職場の後輩にアダルトショップで出会った話

※攻めに女のセフレがいる描写があります




 その日は何となくムラムラしていて、それで俺は途中下車してアダルトショップへと向かっていた。セックスフレンドの女の子にメッセージを送りながら、薄暗い店内を眺める。買うものは、その子に使う道具でもよかったし、オナホールや安くなったDVDでもよかった。とにかくこのほんのりとしたムラムラを解消させて欲しかったのだ。
 店の中は狭く、アダルトグッズがひしめき合っていた。ビジネスバッグを胸に抱えて、ゆっくりと店内のものを物色していると、誰かにぶつかった。この暑いのにきっちりとスーツを着た、体格のいい男だった。

「あっ、すみません」
「いえ……、……えっ」
「えっ」

 男の顔には、見覚えがあった。
 少し垂れた伏目がちの目に丸い鼻、黒縁の眼鏡、ふっくらとした頬。そして、俺より頭ひとつ分高い身長。
 袴田功太。
 同じ部署ではないが、同じ職場の人間だった。入社したのは俺よりも少し後で、記憶が正しければ、二十七歳、だったような気がする。大人しい人で、食堂では、いつもひとりで飯を食っていた。

「袴田くん……?」

 袴田くんはその長い腕に、アナル用のバイブの箱を抱えていた。箱には、おっぱいを出した女の子のイラストが描かれている。あの大人しい袴田くんがこんな卑猥なものを買おうとしているなんて、なんだか嘘みたいだった。妙な親近感が湧いてくる。こんなところにいるのだから、恐らく袴田くんは性欲が強いのだ。そしてそれは、俺も同じだった。

「しっ、篠田さん……、あの」
「何?」
「このことは……、御内密にお願いします」

 端からそのつもりだ。誰かに話したところで、何の得にもならない。

「誰にも言わないよ。俺もこういうとこに来てるわけだし、同じ穴の狢じゃない?」
「じゃあ、篠田さんも、その……、アレを?」
「アレってのがどれなのか知らんけど……、俺はセフレに使う道具を物色してただけだよ」
「セフレ、ですか……」

 袴田くんは、少し動揺したように肩を強張らせた。

「袴田くんもそういう感じでしょ?意外とマニアックなんだねえ」
「い、いや、これは……」

 そう呟くと、袴田さんは店の張り紙をわざとらしく睨んだ。
 店内ではお静かに。
 思わず、口元を手で覆う。少し声を上げすぎたかもしれない。

「ちょっとどっか入って話でもする?こういうところで会ったのもさ、何かの縁だからさ」
「そっ、し、篠田さんが、よろしければ」

 そう言うと袴田くんは、アナルバイブを手にレジへと向かった。俺もそれについていく。
 アナルバイブは、丁寧に紙袋に入れられて袴田くんのビジネスバッグへと納められた。真面目で大人しいサラリーマンが、バッグにアダルトグッズを隠し持っているのだと思うと、なんとなく劣情が湧いた。俺は男にも性欲は抱く方だが、どちらかといえば女の方が好きだし、男だとしてもアイドルのような綺麗な男がタイプだ。それなのに、地味でそれほどいい顔でもない袴田くんに欲情するなんて、なんだか変な気分だった。

 近くに個室の居酒屋があったので、俺と袴田くんはそこへ向かった。袴田くんは部署も違うし、性格も趣味も合わないと思っていたから、同じ職場で働いてきて、こんなふうにふたりきりになったことなんて初めてだった。

「で、誰に使う道具なの、あれは?」

 とりあえずビールで乾杯をして、即座に気になっていたことを尋ねる。袴田くんの顔が、少しだけ赤く染まる。軽く逸らした瞳が、色っぽくて戸惑った。

「これは、ボク、です」
「え?」
「ボクが使うオモチャです」
「そうなの?」

 顔を覗くと、どういうわけか袴田くんは、俺の想像していたよりも嬉しそうな顔をしていた。

「あ、……アナルとか、開発してるんだ?」
「はい、ボク、アナルオナニーが大好きなんです……」
「そう、なんだ……」
「アナルオナニーってすごく気持ちいいんですよ。犯されてる感覚がたまんなくて……、女とセックスするよりもずっとイイんです」

