番外編〜マヤ視点〜*後編
「ミヤビさんホスト辞めるつもりですか?!」

ユイが体調を崩したらしい。ミヤビから直接そう連絡がきた。
ユイはミヤビと共に住んでいる。しかし、俺以外他の従業員はそのことを知らない。
そうなると、彼は問答無用で無断欠勤。違反罰金だ。本人ではなく、ミヤビからその報告が来たのだからそんな特例は認められない。実際今日の仕事は終了し、皆ユイが欠勤したのは知っている。
ミヤビもこれが何のためにある規則なのか、その意味はわかっているため、「俺があとで返済しても良いから、ユイにその借金をつけろ」と言った。

そして久しぶりに連絡をしてきたミヤビだったが、ミヤビの名前や話題、彼の存在自体をホストにも客にも触れさせるなというおかしな提案をしてきた。
そもそもこの店はミヤビがほぼ柱となって稼げている。
店の一覧からも外すようミヤビは要請してきたため、俺は大きくそう声を上げてしまった。

「なんだい?俺もいずれこの業界から遠のくときはくるだろ?」
「ミヤビさん、待ってください。それはあまりにも急すぎます!上もなんて言い出すか…!」
「確かになぁ〜うるさそうではある。でも、俺ももう仔猫たちと遊ぶことは辞めたよ。やる意味もなくなったし」
「ミヤビさんっ…!」
「はは、大丈夫。そんなすぐにはあの爺さん達が俺を辞めさせないとは思うから。でも、俺のことは一切干渉させないで。あとユイも。ユイあの子、自分がどういう立場だかちゃんとわかっていないようだから、ほかの人間に触れさせないで」
お願いね、マヤ。

携帯を持つ手が震えた。彼は本気だ。もうずっと彼のそばに居たからこそわかる。
スピーカー越しでもわかる彼の気迫に俺は「わかりました」とだけ答えた。


ミヤビの命令通り、ミヤビの話題を禁止にし、ユイも問題行動が多すぎるため介入は一切禁止とした。必要であれば俺が対処することになっている。

ユイは休んだ日以降も相変わらず気の弱そうな顔をしていた。
ミスはなくならないため、度々俺は彼を呼び出した。
しかし、彼の様子はおかしい。痛みに泣き叫んでいた顔はどこか遠くをぼんやり見ている。
殴りつけても涙はポトリと汗のように垂れるだけで、何の感情もこもっていない。
俺は何だかその様子に楽しめなくて、彼を痛めつけるのも飽きてしまった。










*******

今日は本部のもとへ行かなければならなかった。
ミヤビの行動があまりにもおかしいと、俺が呼び出されたのだ。
彼はホストをやめようとしている。しかしその動機や真相はわからない。
歳が随分いった老人達はミヤビのことを暴き出せと俺に命令した。結果次第では、それなりの報復をしろ、と。
しかし、俺はそれに従うつもりはない。

…多分あの年寄りたちももうしばらくしたら死ぬだろう。ミヤビにとって彼らももう用済みなのだろうから。


店へ一旦帰ろうか。
そう思いながらタクシーを呼び止めようとした時。携帯のコール音が鳴った。俺はその通話に出て用件だけきくと、行き先を変更しミヤビの自宅へ向かう。
彼の家へ行くのは久しぶりだ。もちろん疑いなくミヤビの呼び出しだ。
股掛けして揉めたホストの後始末以来だな。大抵彼の家へ呼び出されるときは問題を起こしたやつを処理するためだ。様々な拷問や報復を施し、彼らを消す。ミヤビはそうやってのし上がってきた人間だった。

俺はふと昔の自分の記憶が過り体が震えたが、中へ入っていく。呼び出されたのは奥の部屋。ミヤビが滅多に使わない部屋だ。所謂拷問部屋。俺が雅に誘われて男達に体を弄ばれた部屋。



