。

「……す、するの?」

頬を赤らめたままで、辰郎はそう尋ねた。
さっきまでの積極的な態度は、どこへ行ってしまったんだろうと思う。

「するって、何が?」
「そ、その、あの……」
「わかんないよ。タツはどうしたいの?」

 半分は分からないフリだったが、残りの半分は、本当に純粋な疑問だった。

「し、したい……、蓮とセックスしたい……」

 辰郎は、俺から顔を背けながらそう言った。
 思わず、可愛い、と呟く。
 これで三回目だ。心の中で呟いたものまで合わせると、もう何回目だか分からない。

***

 一旦交互にシャワーを浴びてから、布団に戻り毛布に潜り込んだ。お互い、裸のままで、舌を絡ませる深いキスをする。辰郎は俺の背中を抱き締めて、子犬のような顔で鼻から甘い喘ぎを漏らしていた。
 そのいじらしい姿に、俺は尚更興奮していた。
 散々キスをしてから、顎、喉仏、鎖骨、胸元へと、順に舌を這わせていく。平かで少し筋肉のついた胸の感触が新鮮だった。悪い気分ではない。
 辰郎は、はあはあと息を荒げながら、俺の刈り上げた髪を摩っていた。

「蓮って、いつも女抱く時も、こういうふうにするの?」
「そんなこと知って何になるの?」
「だって……」

 辰郎のその言葉は、何かに接続することなくそのままどこかへ消えていった。
 散々上半身を舐め、手を這わせてから、辰郎のチンポを咥える。辰郎は目を見開いて嫌がっていたが、何度か顔を動かしながら舌で竿を舐めると、拒絶の言葉は喘ぎ声に変わっていった。

「れ、蓮、ちんこ舐めて平気なの?」
「タツのだからかな」

 敢えて興奮させるようなことを言って辰郎を煽る。
 その言葉が本当なのかどうか、俺もよく分からなかった。今までそんな経験はなかったし、チンポを舐めようと思ったこともない。分かるのは、今、辰郎のチンポをしゃぶっていても、拒否感は全くないということだけだった。

「あ、ああ……、んん、ん……」

 辰郎は、控えめな喘ぎ声をあげながら、軽く腰を揺らしていた。少し苦しかったが、辰郎がそれだけ気持ちよくなっているのだと思うと気にならなかった。むしろ、可愛いと思った。

「タツ、もう少し脚開いて」
「え、い、やだ、恥ずかしい……」
「タツのヤラシイとこ全部見たい」

 俺が言うと、辰郎はゆっくりと脚を開いた。恥ずかしさよりも興奮が優ったのだろう。
 ビンビンに勃起したチンポと、その下にダラリと垂れる睾丸、会陰、アナルまで、全てが露わになる。俺はさっき放置した眼鏡をもう一度掛けて、辰郎のそこに顔を近づけた。どれだけ邪魔になっても、1.0の世界で辰郎の反応を見たくなった。

「そっ、そんなとこ、ジロジロ見んなよ……!」

 恥ずかしがる辰郎が可愛かった。
 睾丸をしゃぶり、会陰を散々舐め回してから、舌をアナルへと移す。辰郎は、軽い悲鳴を上げながら脚を閉じようとしたので、脚を掴んで無理矢理顔を突っ込んだ。

「やっ、あ、あ、蓮、そこだめ、やだ、恥ずいっ……」

 嫌がる辰郎に構わず、アナルを舐めしゃぶる。ひくひくと動く茶褐色のその穴は、辰郎の気持ちとは相反してより刺激を求めているように見えた。指で円を描くようになぞっていると、辰郎は体を寝かせたままで自分の鞄を引っ張り、中から白いボトルを出した。

「こ、これ、使って……」

 俺に差し出されたそのボトルは、『ワセリン』と書いてあった。それがアナルプレイに使われるということを、俺は知識として知っていた。勝手な想像ならいくらでもできたが、そんな無粋なことはしなかった。

「なんだよタツ、あんなに恥ずかしがっておいて、本当は弄って欲しかったんじゃん」
「だ、だって……、舐められたら気持ちよくなってきちゃったんだもん……」

 辰郎は恥ずかしそうに、それでも少し可愛こぶった感じでそう言った。
 俺は辰郎の隣に寝転がり、震える唇にキスをした。そのまま、指先にワセリンを垂らして辰郎のアナルに手を伸ばす。辰郎のアナルは、期待していたとでもいうように俺の人差し指をするりと呑み込んだ。