 そう言って、袴田くんはビールを呷った。
 眼鏡の奥の甘ったるい瞳が、アルコールのせいか、とろん、と溶けて見える。その色っぽいさまが、アルコールと混ざって俺を冷静ではいられなくさせた。

「俺、……ちょっと見てみたいなあ、袴田くんがアナルでオナニーしてるトコ」
「えっ?」
「あ、いや、えっと……」

 特に弁明の余地がないので黙っていると、袴田さんはニヤリと口角を上げて笑った。

「……見せましょうか?」
「えっ、うそ、マジ?」
「はい、篠田さんが見たい、とおっしゃるのなら。でも……、他の方には、御内密に願います」

 誰にも言うつもりはない。『袴田くんのオナニーを見た』なんて言ったところで、俺が変態扱いされるだけだ。

「じゃあ、ふたりきりになれる場所、行きましょうか」

 そう言うと、袴田くんは笑いながら席を立った。軽い空腹の中で飲み干したビールが、熱を持って体中を巡る。
 ビール二杯分の会計を済ませてから、袴田くんと夜の街を歩く。職場の誰かに遭遇したらどうしようかと思ったが、幸いにもそんなことはなく近くのラブホテルに着いた。
 金曜日だが、部屋には空きがあった。財布を出そうとする袴田くんを制して、休憩で支払ってからキーを受け取る。そのまま、お互い無言で部屋まで向かった。
 部屋はありがちな内装で、豪奢でも粗末でもなかった。袴田くんはジャケットを脱いでハンガーにかけると、ふらふらとソファに座った。俺もその隣に腰掛ける。

「オレ、準備してきます。ちょっと待っていて頂けますか?」
「え?ああ、うん。大丈夫だけど、……本当にいいの?」
「いいですよ。オレのこと、エロい目で見てくれて嬉しいです」
「…………」

 袴田くんの言葉は、色っぽいはずなのに瑞々しくて、思春期の頃のようにドキドキして、何も返せなかった。
 浴室で、俺にはよく分からない準備をしてから袴田くんは帰ってきた。腰にタオルを巻いただけの格好で、上半身は何も纏っていない。初めて見る袴田くんの体は、思ったよりもむっちりとしていた。その肉感も、俺の目にはセクシーに映った。

「お待たせしました」

 そう言って爽やかに笑うと、袴田くんはさっき買ったオモチャを手にしてベッドの上に乗った。俺も見やすいようにベッドへ行く。

「じゃあ、今から、オナニー……、します。ちゃんと全部見ていてくださいね?」
「う、うん……」
「えへ……」

 袴田くんは、俺の目を見つめながらゆっくりと乳首に指を這わせた。

「あっ……」

 聞くはずのなかった袴田くんのいやらしい声に、体が熱くなるのを感じた。軽く指の腹で擦ったり、つねったり、乳首を触るのに慣れている手つきだった。普段のオナニーでも弄っているのだろう。

「乳首も気持ちいいの?」
「気持ちいい……、んん、あぁん……」
「すげ……、エッロ……」

 荒い息を吐きながら、袴田くんが俺を挑発するように睨む。あの真面目そうな袴田くんに、こんな表情ができるなんて知らなかった。思わず押し倒してしまいそうになるほどだった。
 散々乳首を弄ると、漸く袴田くんはタオルを外した。びんびんに勃起したチンコから、どろりと先走りの液が垂れている。それを軽く扱くと、袴田くんは、俺に背中を向けて四つん這いになった。茶褐色の蕾もぶら下がったキンタマも、余す所なく俺の視界に映し出される。袴田くんの尻は、思っていたよりも大きく、でっぷりとしていた。

「見えますか?オレのケツ穴……」
「う、うん、バッチリ見えてるよ……」
「えへ……」

 袴田くんはローションを手に垂らし、アナルに指を這わせた。軽く力を込めると、ゆっくりと指が入り込む。

「あぁっ……、あ、あぁん……」

 ほじくるように動かしながら、少しずつ指の本数も増やしていく。ふらふらと動く袴田くんの視線は、俺の視線に気付いていながら行為に没頭するエゴイスティックないやらしさを感じさせた。
 三本ほど指が入る頃になると、袴田くんは漸くあのアダルトグッズを開けた。アナルに入れるには、少し太すぎるような気もする紫色のバイブ。パッケージの女の子は、甘ったるい顔をしていた。

