「あぢーぃ」 「まだ言うか」 「だってマジで暑いって!!見ろよこの汗!!」 「サニーだったら絶対に『ちょ、マジぱねぇデトックス効果!』って言うね」 「何でココは汗かかないんだよ」 「少しはかいてるよ」 「だから、何で少しで済むんだって」 「精神力。」 「嘘だ〜」 「嘘だよ。多分さっきの紅茶が効いたんだよ」 「それ言える。私も汗がひいてきてるし」 「マジで?じゃあオレも飲む!」 「え?残念。全部飲んじゃったよ」 「・・・・・・」 「あ、分からなかった?売り切れだよ?売・り・切・れ」 ココは『れ』で首を傾げてみせた。 「どん引きだ。お前のそういうとこ」 「ついでに汗もひかせたら?」 「無茶言うなよ!ホントにあぢぃんだって!!」 「でもトリコくん?ココさんちはうちより暑くないよ?」 「燈子まで裏切る訳?」 「裏切るも何も、ここなら私これで耐えられるもん」 燈子の手にはレースの扇子が広げられている。 「そんなんじゃオレは無理。あーあぢぃ。マジであづい。暑いあつい暑いあつい!」 「うるさいねこの男は」 「もう無視で良いです。無視で」 燈子は扇子で自身を扇ぐ。とても優雅に。 「・・・・・・」 「?どうしましたココさん?」 「あ、いや。ボクとした事が・・・燈子さんと扇子に目を奪われてた」 「え。やだココさん。照れるじゃないですか!」 「いや、本当だよ。何だか絵みたいだ」 「・・・・・・」 燈子の顔が火照ったのは暑さではなく。燈子は照れを誤魔化すように、更に小刻みに扇いだ。 「やっぱり凄く似合ってる」 「も、もう!恥ずかしいからやめてくださいよ」 「ボクも欲しくなってきた。買おうかな、扇子」 「蒼衣ちゃんに一つどうですか?」 「良いね。お薦めは何か有る?」 「そうですね・・・あ、お揃いで持つのってどうですか?」 「え、そんなのも有るの?」 「勿論。言うなら・・・夫婦扇子?!」 「じゃあそれが良いな。明日にでも店を覗いてみるよ」 「ペアかぁ・・・何か羨ましいな〜」 「・・・・・・」 話が弾んでいる二人に、興味の無い振りをしているが内心は面白くないトリコ。 「なー燈子、やっぱその団扇貸してくんねぇ?」 「団扇じゃない、扇子」 「どっちでも良いから貸せって」 「嫌。」 「何で!?」 「すぐ壊すから」 「信用されてないなトリコ・・・(ぷっ)」 「くそ〜・・・じゃあ扇いでくれよ」 トリコはココに見せ付けてやれとばかり、燈子に頼んだ。 「えぇ?」 「頼むよ燈子〜」 「しょーがないなぁ」 「よっしゃ」 トリコはココをチラッと見た。 「へへっ」 パタパタパタ・・・ 「・・・どう?」 「ん゛ー」 パタパタパタ・・・ 「・・・どう?」 「ん゛ー・・・・・・」 パタパタパタパタパタパタ・・・ 「やっぱあぢぃ」 「ええ?!」 「トリコ・・・扇がせておいてそれは無いんじゃない?」 「だってチンタラ過ぎて熱風なんだよ。頼むから音速で扇いでくれよ〜」 「無理だろそれ」 「ホント。怪力トリコくんと一緒にしないでよね」 「無理じゃねーよ。だっていつも平手は音速じゃねーか」 「ちょっと!?」 「・・・平手?!」 「オレと一緒にするなって言うけど、お前だって一般人にしてはかなりの怪力・・・痛゛っ」 一瞬の隙に、燈子は扇子を閉じてトリコの額を突いていた。 「ココさん?ちょっとお見苦しい所見せて良いかしら?」 「どうぞ。音速で」 「ちょ、フツーは止めるだろココ?!・・・って痛!」 「凄い。本当に音速だ」 「感心してんじゃねーよ!マジで痛いって!暑いし痛いし!」 「避けると更に暑くなるわよ」 「無茶言うな!・・・って痛い!やめろ暑い・・・じゃなくて痛いって!あでもやっぱ暑い!てか痛い!暑い痛い暑い痛い痛い!」 ← → |