「んんっ……」

 人差し指をくいくいと曲げると、辰郎は震えながら俺の方へ体を寄せた。肌の熱が心地よかった。
 ワセリンの量を増やしながら、徐に指を増やしていく。辰郎は、額にじっとりと汗を滲ませながら、俺の方を虚な目で見つめていた。たまにキスをすると、悦んでいるかのように肉壁が俺の指を締め付けた。

「タツ、アナルにチンポ入れたことある?」

 三本ほど入る頃になって、俺はそう尋ねた。嫉妬と好奇心と期待が入り混じった、濁った質問だった。
 辰郎は口を開きかけたが、何も言わずに首を横に振った。真贋はもはや、どうでもよかった。もし嘘だったとして、そんな嘘をつきたいと思った辰郎のことも俺は愛せるだろう。

「入れて欲しい?」

 耳元で囁くと、辰郎は蕩けていた目を見開いた。

「へ、い、いいの?」
「いいの、じゃなくて、入れて欲しいか訊いてんだよ」

 言いながら、辰郎の太腿にチンポを擦り付ける。辰郎は照れたように軽く脚を閉じ、俺の顔を見つめた。

「い……、入れて……、蓮のチンポ、入れて欲しい……、は、はふ、んんん……」

 想像で興奮したのか、辰郎は鼻息を荒くしながら喘ぎ声まじりにそう言った。
 俺はテレビ台の下から、殆ど使っていなかったコンドームを引っ張り出し、一つをちぎって開けた。軽く扱いてからコンドームを被せる。辰郎はその様子を、不安そうに見つめていた。

「優しくしてあげるよ」

 髪を撫ぜると、辰郎は目を蕩けさせながら俺を見つめた。

「す、好きにして、いいよ……、蓮なら、何されてもいい……」

 そう言われると、余計に優しくしてあげたくなった。それがエゴだということも分かっている。だから俺は、何も言わなかった。
 震える唇にキスをして、辰郎の体に覆い被さる。俺よりも背の高い、男らしい体を、愛おしいと思った。
 ゴムをかぶせたチンポにワセリンを塗りたくり、ひくひくと蠢く辰郎の穴に亀頭を擦り付ける。ふう、と息をついてから徐に腰を送ると、思ったよりも簡単にそれは入り込んでいった。

「ん、ん、ん、いいいぃい……っ」
「痛くない?」
「痛くない、ちゅうして……」

 唇を重ねると、ぬるぬるとした舌が俺の唇を優しくこじ開け、乱暴にも思える仕草で入り込んでいった。幾度となく舌を絡めるキスをしながら、少しずつ腰を寄せる。辰郎の肉壁が、歓迎するかのように俺のチンポをねっとりと包み込む。
 奥まで挿入すると、辰郎は俺の背中に手を回した。赤くなった眦に涙が滲んでいる。

「全部入ったよ」

 そう言って軽いキスをすると、辰郎は照れ臭そうに笑った。
 少し中で馴染ませてから、ゆっくりと腰を動かす。いやらしい水音が耳を犯していく。辰郎の雄膣は、俺のチンポを締め付けて、まるで、もっと欲しい、とねだっているようだった。

「はぁ……、タツん中すげーきもちー……」
「あ、あんん……、んっ、ん゛、あぁん」

 肉壁がぎゅっ、と締まる。

「タツ、今すごい締め付けてきたよ……、コーフンしてんの?かわい……」

 耳元で囁くと、辰郎は腰をくねらせながら俺の肩口に鼻をすり寄せた。もう一度、可愛い、と呟く。体を重ねるだけで分かり合えるなんて幻想だと思うのに、体が勘違いしてしまいそうだった。或は、もう勘違いしているのかもしれない。

「蓮、もっと、激しく動いて……」

 俺の背中に手を回したまま、軽く腰を揺らしてもどかしそうに辰郎が呟く。その姿があまりに色っぽくて、俺は思わずため息をついた。

「えっろ……」
「ん、あ、だって、奥、もっと欲しいの……、う、うう、恥ずい……」
「奥に、何が欲しいって?」
「蓮っ……、蓮が欲しい……!」

 俺の腕の中で、甘い声でねだる辰郎が愛おしくて、もう、俺も我慢できなかった。
 上体を起こして、シーツの上に手を突き、激しく腰を動かす。辰郎の綺麗な顔が快楽に歪む。肌と肌がぶつかる音と、お互いの喘ぎ声だけが部屋に響いた。

