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「は、っ…どういうこと…?」

冬織もそんな返答を返されると思わなかったんだろう。
赤く泣き腫らした目は戸惑っている。


「冬織、お前は何を知ってるのか知らないが、俺はおじさんとセックスはしてない。挿入させてないから」
「で、でも…そのおじさんは変態だ。万智を誘拐して7年間も家に閉じ込めてた。万智に性的な好意を持ってたのは事実だろ。セックスなんてしてなくても万智に性的暴力を働いた可能性だっていくらでもある」


冬織はそんなことまで知ってたのか。

俺は冬織に感心してしまう。
どうやって調べたんだろう。冬織の賢い頭ではそんなことまでわかってしまうものなのか。予想も当たっている。


俺は冬織を見上げなら、冬織の頬に触れた。

「おじさんはさ、いつもポケットにナイフを仕込んでるんだよ。サバイバルナイフ。山とかあるからさ、そういうの持ってるといろいろ便利なんだ。小さい時は山で捕まえた動物をそのサバイバルナイフで捌いてたのだって見たことある」

様々な用途に使えるサバイバルナイフは便利なのだと、穏和な顔をしたおじさんは微笑んでいっていた。
おじさんはサバイバルナイフを手放さない。あれは何にでも便利だからだ。おじさんが裏で加担している仕事にも随分と役に立つものなんだろう。


「おじさん、部屋でやましいことしてたのを俺に見られて、咄嗟にポケットに手を突っ込んだんだよ。ズボンを履き直すフリまでしてこちらに近づいてきてさ……あれはナイフで俺を刺し殺そうとしてたんだ」

殺さなかったとしても、無理矢理切りつけて俺の身動きを取れなくしようとしていた。
あの状況はおじさんにとって不都合なものだったんだ。
今まで隠していた性的な加虐の一面を見られて、俺が暴れるとでも思ったのだろう。


「だから俺はおじさんを誘った。オナニーの手伝いをしてやったんだよ」


殺されるのと『引き換え』にされるなら、自分が性的な対象として扱われようが平気だった。
傷つく恐れがあったそれを未然に防いだ、それだけだ。



冬織は顔面蒼白にし、気を喪失させていた。俺の言ってる意味がよくわかったのだろう。信じられない、という目でこちらを見ている。
冬織は小さく震えた声を漏らした。


「それなら…万智は、殺すって脅されたら、どんな奴にレイプされてもいいっていうの…?」
「当たり前だろ。俺はそうやって生きてきたんだ。レイプされるなんて殺されるよりも随分マシだろ?」

甘い蜜を吸えるのであればどんなことでもする。
それが俺の今まで積み上げてきたものだ。

おじさんに誘拐されたのも、田島から風俗の斡旋バイトを引き受けたのも、全ては好都合な人生を送るため。引き換えするのにリスクが多少あるのは当たり前だ。ただ上手い話があればそちらに食いつく。威厳とかプライドとかそんな邪魔くさいもの捨てた。


冬織は俺の揺らがない目に、わなわなと震える。


「それじゃあ…万智は…。……俺が殺すって脅せば服を脱ぐの…?」
「ああ。なんならセックスしてもいいぜ」

冬織を見あげて笑うと、冬織は苦しそうに顔を歪める。
興奮した色情とつまらない倫理観の押し問答に彼は悩まされているのだろう。ばかだなぁ。


俺はそんな冬織の肩に手を伸ばし、よりグッ、と冬織の顔をこちらに引き寄せた。


「……冬織がおじさんよりイイのなら、俺はそっちにいくよ」



俺のその言葉に、冬織の目の色が確実に変わった−−−。

冬織にとってはその言葉が引き金となったんだろう。熱くて獰猛な視線が俺の顔いっぱいに突き刺さってくる。


「…万智。それなら俺はお前を抱くよ。今、ここで俺は万智を脅す」

首に手がかかり、冬織の目が俺の顔をギラギラと見ている。
肌から伝わる冬織の指先が再度俺の首に沈みこみ、長い爪が少し食い込んでいる。

「……俺がおじさんから万智を解放してあげるから」
「いいよ。俺は冬織に殺されたくないから、お前とセックスする。それで理由は整ったでしょ」


その言葉が合図となり、冬織は首から手を離すと、俺を抱き上げた。
中途半端に押し倒していた身体を持ち上げてベッドの中央に寝かせ直し、今度こそ体全身をベッドの上に置いた。


そのまま乗り上げた冬織が唇を首元に触れさせ、リップ音を立てながら筋をなぞる。

あくまで丁寧な紳士的に施される口付けがくすぐったい。

冬織は首元を食らいながら、シャツの隙間から手を入れて、腹をなぞり脇腹を撫でながら手は胸元に上がっていく。
膨らみのない胸を揉みながら優しく摩る冬織に、俺は甘く痺れる感覚と次第に息が上がった。
冬織に乳首を捏ねられながら、シャツを剥ぎ取られ、冬織は俺の上半身へ相変わらずキスを落としながら丁寧に前戯をしていく。
ズボンのボタンを外し、こちらも丁寧に脱がされた。

ありがた迷惑にも、下着と靴下だけ残された格好で俺はベッドに押し倒される。そのまま冬織のキスを裸になった俺は全身に受け入れていた。

冬織が足や脛、太ももと唇を馳せながら、下着のついた股間部分に顔を寄せる。


「万智、レイプされてるのに勃ってるじゃん」

あまりにも綺麗な顔が股間部からこちらを覗いてはそう低く呟く。
その光景はあまりにも冬織に似合わなく、どこか破廉恥に感じた。


「…違う。これはレイプじゃない。俺ら2人の合意のセックスだよ」

そう言葉にすると、自分の身体が一際また熱が上がった気がした。



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