19
○○○○○○

放課後になってしまった。

ヒコたんはクラスメイトに連れられ、遠くへ行ってしまう。


俺はというと、相変わらずどこにも馴染めずじまいで端っこの方でまた体育座りして縮こんでいた。
本当にこの時間つまらなさすぎでしょ…。


ジッと座ってヒコたんの方へ怨念を送っていると、周りが急に騒つき始め、肩をトントンと叩かれた。

「ゆり、迎えにきたよ」
「っ!聖っ」

ニコリと笑って、うんと頷いた聖。なんでいるんだ。
俺が座り込んでいるからか、同じようにしゃがんで目線を合わせて話しかけてくる。

「け、結構って言ったじゃっ……ですかっ!」
「あはは、敬語ずっと使うの?ゆりはタメ口でいいよ。そっちの方が可愛いし」
「はぁッ…?な、何言ってんの…」

眉間に皺を寄せてそういえば、聖は「あはは、可愛い」と手を叩いている。
意味がわからない、本当についてけない…。

その一方で、聖が教室にいることにクラスメイト達がざわざわし始める。

「えっ、先輩じゃない?」
「聖先輩?!うそっ!超レアじゃん?」
「聖センパーイ、何か用ですかー?」

うちのクラスの女子はやたらミーハーなのか、面食いなのか、ヒコたんや駿喜の時の如く、聖の周りに群がりだした。しかも人数がエゲツない。キャーキャーと騒ぐ女子連中にドン引きである。こいつらはイケメンだったらなんでもいいのか。

すると急に、聖と中心にいた俺は、突然ドンッ!と体を押された。そのままの勢いで、女子の団塊から外へ弾き出され、地面に倒れ込んでしまう。
顔面が勢いよく地面に当たった。

(いっっったぁ!絶対誰かわざと押しただろ!!)

地面に倒れ込んでいたところを、俺は慌てて立ち上がる。



「あれーゆりちゃん何してんの?大丈夫?」
「げっ、駿喜…」

(な、なんでこういう時に限って面倒くさい奴ばっかり集まるんだよ!)

隣のクラスのくせに堂々とうちの教室に入ってきたのは駿喜だ。相変わらず無遠慮な行動とタイミングの悪さには辟易としてしまう。
しかし、駿喜はそんな俺の心情を気にしてないのか、話しかけてくる。

「ゆりちゃんもしかして転けてた?」
「こ、転けてないし」
「……」
「ッ、なんだよ!」
「ふーん、まあ強がりもほどほどにね」
「うるさい…」
「てかさ、なにこれ?真ん中で何が起きてんの?」
「しらない、自分で考えろよ」
「あー!ゆりちゃん冷たいなぁ。雅彦の前で被ってる猫面はどうしたの?」
「ハッ、ほんとウザい!お前には必要ないでしょ」

ケッと駿喜をにらめば、ふー、とため息を吐いた駿喜が俺の肩を無理やり抱いてくる。

「ゆりちゃんさぁ、もっと愛想良くすればいいのに。顔はマシな方なんだからさ」
「は?余計なお世話なんだけど。てか、顔はマシってどういうことだよ!!」

その言葉にうーんと駿喜は考え込む。

「…まあ、ギリギリ、ヤレる、って感じかな?」
「は…ッ!?」

勢い任せに聞いたのに予想外の返答で思わず気返事をしてしまう。
肩に乗せられた駿喜の手が怖くなって、急いで振り払った。
しかし、その動作に駿喜がニヤニヤとした笑みを浮かべる。

「あれ?ヤれるって言っただけだよ?何を考えたわけ、ゆりちゃんは〜えっち〜〜」
「〜〜ッうるさい!!ほんと腐れ野郎だなお前は!死ねっ!!」
「それはゆりちゃんには言われたくないけどね」

俺の言った言葉にも、全くと言って無反応な駿喜。むしろ、俺がイライラとしている様子を楽しんでいるようで、ますます気が立ってきた。

(やっぱりコイツには構わない方がいい!)

面倒くさい奴らといるのはうんざりで、さっさと退散しようと、鞄を掴み取る。

「あれ?どこ行くの?」
「うるせえ、帰るの」
「準備は?サボっていいの?」
「アンタも自分のクラスの準備サボってんだろが!」

わー、バレてた?とウィンクしてくる駿喜を速攻無視する。

しかし、背が高い聖は、女子達の群れの中でも真っ先に俺の帰ろうとする姿を見つけてしまう。

「あ!ゆり!どこ行くの?帰るの?待って!俺も行く!」
「は!?いいよ!来なくていいし!」
「ヤダ!俺が行きたいのー!」

そう言った聖がこちらに寄ってこようとし、なぜか引っ付いた女子達の団体もゾロゾロとついてくる。うわっ、まじ!?

「ゆり、待ってよー!」
「え、聖先輩帰っちゃうんですかー!」
「まだいてくださいー!」
「あんなブスいいじゃないですか〜!」

聖の周りでワラワラとそうやって騒ぎ立てる女子クラスメイト達。まさか、あまりにも大きく騒いでいるため、俺もギョッとしてしまう。

てか誰がブスだ、おい!テメエの方がクソブスじゃねえか!顔面が良ければ誰にでもホイホイするのか、このビッチ達めッ!!

般若の顔でさっき俺を追い出した女共を睨んでいれば、横からクスクスと笑い声がきこえてくる。

「ックク…!ゆりちゃん、顔すげー!ブッサイクなんだけど」
「あ"!?てめえも、ぶっ殺すぞッ!」
「やべー、腹いてぇー」

駿喜は俺の顔を見ながらまだゲラゲラと笑っている。なんなんだ、アイツ。マジで殺してやる……。

そんな中、聖がごめんねーと柔らかく女子達を断って、その群勢を振り払うと、俺の方へ駆け寄ってくる。
聖が俺に構うからか、ギラリ、とクラスメイト達が睨む視線が身体中に突き刺さり、すぐさま居心地が悪くなった。

「…っち、本当気分悪っ」

俺はそのクラスメイト達の視線を全身に浴びたくなくて、早歩きで教室を抜け出した。



19/50
prev / novel top / next
clap! bkm


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -