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「郭那〜、数学の宿題ちゃんとやった?」
「やったよ」
「えらい!郭那!よしよし!」
「梓、やめろ」

梓は犬を撫でるみたいに髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き撫でる。何も偉いことなんてしてない。みんなやってる事だ。そして、またこの一瞬も俺は他の奴らと同じになったのだ。凡人の道から俺は永遠に抜け出せない。

未だに俺は見つけられていなかった。ずっと悩んでいるのに、俺の生きる意味を見つけられないのだ。生きなければいけない理由。こんなに真剣に悩んでいるのに一向に見つからない。
これで、もし少しでも俺が賢ければ、何か哲学的な発見でも世界の理でも気付けたかもしれないだろうに、俺のクソパンピー脳みそは何一つ答えを出せずにいた。

「郭那〜、進路決めた?」
「……まあ、うん」
「郭那も大学進学でしょ?N大とかどう?都内にキャンパスあるから、教室の棟が少し離れて立ってるらしいよ!街がキャンパスみたいになってるらしい!すごいよね!」

梓は腕を絡ませて、楽しそう!とはしゃいでいるが、俺はほぼ大学に行く気はなかった。

俺の決めた期限は18歳だ。多分このままだと、俺の予想では18歳が命日になる。きっと死ぬだろう。何の才能も見つけられてないのだから、ファンタジーのように何か不思議な力が突然手に入るほどの非現実さが無ければきっと世に残せるほどの何かを俺は生み出せないだろうな。
人間の価値ってあまりにも無意味すぎないか?

「郭那、学部どこにする?出来たら…一緒のとこ行きたいね」
「梓、お前ちゃんと将来のことについて考えろ」
「郭那もだよ!僕は大体行くとこ決めてるし…。でも、郭那生物選択でしょ?理学部とか行くの?それとも数学系?」
「…わからない。俺の実力がどこまであるかもわからないし」
「郭那、同じ大学一緒に目指そうよ。僕、大学も郭那と一緒がいいと思ってるんだよ」

梓は自分の可能性についてもっと考えるべきだ。どうして俺に合わせようとするんだ。

俺はもうほぼ望みがない。俺が大学に行ったところで親の金を食いつぶすだけだ。まだあの何も考えていない馬鹿弟の方がスポーツ推薦枠にも入る実力から人類史にとってきっと有意義な成績を残すだろう。

梓は友達だ。
歴史に残るような成果は遂げなくとも、贔屓目に見て、彼はきっと人間として生きる価値はあると思う。
実際に彼を慕う人間は沢山いるし、彼に好意を持っている人間も男女問わず数人知っている。彼はきっと『生きること』を望まれているのだ。それも、大事な人間の価値の一つだ。

「梓はもっと考えるべきだ、お前が人生において何をしたいか、そして我々に何の価値を与えられるのか」

これは大切な友達な梓だから言う。俺が考えても考えても出てこない答えだけど、俺よりも少し賢い梓ならきっとわかるだろ?


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