the 絶
男は俺の顔をじっと見ては怒りで赤みがかった顔を、さらに顔を赤くし、頬を強張らせた。

「チッ…!」

舌打ちをしては男は俺の手を勢いよく引っ張り、俺を抱き込むように体を密着させる。思ったより体が大きく、近くによると急に威圧感を感じた。

男は俺の首元を掴むと、顔をグッと近づけ、近距離で言い放った。

「お前、そうやって他の男に腰振ってたんだろ」
「…えっ…?」

突然の言いがかりに思考が停止する。
もしかして、『わざと媚を売っている』、そう、見えたということだろうか。
決死の抵抗もそう受け取られてしまうなんて……。


(…ちがう!そんなつもりじゃない…っ!)


羽島に揶揄われたこと思い出し、カッと顔が赤くなった。
全くもってそんなつもりはない。どうしてそう思われてしまうのか…!

俺は勘違いを解こうと、どこかへ行ってしまわないよう、男の身体を捕まえて動けないように抱きつく。


「ま、待って!なにか、勘違いしてっ!」
「クソッ…!寄るなッ…!」
「違う…!本当に、ちがッ、……!」
「うるせぇッ!」


俺があまりにも近づきすぎたせいか、男は怒号をあげ勢いよく手を上へ掲げる。

(打たれる…!)

そう衝撃を覚悟して目を瞑った。



だが、しかし、痛みが来るよりも先に身体を勢いよく投げ飛ばされた。

「ヴッ…!!」

思わぬところに痛みが走り、くぐもった声が出る。しかし、さらに押さえつけるように男によって地面に押し倒された。

背中に痛みが走った感覚がし、俺は後ろに倒れ込んでいた。
男はそのまま俺の上に馬乗りになると、俺の顔を掴んでは、横に動かして頬を床に押し付ける。


「てめえみたいなのが一番嫌いなんだよ」


そう言って男はズボンを脱がしにかかってきた。

「ぁ…ッ!?な、なんで…ッ!」

俺が暴れても、男は何も言わず俺を押さえ込み、下着ごと服を脱がしてくる。
訳もわからず襲われていることに恐怖を感じると同時に、この先に予想される行為に思い当たる節があり、それを想像するだけで反射的に震え上がってしまう。

「や、やめっ…!やめろッ…!」
「抵抗するならもっと暴れてみろ!」

顔を間近に近づけてそう吠えられる。
獣のような獰猛さを孕んだ表情に、鋭い犬歯がぎらりと光った。興奮からなのか、顔が上気し、頬や鼻先が赤くなっていた。

防衛本能…いや、生存本能なのだろうか。
暴れたいと思っても、その男に恐怖を感じ、身体の震えが増して一切目の前の男を殴りつけることもできない。
震え上がりすぎたのか、カチカチと歯がなる。

男は抵抗もろくにできない俺をそのままに、下着ごとスラックスを引き下ろした。俺の素肌の腰を掴み、自分のズボンのジッパーを下げ、前を広げる。
隙間から男の性器の膨らみが見え、顔が真っ青になった、


(嘘だろ…、なんで勃って…)
 
なんでこんな状況なのに彼は勃っているのか。今のおかしな状況に脳みそが混乱している。

しかし、男は俺の考えてることなどお構いなしに、俺の腰を高く掲げると、取り出した猛々しい性器をびたりと後穴に当てた。

「あっ…!?待っ…てぇ…ッ!!」

声を絞り出して、叫ぶ。
しかし、ぐぐぐ、と男は無理やり中に性器を捻じ込んできた。

俺の中が濡れているわけではないが、男の先走り汁が潤滑油となり強引でも入ってき、さらに朝に鳴々樹とやったせいか、尻穴は解れていて、拒むどころかすんなり男の性器を飲み込んでいってしまう。挿入から逃げようと暴れようとするが、腰を掴まれ逃れられない。


「あっ…!あっ…、ああっ…!!」
「っ、!?なんだこれ…っ!は…ッ、てめえ、こんなガバガバなのかよ!本当にクソビッチじゃねえかッ…!!」
「っや、ぁ…!やめぇ…っ…!!」

男は制す言葉も聞かず奥へ奥へと自身を押し込んでくる。ごりごりと腸内に侵入してくる感覚が身体中を痙攣させる。鳴々樹の慣らした身体は男の性器を飲み込んでいく。


「俺が先に見つけたのに…手付けられやがってッ!」
「っ、ぅッ…?ぁ…、な、なにぃッ…………、んむっ…!?」

男は憎むように苦しむように言い捨てたあと、俺の開いた口を塞ぐように噛み付いてきた。そのまま舌が侵入し、口内で暴れ回る。体をジタバタさせても、胸を押し返しても男は口付けることをやめず、ただ腹奥の性器をより大きくした。