「今からこのオモチャ、オレのケツマンコに入れちゃいますね」
「う、うん……」

 バイブにコンドームを付けて、ローションを垂らす。袴田くんは鼻息を荒げて、早くそのオモチャを自分の中に入れたくてたまらないらしかった。大量のローションで濡らしてから、バイブを自分のアナルにあてがう。散々指で慣らした袴田くんのアナルは、太いバイブを思っていたよりも簡単にするりと飲み込んでいった。

「あ゛ぁあんっ、あ……っ」

 奥まで押し込むと、袴田くんはバイブのスイッチを入れた。無機質な、ウィーン、という機械音が、静かな部屋に響いた。

「あっ……、あ、あ、あ、ん、んん」
「気持ちいいの?」
「気持ちいい……、もっと見て下さい」

 気持ち良さそうな甘ったるい声を上げながら、腰を振る袴田くん。
 真面目な袴田くんのこんないやらしい姿を見ているのは俺だけだと思うと、妙な独占欲が胸を刺激する。

「あっ、あぁあっ……、ケツマンコ気持ちいい……」
「やば、めっちゃエロい……」

 袴田くんが乱れる姿を見て、俺はもう、完全に勃起してしまっていた。

「袴田くん、ごめん、抜いてもいい?」
「えへ、オレをオカズにしたいんですか?」
「うん……」
「ダメです」

 そう言うと袴田くんは、四つん這いの姿勢で俺に近づいた。汗の匂いと、タバコの匂いが鼻をくすぐる。そういえば袴田くんは、喫煙者だった。

「オレがいるのにひとりでするなんて、ダメに決まってるじゃないですか、篠田さんのチンポ、オレに奉仕させて下さい」
「えっ、あ……」
「あっ……、すっごいガチガチ……」

 袴田くんは遠慮することもなく俺のベルトを外し、スラックスのチャックを下ろした。下着越しの俺のチンコにうっとりとした表情で頬擦りをする袴田くんにはもはや、会社でずっとデスクに向き合って仕事をしているあの素朴さはなかった。ボクサーパンツも下ろされ、完全に勃起したチンコを露にされる。抵抗する気は全くなかった。されるがままになっているのが心地いい。今まで一緒に働いてきて全く意識したこともなかった袴田くんが、今は猛烈に愛おしかった。

「わっ、でか……、こんなでっかいチンポ、初めてかもしれません」
「そ……、それって、他にも……」
「えへ、どうでしょう?」

 そう言って笑うと、袴田くんは俺のチンコを躊躇うこともなく咥えた。ねっとりとした温かい粘膜に包まれ、一気に快感が巡ってくる。無機質な機械音の中に、袴田くんの吐息と、いやらしい水音が混じる。

「んん……、チンポ美味しい……」

 俺を見つめる袴田くんの目は、トロトロに溶けていた。ふわっとした黒い髪を撫ぜると、嬉しそうに目を細める。本当に男のチンコが好きで仕方ないのだというような顔をしている。

「あー、すげ、気持ちいい……」
「んふ、うれひいれす……」

 袴田くんのフェラチオは、驚くほど巧かった。男だから、男の感じるところを知り尽くしているのかもしれない。それに加えて経験もあるのだろう。

「こんなふうに男のチンポ何本もしゃぶってきたの?」
「篠田さんの都合のいいように解釈していただいてかまいませんよ」
「何それ。ずるいなぁ」
「えへへ」

 袴田くんは妖しい笑顔を浮かべながら、俺のチンコをうまそうに貪った。激しく舌の先で舐められていると、だんだんと射精欲が湧いてくる。この男を汚したい、と、本能が叫んでいる。

「袴田くん、やばい、出そう……」
「んふ。オレの口に出したいですか?」
「出したい……」
「篠田さん可愛いですね。でもダメです」

 意地悪な微笑みも、たまらなく色っぽかった。

「出すなら、こっちで出して下さい……」

 そう言うと、袴田くんはゆっくりと尻に挿さったバイブを抜いた。それが何を意味しているのかは分かる。
 明日オフィスで顔を合わしたら気まずいんじゃないかとか、そういうことは最早考えられなかった。ただ、気持ちよくなりたい、袴田くんを気持ちよくさせたい、という邪な気持ちだけが、頭を擡げていた。
 俺が抵抗していないのを見ると、袴田くんは遠慮することなく俺を押し倒した。気持ちのままに、少し突き出た可愛い唇にキスをする。唇の下に少し目立つほくろがある。それもすごくセクシーだった。

