だってあついから・3







「あぢーぃ」


「まだ言うか」
「だってマジで暑いって!!見ろよこの汗!!」
「サニーだったら絶対に『ちょ、マジぱねぇデトックス効果!』って言うね」
「何でココは汗かかないんだよ」
「少しはかいてるよ」
「だから、何で少しで済むんだって」
「精神力。」
「嘘だ〜」
「嘘だよ。多分さっきの紅茶が効いたんだよ」
「それ言える。私も汗がひいてきてるし」
「マジで?じゃあオレも飲む!」
「え?残念。全部飲んじゃったよ」
「・・・・・・」
「あ、分からなかった?売り切れだよ?売・り・切・れ」

ココは『れ』で首を傾げてみせた。

「どん引きだ。お前のそういうとこ」
「ついでに汗もひかせたら?」
「無茶言うなよ!ホントにあぢぃんだって!!」
「でもトリコくん?ココさんちはうちより暑くないよ?」
「燈子まで裏切る訳?」
「裏切るも何も、ここなら私これで耐えられるもん」

燈子の手にはレースの扇子が広げられている。

「そんなんじゃオレは無理。あーあぢぃ。マジであづい。暑いあつい暑いあつい!」
「うるさいねこの男は」
「もう無視で良いです。無視で」

燈子は扇子で自身を扇ぐ。とても優雅に。

「・・・・・・」
「?どうしましたココさん?」
「あ、いや。ボクとした事が・・・燈子さんと扇子に目を奪われてた」
「え。やだココさん。照れるじゃないですか!」
「いや、本当だよ。何だか絵みたいだ」
「・・・・・・」

燈子の顔が火照ったのは暑さではなく。燈子は照れを誤魔化すように、更に小刻みに扇いだ。

「やっぱり凄く似合ってる」
「も、もう!恥ずかしいからやめてくださいよ」
「ボクも欲しくなってきた。買おうかな、扇子」
「蒼衣ちゃんに一つどうですか?」
「良いね。お薦めは何か有る?」
「そうですね・・・あ、お揃いで持つのってどうですか?」
「え、そんなのも有るの?」
「勿論。言うなら・・・夫婦扇子?!」
「じゃあそれが良いな。明日にでも店を覗いてみるよ」
「ペアかぁ・・・何か羨ましいな〜」
「・・・・・・」

話が弾んでいる二人に、興味の無い振りをしているが内心は面白くないトリコ。

「なー燈子、やっぱその団扇貸してくんねぇ?」
「団扇じゃない、扇子」
「どっちでも良いから貸せって」
「嫌。」
「何で!?」
「すぐ壊すから」
「信用されてないなトリコ・・・(ぷっ)」
「くそ〜・・・じゃあ扇いでくれよ」

トリコはココに見せ付けてやれとばかり、燈子に頼んだ。

「えぇ?」
「頼むよ燈子〜」
「しょーがないなぁ」
「よっしゃ」

トリコはココをチラッと見た。

「へへっ」


パタパタパタ・・・

「・・・どう?」
「ん゛ー」


パタパタパタ・・・

「・・・どう?」
「ん゛ー・・・・・・」


パタパタパタパタパタパタ・・・

「やっぱあぢぃ」
「ええ?!」
「トリコ・・・扇がせておいてそれは無いんじゃない?」
「だってチンタラ過ぎて熱風なんだよ。頼むから音速で扇いでくれよ〜」
「無理だろそれ」
「ホント。怪力トリコくんと一緒にしないでよね」
「無理じゃねーよ。だっていつも平手は音速じゃねーか」
「ちょっと!?」
「・・・平手?!」
「オレと一緒にするなって言うけど、お前だって一般人にしてはかなりの怪力・・・痛゛っ」

一瞬の隙に、燈子は扇子を閉じてトリコの額を突いていた。

「ココさん?ちょっとお見苦しい所見せて良いかしら?」
「どうぞ。音速で」
「ちょ、フツーは止めるだろココ?!・・・って痛!」
「凄い。本当に音速だ」
「感心してんじゃねーよ!マジで痛いって!暑いし痛いし!」
「避けると更に暑くなるわよ」
「無茶言うな!・・・って痛い!やめろ暑い・・・じゃなくて痛いって!あでもやっぱ暑い!てか痛い!暑い痛い暑い痛い痛い!」








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