「っ、ん、っぁ、あっ…!んぬ、ぅ…!!」
「っ、く、っ…!!っ、俺が、俺が、先に…!」

男が一体何を言っているのか、俺はさっぱり理解できなかった。しかし、腰を強く叩きつけられ、キスを何度も重ねる様子に、彼が激しい怒りを自分にぶつけてきていることはわかる。
パシン、パシン、パシン!と荒々しく肌がぶつかる音と絡まる水音が響き渡る。覆い被さられて、視界が真っ暗となり、何が起きてるのかはっきりと見えない。

「ふっ…ぐ、っぅ、うっ…!!」

ぐらぐらと身体を揺らされ、また湧き上がってくる甘い快楽に唇を噛み締める。
結局、救いを求めた男に陵辱され、心は絶望を感じるとともに、身体は快楽で脳汁がドバドバと溢れ出す。

「っぁ、あっ、あっ…!」
「っち、くそ、なんで、ッ」

男は恨み言を呟くように一方的に言葉を吐き捨てては、顔を掴み上げてキスを貪る。暴れまわる舌は俺の唾液ごと全て吸い付くそうとし、快楽を逃さないとばかりに口内を這いずり回る。酸素はうまく吸えず、正常な判断はなくなっていく。さらに、腰は片方の腕で完全に固定され、逃げることはできず、腰を打ちつけられるたび、中をグリグリと押し込まれ、それと同時に自分の性器が冷えた地面に当たって刺激に頭がクラクラしてくる。

男の暴走した性衝動に頭がおかしくなる。全て貪りつこそうとする行為が怖い。


「他の男に腰振れねえように、調教し直してやるよッ!!」
「ッイ、ぁ、ああッ…!!!」


長くて太いものが腸の入り口に擦れた。
ゴリッという感覚がしたと共に頭が弾けて全てが真っ白になる。

「っあ、あああっ、あああああっ….!!!」

目の前がチカチカと点滅し、体の痙攣が一向に止まらない。なのに、性器から精液が勢いよく飛び出し、尻穴は男の性器を離さないようにドクドクと縛り付ける。
気持ちがいいのかわからない。本当に身体の感覚が飛び散った感覚だった。


イッた体で痙攣をし続けているにも関わらず、男は俺の体を抱き上げ、再度挿入してくる。
男の性器が濡れているからすんなり入ったが、先程の衝撃が強すぎて男がイッたがどうかもわからない。

「っあ"ッ、あ"あ"あ"ッ…!!」
「気持ちよくなってんじゃねーよ!ビッチが!汚ねえんだよ…ッ!!!」

そう言いながらも、抱きしめながら腰を打ち付けてくる男。グッと離さないで下からの衝撃に声を我慢する余裕もない。

「っあ"、あ"あ"ッ、や、やだ…!やだぁ、あ"ッ、あああッ!!」

痛みとかもう感じない。ただ、ただくる刺激に頭がガンガンと振り回される。大声の嬌声を上げる自分を歯止めできない。


「チッ…!!これなら最初から、壊しとけば…!こんな淫乱になるんだったら初めからやっとけば…!!」

男はそう叫ぶと唐突に片手で首を掴み上げる。

「っぁ、ぐぅ、ッ」

ぎゅうっと首を強く締め付け始める。
息が、ッ、できない…ッ。
突然呼吸をとめられて首に回す手を振り払おうと、掴んでひっぱったり、引っ掻いたりなどするが絶対に手が離れない。
男は暴れる俺により興奮してしまったのか、間近で叫び上げる。

「お前のせいだ!お前のせいだ!お前が他の奴に付いて行くからッ!お前が他の奴に体を許すからッ!!こんな汚ねえ身体で生きてんじゃねえよッ!こっちみるんじゃねーよッ!男に抱かれまくった身体で俺に感謝するんじゃねえよッ!汚ねえんだよッ!しね…死ねッ…!!」

何を言っているんだ、どうして、そんなひどいこと。
そんな言葉を発することもできず、浅い息となって消えて行く。なんで彼がそんな言葉を言うのか、そんな理由を考える力ももう今はない。

憎しみの籠った目で叫ばれながら首を締め付ける握力が強くなる。男がボロボロと涙をこぼしながらよりグッと力を込めた。

「死ね!俺に一生謝りながら死ねッ!!」
「あ、っハッ…、ぅ、っ、た……ッ、すけ、…てぇっ…」


お願い、もうやめてくれ。そう願いを込めて声を振り絞る。
頭に血が回り、息が続かない。

そうおもったとき、突然男の顔がブレた。


この光景は知っている。
そして、結局いつもこうなることに俺は気付く。


ーーーお前は一体俺の何なんだ、鳴々樹。



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