「もう、入れちゃいますよ、オレのケツマンコの中に、篠田さんのデカマラ、入っちゃいますからね……」

 耳元で囁かれる低音にゾクゾクする。頷くと、袴田くんは俺の耳を優しく舐めた。甘ったるくて気持ちいい。大胆なのに繊細で、袴田くんには何か、人を興奮させる魅力があるように感じられた。今まで31年生きてきて、こんなに色っぽい男とセックスをしたことはなかった。
 散々俺の耳を舐めると、袴田くんは腰を上げて、アナルに俺のチンコをあてがった。そのまま、ゆっくりと腰を下ろしていく。もう、俺はされるがままだった。

「ん、んんぅうう……、あ、ああ、あぁん」
「ふうう、うっ……」
「んふ、ん……、あっ、あぁっ」

 奥まで入ると、袴田くんはそうするのが当然というように腰を動かし始めた。肉壁が、俺のチンコを吸い込むかのようにねっとりと蠢いている。再び唇にキスをすると、今度は舌が入り込んできた。さっきまでは余裕がありそうな感じがしたのに、袴田くんは必死そうな顔をしていた。

「はぁ、あ、あ、ん、んん……、あ、あ、すごい、あっ、あぁっ」
「袴田くん、俺のチンコはどう?」
「ん゛、あっ、あ、あ、気持ち、いいっ……!かたくて、太くて、すごいのぉっ、あっ、あっ」
「さっきのオモチャより気持ちいい?」
「うんっ、オモチャより、篠田さんのちんぽの方が気持ちいい……」

 袴田くんは、普段の堅苦しいほどの敬語を捨てて、甘ったるい声で淫乱な言葉を紡ぐ。もっと気持ちよくなりたくてたまらないのか、腰の動きがどんどん激しくなっていく。

「あぁっ、あ、あ、あ、ん、んんんっ、んんっ」
「すっごいエロいよ……、袴田くん、あんな真面目そうなふりしといて、本当はチンポ大好きなドスケベなんだ?」
「うん……、好き、チンポ大好き」

 とろとろの顔で甘える袴田くんにいつもの面影はない。その本性に、俺はもう完全に虜になってしまっていた。

「もっとチンポ欲しい?」
「欲しい!チンポ、チンポいっぱいください!」
「じゃあ、四つん這いになって」

 俺が言うと、袴田くんはチンコを抜き、素直に四つん這いになった。
 動いてもらうのも気持ちいいけれど、俺のほうが我慢できなかった。もっと激しく犯したい。

「あ、あぁん、早く、チンポぉ……」
「そんな慌てなくても、すぐに入れてあげるよ」

 ひくつくアナルに亀頭をくっつけ、ゆっくりと腰を送る。肉壁が、俺のチンコを歓迎するかのように包み込む。甘ったるい快楽が肌を血のように巡った。軽く中で馴染ませてから、緩く重たい挿抜を始める。

「ん、あ、あ、ぎもぢぃいい……」

 袴田くんは、背中をぶるぶると震わせながらシーツを掴み、いつもより高い声でそう呟いた。でっぷりとしたでかい尻を掴むと、それも気持ちいいのか、鼻から柔らかい息を漏らす。

「すげーエロいよ、袴田くん……」
「あ、あ、あう、あの、こ、功太、って、呼んで……」
「名前で呼んで欲しいの?可愛いとこあんじゃん、功太」
「あっ……!あんっ、あぁんっ……!」

 名前を呼ぶと、袴田くんは可愛い声を上げながら腰を振った。そんなに感じてくれると、俺まで嬉しくなってくる。体に覆い被さって背中を舐める。首筋から香る汗の匂いに、たまらなく興奮した。

「あ、あっ、あ、あ、すごいっ……!あ、ああっ、あ、あぅっ、あ、あぁあん……」
「あー、めちゃくちゃ可愛い……」
「ん゛やぁあんっ……、やっ、あ、あ、あぁんっ!んっ!ん゛ぅうっ、あっ、あ、あ、ん゛あぁっ!」