「失礼します」
「ああ、マヤ、やっと来たね。早速で悪いんだけど風呂場に連れて行ってくれる?」
ミヤビの前にはベッドでユイが裸にされ寝かされていた。
俺はベッドで寝ている人物が意外で、少し驚いて彼を見た。ミヤビはそれに応えるようににこりと笑う。
「準備は揃ってるから、よろしくね。いつもみたいじゃダメだよ?優しく大事に扱ってね、彼は僕のお姫様なんだ」

ミヤビの命令は絶対−−−。

俺は黙ってユイを風呂場へ連れて行った。
拷問部屋の隣にあるユニットバスは綺麗に掃除されている。そこに並べられた浣腸器具。
彼はついにユイを女を抱けない体にするつもりだ。様々な拷問を受けた奴らの一部は俺のように男に抱かれ、薬漬けにされて、精神を壊した奴らもいる。

気絶して目を覚さないユイの肌に触れた。体全身をくまなく洗い、器具の用意を整えていく。
長いチューブを入れるために穴を解さなければならない。ミヤビは丁寧に傷つけないように扱えと俺へ再三言いつけた。
いつもより多い量の潤滑油を手に垂らし、指に満遍なく塗ると、尻たぶに触れる。
そのまま人差し指をユイの中へ慣らすよう突き入れる。いきなりはやはり入らないので、少しずつ中に押し込む力を強めながら、解していく。
人差し指が第二関節まで入ったのを確認して内部も同時にほぐしていく。慣れきったこの作業であっという間にチューブが入りそうなほど広がった。
ユイはまだ気絶したままで意識を取り戻していないが、念のために剥き出しになっているパイプに拘束具を固定する。
チューブを引き出し、ゆっくりと彼の後穴へ突き入れた。そのまま洗浄を始める。
ユイが体内へ水が入ってくる感覚に打ち震えた。
ゆっくりユイの目が開かれる。

「……?…ヒッ!!!」

彼は上ずった悲鳴を上げると、拘束具を激しく揺らした。

「おい、動くな。中が傷つくだろうが」
「なに、なに、なに…?!なに、これ、やだ、ヤダっ!!!」
「おい、動くなって言ってるだろうが」
「怖い怖い怖い…!助けて助けてっ!!ヤダヤダっ!!!!」

俺の言葉を聞かずにユイは激しく取り乱す。
このままだと本当に腸を痛めてしまう。
俺は焦って、ユイの頬を思いっきり平手で叩いた。

「……っ」
「動くなって言っただろうが。腸内が傷つく」
「……っ、………。……っひ……うっ」

ユイは叩かれたことに呆然とすると、こちらをみながら黒の瞳を濡らし、大きな涙粒をこぼした。
ポロポロと大きな粒子が溢れて、止まらない。

「……っあ、、なさい、…んなさい…ごめんなさい……ごめんなさいっ……ころさないで、ころさないでっ……」

腕は拘束具で止められ、溢れた涙は拭えず顔をぐちゃぐちゃに汚していく。嗚咽まじりで震えた声は謝罪だけを何度も唱えた。


(ごめんなさい?ころさないで?)


彼は子供がなきじゃくったように必死に許しを乞うている。貧相な体を晒し、顔は情けなく崩れているのに、俺は何故かあの腹底が熱くなる快感をまた得た。




……ああ、こいつは俺と一緒なのだ。

純粋でなにも知らないで、騙されて、脅されて、貪られて。


顔をそっと近づける。
近くに寄ればよるほど昔の俺だ。

まっとうに生きていた人生を借金で狂わされ、汚い男達に身も心も堕とされた俺。
こんな世界に入らなければきっと傷のなかった頬に、自分が今から何をされるか全くわからない純白はこの腹の中へ入ってる器具を自分を殺す道具だと勘違いしている。