「あっ、あ、あ、あ……、ん゛、ん゛、んんっ、きもちいぃっ……!はっ、ああ、ひん゛っ、ん、ん、んんんんっ!」

 辰郎の喘ぎ声が大きくなる。隣人に聞こえるかもしれない、と思ったが、そんなことはもう気にしていられなかった。
 辰郎は自分のチンポをしごきながら、俺の動きに呼応するように腰を振っていた。今まで見たどんなアダルトビデオの女優よりも、辰郎のことをセクシーで魅力的だと感じた。もっと激しい動きをしたらずれてしまいそうなのに、もう眼鏡を外せなかった。どんな顔も見逃したくない。

「ああぁああっ、いい、すごいっ、すごいぃいい……!んんんんぅっ、もっと、もっと奥に欲しい、蓮のチンポで、俺のケツ穴、まんこにして……!」

 喘ぎ声混じりに、辰郎は卑猥な言葉を紡いだ。快楽のせいで、淫乱なことしか考えられなくなっているのかもしれない。多分、俺もそうだ。

「タツのここはもう俺のチンポ入れるためのまんこだろ?」
「やっ、あ、あ、あ、ん゛ん……、はうう」
「こんなにずっぽり咥え込んじゃって……、俺のチンポそんなに美味しい?」

 さっきと同じ質問を、さっきとはまた別の意味で問い掛ける。辰郎の顔が、チーズのように蕩ける。

「うん、蓮のちんぽおいしい、大好き、けつまんこ感じちゃう……」

 あのとき、恥ずかしそうに、声を出さずに首肯していた辰郎は、よだれを垂らしながら、淫乱な顔でそう言った。辰郎の顔を、またひとつ知ってしまった。

「やっば、すっげーエロい。たまんねー……」
「あ、あ、んんっ……」
「ほら、もっと感じさせてやるよ、俺のチンポ大好きなんだろ?」
「好きっ、大好き、あ、あ、あ、ん゛ゃぁっ、んっ、あ、あ、あぁん゛んぅううっ」

 俺の下で乱れる辰郎がたまらなく可愛かった。最早本能で腰を振っていた。多分、辰郎もそうなのだろう。

「はうぅううっ、あ、あ、蓮、だめっ、もう、いっちゃう、いっちゃいそう……」

 泣きそうな声で辰郎は言った。
 もう、チンポはしごいていなかった。その両手は、俺の腰を抱くためだけに使われていた。

「まんこでいっちゃうの?」
「うん……、けつまんこいっちゃいそう、蓮のチンポでいかせて……」

 淫語に塗れた言葉を返す辰郎に、俺はかなり興奮していた。焦らすつもりもないから、腰の動きを激しくする。

「いいよ、イクときのエロい顔もちゃんと見せて」
「うんっ……、あ、あ、いく、いく、あ、あ、あ、いっ、い、い、あ、あ、来る、来る、いくっ、いっくぅっ、ん゛ううぅううんっ!んっ、ん、ん、んん……、んぅうう……」

 辰郎は綺麗な顔を歪めて、半ば叫ぶような声を上げた。
 か細くなっていく余韻の声とともに腰の動きを弱め、震える唇にキスをする。
 そのまま腰を引くと、辰郎は名残惜しそうな顔を浮かべた。

「ゴム変えるだけだよ」
「あ、はふ、ん……」

 汚れたゴムをティッシュに包んで捨てると、辰郎は体を重たそうに起こし、俺の体にすり寄ってきた。こうしてみると、本当にがっしりとしている。俺の痩躯とは、比べるのも恥ずかしい程だった。
 甘えたい辰郎の妨害を受けながらゴムを付け替え、足を伸ばして座る。勃起したチンポが、間抜けに天を仰いでいた。

「こっちおいで。乗っていいよ」
「俺、重いよ」
「大丈夫だよ」
「うう、恥ずかしい……」

 辰郎は俺のチンポを握り、自分のアナルに咥え込ませながらゆっくりと腰を下ろした。だんだんと蕩けていく顔が、いやらしくて可愛かった。

「あ、んん、深いぃい……」
「さっきと違うとこ当たる?」
「当たっちゃう、や、やあ……」

 頬に手を添えて、舌と舌が絡み合うキスをする。辰郎は自ら腰をゆらゆらと揺らしながら、俺の後頭部に手を回した。
 辰郎は俺の後頭部の刈り上げを触るのが好きだ。これは酒に酔っていても、いなくても。