 逞しい体を抱きしめて、何度も腰を送る。体型も顔も性格もすべて、好みとは違うはずなのに、今の俺には袴田くんこそが理想の男に見えた。

「あ、ん、んん、ん、気持ちいい、だめっ、あ、あ、いく、ケツマンコいっちゃうっ……!」
「いく?チンコ突っ込まれてケツマンコいっちゃうの?」
「いっちゃう、あ、あ、いきそう、やばい、マンコむずむずして、もういっちゃいそう、いってもいい?」
「いいよ、功太のいくとこ見せて……」

 言いながら、激しく腰を振る。袴田くんはもう限界だと言うように肩をぶるぶると震わせながらシーツを強く握った。

「あ!あ!あ!いく!いっちゃうっ!いくっ!あっ、あ、あ、あ、いっ……、ん゛っ!んぅうう゛うぅううっ!」
「いっちゃった?」
「あ、あ、は、はふ、はい……」

 そう言って振り返った袴田くんの顔は、目が蕩け、口は半開きだった。油断したような表情がまたどうしようもなく色っぽい。

「俺ももういきそう。いってもいい?」

 袴田くんのいやらしい姿に、情けないほど下半身が疼いていた。袴田くんは苦しそうにしながらも、いってください、と、甘い声で呟いた。
 腰を深くまで押し込み、その広い背中に覆い被さる。もう、だいぶ限界が近かった。

「ちょっと我慢してね……、すぐ出すからね……」
「あぁあっ……、ああっ、ん、ん……」
「あーイキそー……、気持ちいい……」

 袴田くんの体に体重を預け、だらしなく射精をする。気持ち良くて、汗ばんだ袴田くんの背中に頬を擦り付ける。こんないやらしい男の子に中出しをしているのだと思うと、征服欲がたまらなかった。
 余韻がおさまってからゆっくりと腰を引くと、ぽっかりと空いた穴から精液が溢れた。そのいやらしい光景をティッシュで拭くと、袴田くんは体を重たそうに起こし、俺に抱き着いてきた。嫌な感じはしない。むしろ嬉しかった。

「篠田さん、キスしてもいい?」
「いいよ」
「ん、んん……」

 貪るような、下手くそなキスだった。でも、それすらも可愛かった。世の中にはやり捨てするような奴もいるだろうが、少なくとも俺は、一度セックスをしておいて、好意を一切持たないなんていうことはできない。

「オレばっかり気持ちよくなっちゃってごめんなさい」
「そんなことないよ。俺も気持ちよかったよ」
「えへ……」

 袴田くんは少し照れ臭そうに俯いた。

「は……、功太って、結構そういうことする方なの?」
「えー、どうでしょう?」
「すごく慣れてる感じあったしさ、フェラもうまいし……」
「うまかったですか?嬉しいです」

 すり抜けられている感じがあった。あんまり話したくないことなのかもしれないが、それで余計に嫉妬心が掻き立てられた。

「もしかして、社内のやつともやってたりする?」
「そうだとしたら、どう思います?」
「結構悔しいかも」
「ふふっ。してませんよ、篠田さんだけです」

 袴田くんはニコッ、と爽やかに笑って言った。その笑顔さえ俺は初めて見た。

「煙草、吸ってもいいですか?」
「え、ああ、いいよ」

 俺が言うと、袴田くんは煙草の箱とホテルのライター、それから灰皿を手に取り、ソファに座った。裸のままだけれど、こうして見ると袴田くんは袴田くんだった。

「功太は、彼女とか、彼氏とか、いないの?」
「気になります?」
「うん」
「それって、またボクとエッチしたいってことですか?」
「ええっと……、そういうことになるのかな」
「えへへ。嬉しいです」

 そう言って笑うと、袴田くんはライターで煙草に火をつけた。白い煙が、ホテルの箱に広がっていく。

「彼氏も彼女もいませんよ。それに、ボクもまた篠田さんとエッチしたいです」
「本当?」
「はい。でも、このことは、御内密に、願います」

 白い煙を吐き出しながら、袴田くんはにっこりと笑った。あの爽やかな笑顔だった。
 この夜に見た袴田くんのいろいろな表情のことを考える。少なくとも、それらが社内の人間には知られていないのだと思うと、優越感がじわりと胸を焦がした。




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