一緒だ。泣いて殺される恐怖に震えるユイと、初めて男達に何もかも暴かれて乱暴されたあの日の俺。
一緒だ、純粋を汚されたあの時と。一緒だ。

一方で彼はなんてまだ美しいんだろう。
涙を流すのも純粋に恐怖を感じているからだ。何の打診も他意もない、自分の本音。彼が泣く時、1番それが感情を溢れさすのだ。その度に俺の体は熱を持ち彼に夢中になった……。

そっとユイの唇に触れてみた。
涙と少量の血で濡れた味は少し塩辛い。
もう一度彼の顔を見れば、目を大きく見開いてこちらを見ていた。
彼の瞳孔に写る俺はしっかり泣いていた。

「そう、俺たちは全部同じだ」











「…んぐっ……!!」
「歯を立てたらダメだ。ゆっくり舌で包み込め」

彼が俺の亀頭へくちゅりと触れる。精一杯口を開けて俺のものを頬張りながらこちらを見上げた。
…あぁ、なんて気持ちがいいんだろう。

彼が少し眉根を潜めた。我慢汁が彼の口内で垂れてしまったのかもしれない。

口から出すなよと忠告し、ボタンを押して彼の腸内を洗浄する。
彼は使い慣れていない舌や唇で俺のペニスを咥えながら、時折後ろの刺激に大きくえづいた。泣き腫らして目尻は赤くなり、恥ずかしさからなのか血色の薄い頬はピンクに染まっていく。

ユイの様子にドクドクと体が熱くなる。
こんなに気持ちいいことがあっただろうか。
彼の舌遣いは下手くそだが、彼が必死に俺を咥えているということ自体に興奮が止まらない。あんなクソ野郎どもとのセックスなんて比ではない。
たまに前立腺がズクズクと刺激をほしがって後穴を収縮させるのがユイへの集中を邪魔してくるのだが、今の俺にはこの刺激で十分理性を飛ばしていた。

3回目の浣腸洗浄を放出させる。
彼は排泄に似た行為に恥辱で大きく顔を歪め、俺のものを強く唇で挟んだ。
あぁ……今、イキそうだった。

はぁっといつになく熱い息を洩らすと、ユイがこちらを懇願した目で見上げる。
「そんな可愛い顔で見るな」
唇の端からは口の中で収まりきらなくなった唾液がぼたぼたと溢れ、洗浄器具から見える彼のアナルは綺麗なピンク色でチューブをはくはくとして食べている。

ユイの目には恐怖も抜け落ちていき、ただひたすら解放への訴えと光の失われた眼球が俺しか見ていなかった。

そろそろ限界なのを察し、俺は彼の口内へ思いっきり自分のものを叩きつけ始めた。体が拘束された彼は俺の衝撃に合わせて身体を振ることしかできない。ガチャンガチャンという金属音が凄まじくぶつかる音と、濡れた水音が卑猥に混じり合う。
勢いよくユイの喉をついた時、きゅうっとペニスをくっつくように締まる感じがして、俺は我慢できずユイのクチマンコに精子を吐き出した。
ドッという衝撃に、彼が口へ流れてくる液体を吐き出そうと開きかける。俺は無理やり喉を押さえ、それを阻止する。
ユイに俺の意思が伝わったのか、彼は諦めて苦しそうに俺の精液を全部飲み込んでいった。


ユイの涙がまたポタポタと落ちる。
あまりにも可愛くてユイの顔へ舌や唇を這わせながら、まるで洗脳させるかのように何度も何度も言う。

「ぜんぶ、ぜんぶ、ミヤビさんのせいだよ。俺たちはミヤビさん達に騙された被害者だ。俺とユイだけなんだよ、信じられるのは。俺たちはミヤビさんに騙された唯一の被害者なんだから。ぜんぶミヤビさんが悪いんだ」



純粋で清らか故に極悪非道なミヤビという魔王に騙された可哀想な二人。



だから俺たち2人は惹かれあっているんだよね?ユイ。




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