「あ、あ、あ、あ、んん、ん、や、あ、あ……、蓮……、蓮、好き、大好き」

 キスの合間にとろけるような声で辰郎は呟いた。
 俺も辰郎のことが好きだ。好きじゃなければ、一緒に夜じゅう部屋で呑んだり、キスを受け入れたりしない。いくつかの感情の種類に区切られたくはない。

「俺も大好きだよ」

 目を見つめながらそう言うと、辰郎は、照れ臭そうに俺の鼻に自分の鼻を擦り付けてきた。甘えん坊の大型犬のようで可愛い。
 しばらく、そうやってキスをしたり、軽い愛撫をし合いながら浅い挿抜を繰り返していると、物足りなくなってきたのかもどかしいのか、辰郎の腰の動きがだんだんと速くなっていった。腰に手を回すと、くぅん、と鼻で鳴く。本当に犬のようだ。

「蓮、お願い、今度は後ろからして……」
「いいよ」

 辰郎は俺のチンポを抜くと、自分から布団に四つん這いになった。
 でっぷりとした大きい尻を掴み、ヒクヒクと動く卑猥な穴にチンポを擦り付ける。

「蓮、ゴム、外して欲しい……、いい?」
「生でしたいの?」
「うん、蓮の生チンポ欲しい……」

 可愛いおねだりをされたら聞いてあげたくなる。つけていたゴムを捨て、生のままで辰郎のアナルに亀頭をあてがう。さっきまで俺のチンポを咥え込んでいた穴は、容易に異物の侵入を許した。
 奥まで挿入して、軽く馴染ませてから腰を動かす。辰郎の広く逞しい背中が俺の下で震えている、その光景は、俺にもある幼い征服欲を刺激した。

「犯してるみたいだな」

 冗談っぽく、それでも少し語気を強めて言うと、

「俺のケツマン、いっぱい犯して……」

 卑猥な言葉を、甘えた声で辰郎が返した。
 もう、俺も紳士的ではいられなかった。辰郎の腰を掴んで、腰の動きを速める。それこそ、本当に犯しているように、だ。
 
「ん゛ふ、あ、あ、あぁあ゛ん……、 んん、 ん゛ゃぁあぁ」
「犯されてんのに、そんなに可愛い声で喘いじゃうの?」

 ごっこ遊びのような言葉責めに、辰郎は甘い顔で振り返る。

「れ、蓮だから、だもん……」
「やっば……、めっちゃ可愛い」

 口が勝手に動いていた。
 辰郎は、恥ずかしそうに俺の視線から逃げ、枕に顔を埋めた。

「じゃあ、もっと犯してやるよ」

 辰郎のがっしりとした背中に覆い被さり、激しく腰を送る。あの巨漢を組み敷いていると思うとたまらなかった。
 首筋に激しいキスをすると、赤い内出血の跡ができた。後で、辰郎に何と言われようとかまわなかった。辰郎にもしも恋人がいるなら、見られてしまえばいいと思う。それほどに俺は判断力を失っていた。

「あっ、あ、あ、おっ、おっ、おぉっ……、ん゛っ、お゛おおおっ」

 辰郎の喘ぎ声も、だんだんと余裕がなくなってきていた。
 首筋のキスマークを舐めながら、穿つように腰を振る。ぎゅっと雄膣でチンポを締め付けられると、たまらなく気持ち良くて、今すぐにでも射精してしまいそうだった。

「タツ、生チンポで犯されるの気持ちいい?」
「うん、蓮の、蓮の生チンポ気持ちいい……!もっと犯して、めちゃくちゃにして」
「そんなこと言われたら、マジでめちゃくちゃにしたくなっちゃうじゃん」

 そう言うと、俺はさっきよりも激しく腰を揺さぶった。シーツが捲れてぐしゃぐしゃになっていることも、今は全く気にならなかった。

「あ、あ、あ、おおっ、ん゛っ、ん゛っふううっ、あ、あ、あ、いいっ、すごいっ、すごいぃいいっ」
「すっげ……、タツ、めっちゃエロいよ。超興奮する」
「ん゛っ、んや、は、恥ずかしぃっ……!あ、あ、あ、あ、あぁっ、蓮、いきそう……、いく……」
「いいよ、イけよ!おらっ!」

 欲望のままに俺が言うと、肉壁がぎゅっ、と締め付けてきた。興奮しているせいだとは思うが、辰郎は少しMの気もあるのかもしれない。

「ああぁああんっ、いっちゃう、いっちゃう、あ、あ、いく、い、いっ、ん゛っ、んん゛んぅうぅうう゛ん゛んっ!」

 シーツをぎゅっ、と掴んで、甘ったるい声を上げながら辰郎は悶えた。耳を舐めてやると、大きな尻が、ぶるぶるっ、と震える。

「タツ、めっちゃエロかったよ」
「ん、んん……」
「俺も出していい?」
「い、いい、よ……、中にいっぱい出して、蓮のザーメン欲しい……」

 そんないやらしくねだられたら、もう我慢することもできない。辰郎の体に覆いかぶさったまま、激しく腰を揺らす。爆発しそうなほどの射精欲がこみ上げてきて、体がどんどん熱くなってくる。

「はぁ、はぁ、タツ、出すぞ、中に出してやるからな」
「うん、出して、あ、……あ、あっ、あ、あ……」
「ふうっ、うう……、んん……」

 辰郎の中に、ドクドクと俺のザーメンが注がれていく。それだけで俺の単純な頭は、辰郎の体を完全に征服したような気持ちになった。出しきってから腰を引くと、辰郎の穴から白濁した精液がどろりと溢れる。
 辰郎ははぁはぁと荒い息をしながら、俺の方へ振り返った。濡れた唇が艶やかだった。

「いっぱい出てた……」
「タツが可愛くていっぱい出ちゃった」
「ん、んん……」

 どちらからともなく近づき、抱き締め合って、何度も舌を絡めるキスをする。精液を出し、興奮も治ったのに、辰郎を愛おしいと思う気持ちは、いまだに俺の胸を燃やしていた。

***

 人一人しか入れない浴室で交互にシャワーを浴びて、狭い布団の中で体を押し付けあって眠った。
 起きたのは、翌日の十時頃だった。大学は休むことに決めていた。腰が少し痛かった。
 眼鏡をかけて周りを見回すと、辰郎が昨日の服のまま、机の上でパソコンを弄っている姿が目に入った。そういえば、レポートの締切が近いと話していた。

「タツ、おはよ」
「おはよう……」

 少し暗い声で返される。

「どしたのよ、元気ないじゃん」
「えっ、わ。昨日のこと忘れてる?」
「タツがエロくて可愛かったこと?」
「お、覚えてんじゃん」

 忘れたなんて、俺は一言も言っていない。昨日のことを、なかったことにはしたくない。

「お、俺、昨日、酔いすぎて……、ガマンできなくて、その、ご、ごめん……」

 辰郎は、目を逸らしながら呟くようにそう言った。

「何で謝んの。俺としたこと後悔してるわけ?」
「後悔っていうか、だって……」

 俺は何も言わずに辰郎の言葉の続きを待った。

「お、俺……、蓮のこと……」

 視線をパソコンから俺の顔に移して、少し申し訳なさそうな顔で辰郎が口を開いた。

「ずっと、好きだった」
「うん」
「でも、だから、昨日のこと、……正直、後悔してる」
「なんでよ」

 辰郎の言葉を、どう取ったらいいのか分からなかった。
 辰郎は、少なくとも俺よりは、繊細な男だ。だから理解できないこともある。でも、理解できないからと突き放したくはない。それくらい俺は、辰郎のことが好きだった。セックスや、恋愛感情の有無は関係ない。

「だって、俺らさ、……今までのままじゃ、いらんないでしょ」
「いられるよ。俺だってタツのこと好きだもん」
「やめろよ、勘違いするようなこと言うの」
「勘違いなんかじゃないよ」

 俺は辰郎の唇に軽いキスをした。辰郎は、どういうわけか泣きそうな顔で俺を見ていた。

「蓮は、……嫌じゃないの?」
「嫌なわけないだろ。昨日だって、俺もしたかったからしたわけだし」
「これからも好きでいていいの?」
「いいよ。俺も、これからもずっとタツのこと大好きだよ」

 俺はもう一度、辰郎の唇にキスをした。
 辰郎は眦に涙を溜めていた。カーテンの隙間から、午前の陽射しが少し漏れていた。世界に二人だけみたいだと、月並みなことを思った。




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